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86、ふたりを描き出すパズル・2





「待ってたのっ!  


アタシ、待ってたのよ~~~~~~~~ぅ」






カイの胸に飛びついたショウゴが、


そのデカイ顔をスリスリと



セルリアンブルーのコートに、なすりつける。





ピンクに染まっているハズのホホは 


地黒のせいで見えないが、




ハート型になっているその瞳が、



クリスマスの電飾の チカチカを受けて


ターキーの丸焼きと 同じリズムで点滅してる。






「ゴメンね遅くなって。 


今夜もキュートなレインボーサンタちゃん、

愛してるよ。」




「あわわわあぁぁぁあ~~~~」






その言葉で、討ち死にしたショウゴを


あわてて数人の客が支えて。



店内が、またニギわった。






「ハーイ カイ遅かったわね!」


「やあ、カイ」



「カイ~! 待ってたのよ」






人混みのアチコチから、飛んでくる 歓迎のコトバ。




この店の客にとって カイはアイドル、


もしくは1番身近なスターだ。




七面鳥やショウゴと同じ電飾に 照らされても、


カイのいる風景は、


出来のいいクリスマスカードのように



幸せを、描きあげてしまうのだ。






勢いよく注ぎ過ぎて、泡のだらだらとこぼれた


シャンパーニュのグラスに 口をつけながら、



ローズが、カイの所へやってきた。






「ハッピーホリデ~~ズ! カイ」






もう1つの手に持っていたグラスは、カイに。






「ハイ ローズ。 

さっきは解熱剤ありがと。


ワォ セクシーなドレスだね! 素敵だ。」






カチン、とグラスを合わせた 今夜のローズは 



光沢のあるマゼンダピンクのドレスから


グラマーな胸元をアピりまくり。




髪もアップにして、バッチリの化粧をすれば、


サスガに女優だった。






「で、どーなの、クソガキは?」




「うん、熱もだいぶ下がったよ。 家で留守番中。」





「なんだか昨夜もずいぶんと、

ご活躍だったんですって~? 


クソガキのおかげで、


この店のスタッフ、みんな骨抜きんなってたわよ?」





「ん~~。 ボクも骨抜きにされたかったなぁ」





「アタシはまっぴら!  

ダダっ子のヒスに、つきあうなんて。」











「・・・ックシュン!!  

ちっくしょーー 誰かウワサしてやがるなっ」





1人の時間を持て余しているオウジが、


ベッドの中でつぶやいた。





カイの居なくなった7丁目のこの部屋は、


やけによそよそしい。




暖色系の灯りと 



見慣れた4枚羽のファンでさえ、すまし顔だ。






「こんなに広かったっけぇ・・」






なんの音楽もかけていない その部屋を


ぐるりと見回した後、




オウジはカイから貰った


バットマン柄の靴下を、手に取ってながめてみる。






「ぷっ  クリスマスに靴下って・・  

ベタすぎるっちゅーの。」





などとつぶやきながら、



ベッドの脇にあるモンステラを


クリスマスツリーに見立て、靴下をかけてみる。






「1足じゃ、サマんなんねーか・・・。」





オウジはのっそりと起き上り、


クローゼットを開けて、カイの靴下を物色した。




靴下やチーフなどの、小物入った引き出しは、


色の配置が 絶妙だ。





「げ、さっすがカイ」





全体がグラデーションでまとまっている中に、


遊びの差し色が バランスよく置かれていて 


それ自体がアートってカンジ。




オウジは、赤いノルディック柄の


ソックスを引き抜いた。





そしてオウジの アメコミ柄靴下の


シンメトリーになるように



モンステラのツリーに、飾りつけた。





「ぶはっ・・ ヘンなの!」





思わず吹き出すが、どこからも返事がない。



部屋が シンとしてる。






静まり返った部屋は、ヤバイ。






  『 ボクが 


 キミの歌を 愛してるから・・・』






その声を、オウジの耳が


何度もリフレインしてしまうのだ。




そう思ったとたん、電話のベルが鳴った。





「うわっ・・!」





見えない誰かに心を見透かされたようで、アセった。



平常心をとり戻そうと

 

ぶるぶるアタマを振ってみる。




ベルは、続いている。





カイの部屋の電話を、オウジはとらない。



どうせカイへの用事だから。




が、ベルはいつまでも鳴りやまなかった。





「んだよ・・」





仕方なく、少しの期待と共に、


18回目で 受話器を取った。





「ああ、オウジ君。 ゴメン寝てた?」




「やっぱアンタか。 ・・起きてたよ」





ちょっとだけ、オウジの口元がほころぶ。





「忘れ物したみたいなんだけど、

テーブルの上に プレゼントの箱ない?」




「・・・」






一見見当たらない箱を捜すため、


オウジは少し移動して


視線をアチコチに配る。




すぐに、さっきカイが自慢して見せた


プレゼントの箱が



カウンターの下の床に、落ちてるのが見えた。






「あった。ショウゴのだろ? ダメじゃん!」




「よかった~! 今、取りに帰るよ」




「届けてやるよ オレが」




「えっ・・  熱は平気?」




「それより、タイクツで死にそーだ。」



「ハハッ  OK、待ってるよ!」






出かける口実を見つけたオウジは、


ネコのように踵を返し



すぐに着替えにかかった。




昨日の今日で、


ショウゴ達と顔合わせるのもナンだけど、



死ぬほどのタイクツよりは、マシ。




というより




1人が、妙に寒かった。





オウジはグレーのパーカーに、


ジーンズと カーキ色のコートを身に着け


部屋を抜け出した。





タバコを吸おうと思ってポケットをさぐり、



それが昨日着て行った 白いコートのポケットに


あったコトを思い出す。





カシミアの白いコートは、


5丁目のジャズバーで脱いだままだ。






「ちぇっ・・」





オウジの耳が、昨晩の 


BJや白人ドラマーとの、セッションを思い出す。





大地のような暖かいベースと 


軽やかなタイコ。




導かれるように、光の波となる 自分のピアノ。





胸躍るバイブレーションが


体中の細胞に、蘇える。




再びオウジの体が、熱を帯びた。






「ああ・・  


チクショウっ・・!」







歌いたい




もう

歌わずになんて いらんないよ





歌いたいんだ




もう一度 ここで 



この街で





アイツの横で







    歌いたい。








コンクリートの歩道を踏みしめる


オウジのミリタリーブーツが



いつもより力強く、




13丁目に向かって、進んで行った。







---------------------------------To be continued!


このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

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