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89、深紅の龍・2

    


   


「 オ・・  オウジのバンド ・・?!」





ジェシーは呆然と、


オウム返しするしかなかった。




ためらいながらも、カイの顔を見上げると、




血の気の引いた人形のようになった 彼の視線は


定まらないどこかに吸い寄せられ、 



息をしていないように見えた。





「うわっ・・ すっげえ人っ!」





カーキ色のコートのフードを脱ぎながら、


店内のあまりの熱気に、オウジはたじろいだ。




病み上がりのテンションには


いきなりついてゆけない、バカ騒ぎの頂点。




この中からカイを探すのは、


ちょっと骨が折れそうだ。





きょろきょろと店内を 見回すオウジを


最初に見つけたのは、キースだ。





「オ~!  オウちゃ・・」





名前を呼ぼうとして、慌ててその口を押える。




ショウゴにバレない様に、


オウジを、キヨシに引き合わせなくては。





「どしたんデスか~? 

来れなくなったんじゃ?」





キースは満面の笑顔で


ショウゴの目から オウジを隠すように、


彼の前に立ちはだかった。





「アイツが 忘れもんすっからよぅ・・。  


  カイは何処にいンだよ?」




「カイなら、確かさっき ジェシー達と・・・」






キースが大勢の客の向こうの 


VIP席に眼をやると、




派手なコスプレで踊り狂っている 連中の輪の外に、


ジェシーと カイの姿があった。





その横には 赤鼻トナカイのマスクが、


彼らをピッタリと、マークしているではないか。





これはオウジをキヨポンに近づける、


絶好のチャンス。


神の計らいと言うものだ。





「いましタ! こっちデス!」





キースに先導されて、


オウジは店の奥へと 人混みをかき分けた。




リスの着ぐるみを着て踊ってる男の、


太い尻尾が オウジのホホに当たり、




「なんだコレっ」




と、ヤンチャなパンチで、それをのける。




人混みの奥に、


カイの姿が見え隠れし、




1歩1歩近づくたびに、ハズむ胸を悟られないように


ムクレ面を、カオに乗せる。





「おーーい、持ってきてやったぞ~」


 



小さく、彼に手を振った。





「カイ ・・・」




と、声をかけようとして、異変を感じた。





カイの顔は白く、強張っていた。




それは何かが




それも、よくない類の出来事が 


彼の身に起きていることを 予感させた。





カイと、


隣にいるジェシーの2人だけが




踊り狂う人々の中で、時が止まったように


フリーズしている。





そしてその2人の視線の先にいるのは


1人の男だった。





男は 黒のライダースジャケットを着て、



右耳に3つ


左に4つのピアスを、つけていた。






――   アイツ ・・!






『 ZerOのヴォーカルの


   オウジだよなッ・・?!』






昨日の晩 


その男の口から出た日本語が、


オウジの耳に還ってきた。





オウジの視線は 男の横にいるカイに移り、


そして、そのまま囚われた。





カイが、別の人物に見えた。





それは


オウジの記憶の奥深くに


固く封じ込めていた1人の少女




カイによく似た カオの少女






   ヒナだった。






「  ・・・ !!!!  」






目の前の空間が、激しくスパークし


張り裂けた。




そしてオウジの脳が、 



一気にあの夏の夜を チューニングした。










「 やめて・・!! 」





けたたましいライヴの最中に 聴こえた、


少女の声。






―― 誰だ・・?  


 なんで 正気のヤツが、いやがんだ?!



  どのオンナだ・・ ?!






声の主を探しながら 歌うオウジは、



やがて人混みの中央に


その長い黒髪の少女を、みつけた。






―― ナンだ、あのオンナ・・!


 いつも来てる オンナじゃねーか  



 なんでアイツだけ、シラフなんだ?!




    クソッ  オマエも 狂え  !



       もっと   





   ・・・ もっとだッッ ! !  !!






