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7、美しいオトコ





突然現れ、


ここまで積み上げたムードを ブチ壊しやがった


クソ邪魔な第三者に、



オウジはア然とした。





――マジかよ コイツっっ!!





「あれっ・・?  おジャマだったかな?」





そう言って 女マシュマロマンに微笑みかけた、


思っきし空気読めねークソ野郎の


カオを見たとたん、



オウジの時が 一瞬止まった。






――  ・・・コイツ・・   



     誰 だっけ・・?







確かに、 どこかで逢ったコトがある。


・・と、思うけど。





黒人カルテットの演奏が、


大人なクリスマスソングに アレンジされた


バラードに変わった。





―― 誰かに似てんのか?  今度はマジで・・?



イヤ、こんなウサンくせー美形ヤロー、


逢ってたら忘れるワケねーし・・。






元来、人の顔というのは 左右対称でもなく



必ずどこかバランスを欠き、


それなりに 欠陥もあるモノ。




だが、この青年のカオに限っては



端正に作られた彫刻のように、


デキすぎて整っていた。






「あら、カイ。  


いいのよ、 私もさっき 来たところなの」






ジェシーの人懐こい笑顔は、


カイと呼ばれたそのオトコに持っていかれ、


オウジは、寸でのところでカモを逃がした。




が、そのオウジの視線もまた、


彼に 釘付けになっていた。






――  オトコ・・?  ・・だよな・・・。







その青年はどこから見ても ”男” なのだが、



物腰のたおやかさが 女性的・・ 


というよりも、



男でも 女でもあるような。



 

あるいは、この世のモノではないような、




フシギな空気を 纏ってた。






整っただけの顔なら、


オウジだって、そこそこのモデルや女優と


遊んでたし、美形への免疫はある。




が、この青年の持っている華は


外見よりも むしろ 


内側から 醸し出している、香りだった。





なんとも透明で、



ほんのりとエロい。






肩まである、


アジア人にしては 栗色の髪の



耳上のサイドまでを 後ろで一つにまとめ、




白く染めた細い皮ひもで ム造作に結んでいる。




その紐には、


ネイティブアメリカンの 銀細工と、


真っ青なターコイズのビーズが ついていた。




整いすぎた顔立ちに、


ところどころ ほつれている髪が、


イヤミのないバランスを 保っていて。





そして、そのほつれた髪がかかる


彼の首筋に、




一筋の 青いアザがあった。






オウジの 


胸の真ん中が ざわめいた。





この、まるで 



天に昇ってゆく 青い龍のような形のアザが、




あまりにも出来すぎたこのオトコを


地上に繋ぎ止めている




たったひとつの刻印に 見えたのだ。








「 ・・・・・ 」




「ボク、モヒートね!」






オウジの戸惑いをよそに、


朗らかな声で 


カイがカウンターの向こうに 、声をかける。





モヤシバーテンダーは頷くと、


グラスにクラッシュした氷と



ひとかけらのライムに砂糖、



そしてミントの葉を たっぷり入れ、




ラム酒の ボトルとソーダ水を共に 


彼の前の 止まり木に差し出した。





カイは グラスの中のライムを搾ると、



氷とミントを ペストルで潰し、



ミントとライムの 爽やかな香りを


思いきり吸いこんだ。





「うん!」





ご満悦の笑顔で、


グラスにラムと、ソーダを一気に注ぎいれる。



そして、





「フライデーナイトに。」





と、ジェシーに向き直り、




泡立ったモヒートのグラスを、軽く掲げた。




これまた、


おとぎ話の貴公子かよオマエはって


カンペキな笑顔なんだ。





そして、そのしぐさにも 一切のムダはなく




計算されつくした美を、体現しているかのよう。





流れるジャズのメロディーラインにまで


しっくりと




だが、彼はまったくム意識に


それをやってのけていた。





オウジは、グラスに口をつけるカイの横顔から、


目を離せなかった。






――  ヤベぇ・・  



コイツ、何モンだ?



女マシュマロマンよりか 100倍エロイ・・






彼の首筋の 青い龍が、


やけに オウジの目を引き付ける。






――やっぱ気のせいだよなぁ・・?


こんなハッキリしたアザ、

見てたら忘れるワケねーし・・。







「カイ、彼も日本から来たんですって! 

オウジよ。」





女マシュマロマンが 少しハニカミながら、


ここぞとおせっかいを発揮した。




その時、カイが初めて オウジと目を合わせた。





「あれっ? ・・・キミ・・?  

