82、ヒナの足跡・3
「ロックバンド ですか・・。」
その言葉は、妙にキースの腑に落ちた。
カイのチョーク画と、オウジのブルースハープの
コラボを見て 感動したモノなら、
梨園のお嬢さまと、ロックの組み合わせもまた
フシギではないと、信じられる。
才能のあるアーティスト同士に、
ジャンルの垣根などナイのだ。
「梨園のお嬢様が、
やさぐれてバンドにハマって、夜遊びし放題!
おまけにドラッグにまで 手~出して事故ったってんなら、
そりゃあ マスコミには、知られたくないだろうなあ」
「なんか、スゴイ展開になってきマシタね・・!!」
キースのそばかすだらけの白い肌が ピンクに染まり、
声にもいつもの ハリとツヤが戻った。
そして、その途端に
マシンガントークがスイッチオン。
「ロックって言えば、聞いてくだサイよッッ!
昨日はもうスゴかったンデスよう~~~~!!」
ショウゴのご法度も理性の咎めも ブチ抜いて、
その言葉がロケットダッシュ。
来たぞ!と、キヨシも心が踊る。
でも、ここは 慎重に。
「えー? 何がぁ?」
どうせ大した話でもないんだろー?
くらいのテンションで。
「すっごいミュージシャンがキタですよ!ヨッパラッテ、暴れて、ショウちゃんにガーンされてピアノ弾いたデス。 それがもうベりベリワンダフル~~! ノ~、凄ーーくオッソロシ曲デスーーー!! みんな体バリバリ!青い火花がバチバチーーー酒瓶ガタガターーっ もうキョウフの魔王が降ってきたゴトありマスデス!! ボクも小さい頃ママに地下室に閉じ込められたこと、お、思い出しマシタ! ほんなこてカラダ震えたデスよおーー」
「え ・・・そ? そうなの・・??」
キースのマシンガントークは、いつにも増しての大暴走で、
イミもよく解らない。
「店にいたヒトタチ全員おかしくなりまシタよ!それほど怖かったデス
オソロシ才能の持ち主なんデスヨーーー すごいピアノ演奏の夜でしたンデスヨ~~!!」
その話を、キヨシなりの翻訳機にかけてみると、
よっぽど凄いミュージシャンが演奏し、
居合わせたみんなの 精神状態が
ドロドロな暗黒世界に つき落とされた、
とか、いう事らしい。
そのピアノ弾きが
リ・オウジか。
――でも・・
リ・オウジはピアノなんて弾けるのか?
・・ヤツは ヴォーカリストだよな?
キヨシは水を一口飲むと、
日頃の真由美の コミュニケーション術をマネて、
相手の声のトーンに ピタッと合わせてみた。
「へー、そんなスッゲエ奴なんだーー!
あーっ残念、 オレも 聴きたかったぁ~~」
「聴かせてあげたカタデスよー!!」
「キースの話聞いてたらもう、
絶対聴いてみたくなっちゃうよなぁ~
うん、ウマイね!このオムライス」
「エへへ・・」
キースの血中ゴキゲン度が、数段アップ。
「ね、会わせてよ。」
「え。」
「どんなヤツなのか見てみたいよ~!
なあ、今夜のイブのパーティーには来るんだろ?
紹介してよ、キー坊~。」
キースのカオの血の気が、すーっと音をたてて引いた。
コレは、ずいぶんマズイ展開になっている。
キヨシの後ろには、
オウジを血眼になって捜している、
日本の事務所からの刺客、ヘビ女・真由美がいるのだ。
キヨシにオウジを紹介するなんて、ヤバすぎる、
ショウゴに知れたらどうなるか。
不幸中の幸いは、ショウゴがココにいなかった事だ。
もっとも、
ショウゴがいたら、こんな展開にはなっていないが。
――キヨポンは・・
オウジの顔、知らないデスよね・・?
・・それに・・今オウジは
黒髪でも、黒い服でもナイんだし・・ ?
イブの夜には 毎年恒例で、
ショウゴの店の常連客が集まり、朝までパーティーだ。
今年は、カイとオウジが
真由美やキヨシと 鉢合わせしない様に、
頃合を見計らって
連絡を入れる 手ハズになっている。
つまり、キヨシとオウジは
絶対に会えないように 仕組まれているのだ。
「な~、キースぅ 頼むよぅ」
キヨシは甘えた声で懇願し、
「・・・あ、ワルい、やっぱムリ?」
”やっぱコイツじゃダメか”って目をして、
そっけなく顔をそむける。
わりかしイケた演技構成だ。
お調子者のキースは、ムッとした表情を隠せなかった。
さっきまでは、確かにゴシップに飢えたキヨシの
一途な眼差しが
自分に向かっていたのに、
その熱愛をいきなり失ったのだ。
コレは ナンとかしなければ。
――キヨポンにとって、オウジはまだ
”黒髪の少年”のハズ!
黒髪の少年なら、今夜のパーティーには
掃いて捨てるほどやって来るんだから、
むしろ そっちに気を取られるデショウ。
オウジは自分の事なんか シャベったりしないし・・
ショウちゃんのいないところで
チラッと会わせるだけなら、
気づくワケないヨネ・・!
「イイですよ・・? でも、ちょっとだけヨ?
ボクが言うとおりにして下サイよ?」
――やったっ!!!
キヨシは心の中で、ウシシと嗤った。
---------------------------------To be continued!
このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。
なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。




