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親友カメ  作者: 渡辺正巳
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 次の日からも、カメは何事もなかったかのようにいつも通り学校に通い、私と遊ぶことを続けた。「父親が早く帰ってきてるから」と言う理由で遊びを断ることも無くなり、おかしな態度も無くなっていき、だんだんと以前のカメに戻っていった。私も、あの女の家で起こったことは、それからずっと、私の胸の中に留め、誰にも言わず、またカメ本人にも少しも蒸し返すことはしなかった。今思えば親や学校を通じて警察に届け出るべきだったのかも知れないが、子供だった私にはそうすることが何か恐ろしいことのように感じられたし、何よりカメの気持ちを考えると秘密にしておいた方がいいように思えたのである。


 あの変態女とは、それ以来偶然何度か街中で会った。私がカメと一緒にいるときにも、一、二度、会ったことがある。しかし私はその度に女を完全に無視し、女の方でも特に私やカメに声をかけてくるようなことはしなかった。そういうわけでその後あの女がどうしているかは、私にはわからない。


 小学校時代カメと私とはその後も親友であり続けた。しかし中学校に上がると、クラスが別になり、別々の部活動にも入って、接点が無くなり、自然と交流は薄れていった。そして私たちは別の高校に入り、遊ぶことは全く無くなった。私は、高校卒業後の彼が、大学へ行ったのか、それとも他の進路を選んだのかさえ知らない。成人式を迎えた時には、カメと会えるのではないかと私は期待したが、カメは式には参加せず、それは叶わなかった。


 そんなこんなで私はもう十年以上もカメには会っていない。


 ただ、一度、確か私が大学生だったとき、父の運転する車でカメの実家の近くを通りかかったことがある。その時、道路脇をうつむいてとぼとぼ歩く後ろ髪の長い青年を、私は車の中から偶然見かけた。カメだった。私は急いで車の窓を開けた。


「カメ!」


 私が車の中から叫ぶと、カメは一瞬立ち止まり、周りをきょろきょろ見回して声のした方を探した。しかし私には気づけず、またうつむいて歩き出した。私を乗せた車は、あっという間にカメのそばを通りすぎた。


「友達?戻ろうか?」


 運転席から父が声をかけてきた。私は開け放たれた窓の枠に肘をつき、頬杖ついて、小さくなっていくカメの姿を見ながら、


「いや、いい」


と言った。


今のところ、それが私がカメを見た最後のことになっている。


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