 どこかで逢ってるよね。」




「えっ・・?」






やっぱり、どこかで会ってたか?




戸惑うオウジを じいっとみつめ、


カイはフッと笑った。






「そんなワケないか。 


キミみたいに美しい男の子、

逢ってたら忘れるわけないよね。 


ハィ! オウジ。  ボクはカイ」





カイが右手を差し出す。




「はぁあ~あ??」 





ナニ言っちゃってんだ、このオトコ。






自分のファンの中には、


音楽性よりも ビジュアルでついてくる


アホオンナが、少なからずいたし



確かに自分でも まんざらではナイと


思ってはいるが。





どワル、クール、ロクデナシを


これでもかとアピりまくっている自分を



”うつくしい” なんぞと


形容したヤツは、


しかもヤロウは、 


生まれてこのかた、一人もいない。





「アタマイカレてんな、 アンタ」





ジェシーの向こう側に立っている


そのヘンなオトコに、吐き捨ててから



オウジはふと 気がついた。





さっき、自分も彼に対して


同じことを思わなかっただろうか・・?




つまり、キレイだとか 


逢ったことがあるとか、なんとかかんとか。







「あ、そうか 

キミ ちょっと似てるんだ。 


ボクの妹に」





「バ、バッカじゃねーの! 」





ナゼか、声がうわずった。




気づかないうちに、酔いが かなりキてる。





昨日の朝、美津子にたたき起こされてから


オウジは 何も口にしていない。




時差ボケと スキっ腹へのバーボンで、


もはや脳ミソはグンニャリだ。



それでも、必死に考える。





―― え・・ なんか・・?


 妙に・・?   



デジャブってね~~??






「わ~っ キレイな

黒曜石みたいだなぁ~、よく見せてよ!」





宝物を見つけた子ども状態に ハイなカイが、



ジェシーのカオを越えて 


オウジの瞳を 覗き込んでくる。






「なっ 何が黒曜石だ、


キモち悪りンだよ ぶゎーーか!!」






その時、オウジの頭の回路がひとつ、


ぷつりと繋がった。





――・・・あれ?  


さっきからコイツ・・


オレが女マシュマロマンに使ったのと 

おんなじ手口・・ じゃね~・・?







えーと、つまり


肉親に似てるだの、


キレイな目を見せろだの、なんだのかんだの。






そんなセリフを 他人の口から聞いてみると、


超クセえ。 安っぽい。


ダサイ、チンケだ、ハズカシすぎる。





――ンのヤロぉ・・ 


さては、どっかから オレ達のやり取りを


・・見てやがったな・・



マンハッタンに 着いたばかりの

イナカモンだって


・・・バカにしてんだろ、


クソぉ~~ っ






オウジの 脳ミソ中に、


白いモヤがはびこり出して



思考回路は、ますます働かない。





そもそも、


このウキ世離れしたオトコが



ホントに 存在しているのか、




デジャブったのか、からかわれてんのか。






耳の中で のたうち回っている


ジャズナンバーの、


ベースの音までが 


気持ち悪く まとわりついて来る。






カイの、エンリョなんか知らない5歳児な目が


まだ オウジの瞳を覗いてる。




今度は、オウジが目をそらす番だった。





――コイツ 


・・・ ヤベぇ・・・。







その瞳が、オレの心の内の


何もかもを


見透かして来そうで。





オウジはトイレに行くふりを装って、


その場を離れた。






「 彼、ミュージシャンだね? 」






懐かしい仲間と 再開したように、


カイが ふっと眼を細めて 微笑んだ。





「えっ・・?そうかしら・・ 


わからないわ、さっき会ったばかりなの」





「曲にあわせて、

ずっと リズムを取ってたよ。 


指先がまるで 歌ってるみたいだったな。」





「大丈夫かしら、オウジ?  

相当酔ってるみたいだわ・・・」






心配するジェシーの視線を 背中に受けながら、


不確かな足取りで


オウジがレストルームに行くと、




白く冷たいタイルの壁の前で、


1人の黒人男が 彼を待ち構えていた。





「よう、ブラザー」





分厚い胸板のそのオトコは、


薄ら笑いを浮かべ、



オウジもよく知っている 裏街道の目つきで 



そう声をかけてきた。





--------------------To be continued!


このお話の設定は1980年代NYです。

また、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロで掲載されていたものです。

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