昂るオウジのオーラが 全身から立ちのぼり



邪悪なモノに向かって 


烈火のごとく、燃え上がった。





そして、 それは起こった。





少年の振り上げたナイフが 鈍く光り、



少女の 白い首を  裂いたのだ。






その瞬間






すべての音も  観客も  


オウジの周りから消え去り




無音となった世界で、




彼女の首筋から  



深紅の龍が  





天に昇ったように見えた。






そしてそれは


一瞬で血しぶきに姿を変え、


辺り一面に 飛び散った。





  自分の歌声だけが、聴こえる。






ほとばしる鮮やかな 鮮血が 


婀娜やかな声と、重なって




それは 壮絶に美しく 




オウジは一気にエクスタシーへと


上り詰め 





そのまま気を 失った。










赤と  黄色と  青



三原色のクリスマスイルミネーションが 


点滅している。





オウジとカイの目の前で今、


全てのパズルのピースが 



音を立てるように繋がり 完成してゆく。






               ヒナの 逝った日に 




       ついた カイの首の 

青い龍 



              黒い 服ばかり




 着ていた    カイの妹


          

      


 オウジと 



        同じ眼をした 漆黒のクイーン


            


                あの 夏の夜と同じ 胸騒ぎ


         月の女神 




銀色のハーモニカ





  黒いジャケットをあてた 


                   カイの戸惑い




      訪れる悪夢の中で 飛び散る深紅の羽


           同じ画を見る カイ

  




              「バカだよな」


                    救急車のサイレンが随分近くで・・


「オレは確信犯だぜ?」


       昨日みたいにステージでぶっ倒れちまったから・・

                 「あいつらみんな死ねばいいと思ってよ」






        犯人はラリった少年A









飛び散る羽の 悪夢は 


オウジが記憶の奥底に、封じ込めていたヒナの血液だ。






カイを初めて見た時、


どこかで逢った気がしていた。


     

     

オウジに初めて逢った時、


妙な懐かしさを感じていた。





そして互いが 引き寄せ合っているという、


根拠のない確信が


いつも



2人の間には、あったのだ。









カイの体から すべての力が抜け去り、


ふらふらと後ずさりした。




やっとのことで、壁につかまったカイは



そのままガクンと


膝を落として 崩れ落ちた。





「 大丈夫・・? 」





ジェシーが彼の肩に触れた。


カイは震えていた。







「 ヒナ・・  ヒナが・・


なんで 



   オウジと・・・?」






会話が聞こえないキヨシは、


トナカイのマスクの中で、目を凝らす。





――なんだ・・? 

カイが座りこんじまったぞ?!


いったい、何が起きたんだ?





数人の酔っ払いが大きな声で


笑いながら通り過ぎ、


キヨシの視界をさえぎった。





「あっ、チクショ・・!」





そして場所を変えようとした時、


トナカイマスクの 


くりぬかれた目から見える 狭い視界に、



得意げな笑顔が、ぬっと現れた。






「キヨポーン!」




「おわっっ! 

ビックリした、キースか」




「えへへ~~。紹介しマスよ! 

彼がウワサの~~天才的なぁ~」






と、キースが手を広げて ふり向いた時、


そこに居るハズの姿はなかった。





「あれっ・・?  オウジ・・?」




つい、その名前がついて出た。




「えっ・・?!」





キースの読んだその名前に、ジェシーが振り向く。

  




「オウジが来てるのッ?!」





―― ・・ ・  


   オウ ジ・・ ・・?





白いヴェールに何重にも覆われた カイの思考が 


わずかに反応したが、




体中が 朦朧と麻痺し 



自分の瞳が


何を映しているのかも わからない。






「そうデスよ~。


忘れ物届けに来たって、いまココに居たのデスけど・・? 

あれぇ? オウジぃ・・?」




「オウジ・・っ!」






ジェシーがパーティー客達をかいくぐって、


彼を追おうと走った。





ヴェールの向こうから 繰り返し聞こえてくる、


その 大切な呪文のような 



彼の名前。







やっとのことで振り向いた カイの視線の先に、


もう、彼はいなかった。





イヴから日付の変わった


パーティーの夜。





華やかに着飾った客達の ヒールの横に





オウジの手からすり抜けた、



プレゼントの箱だけが 落ちていた。







---------------------------------To be continued!


挿絵(By みてみん)


このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

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