表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/108

6、オリエンタルボーイの誘惑




フダツキ。


ワルガキ。


ウラブレ小僧。



死んじまえこの 、ロクデナシ。





さんざんな勲章を授与されてきた オウジだが


コレだけは 心得ている。




自分が微笑わらうと相当カワイい。





意志の強そうな 眉。



母親譲りの 


キレ長の 奥二重から光る、挑戦的な




そしてナマイキな口元を


きゅっと結んでいるこの少年は



黙ってさえいれば、





そう、黙ってさえいれば




スッキリ系ワル男な


美の字をつけてもおかしく無い 少年なのだが、





常日頃から、流れるように口をつく


小汚いスラングと




逆立てたアタマから、ビリビリ発している


寄ってくんなよオーラで





オウジは実に、人類の9割りを


敵に回している。





が。





そのトガった少年が


心を許した相手だけに見せる 仔犬系スマイル。


  



これが フダンとのギャップを生み出し、


その激しい落差こそが




ゼツダイな効果を ハッキしたりする。






とくに年上のオンナの



母性本能というヤツには、ガッツリ効くらしい。




というワケで、オウジはそれを


自分の手持ちカードとして 持っている。







「サッキハ アリガト」





オウジはジェシーに、日本語で話しかけた。






「オレケンカっぱやくてさ、


・・いつも姉ちゃんに 叱られてたんだよ」





ウソです。 一人っ子。





「ふふっ 貴方、日本から着いたばかりね?」



「えっ・・ わかる?」






声に甘さを1、5倍 増量しつつ


オウジは彼女を観察した。




――年は・・30くらいか?


・・西洋人はフケて見えるから、25くらいかもな。






「カバンは、体から離しちゃだめなのよ」






そう言ってジェシーは



オウジの足元に無造作に 転がしてあったカバンを


拾い上げ、彼に手渡した。






「いつも自分の前側に 持ってこなくちゃ!


日本から来たばかりの人は スキがあるから、

すぐにわかるわ。


スリの、絶好のターゲットになっちゃうの。」





「そっかぁ~ 


覚えとくよ サンキュ。」




――盗られて困るようなもんなんか

入ってねンだよ、バーカ。






ココロと裏腹に、チワワな笑顔で


バーボンソーダのグラスを持ち上げ




ジェシーの飲んでいる バドワイザーの小瓶に



カチン、と合わせる。






「ジェシーは

日本に 行ったことあんの?」




――白いセーターの下で、

ぜい肉が ぶよんぶよんしてるじゃん。


ぷぷっ マシュマロマンみてぇ!


 




バーボンが、血液に混じって


オウジの体を 巡り出す。






「ええ、ハイスクールの時に1年だけね。


 貴方は 私の友人に似てるわ」






ジェシーの頬が、またピンクになった。





――そりゃ友人じゃなくて、

ハイスクールで惚れてたオトコだろ。 



へえ~、都合いいや。






「ぐー然だなー 


ジェシーも オレの姉ちゃんに似てるんだぜ?」


――白人オンナってのは、いったい何喰うとこんなに

乳がデカくなんだろーな?





「私が? だって貴方のお姉さんて、日本人でしょ?」





「うん、思いっきりジャパニーズ。

 目なんかオレそっくり!」






人差し指で さらに目を吊り上げ、


東洋人アイを アピるオウジに、



ジェシーがコロコロと笑う。






「でも、ホントに似てる。  


困ってる奴を ほっておけねぇタチなんだ。



・・・肌の色は違っても、姉ちゃんと同じだ。 

 

やさしい まなざしが 」






その “やさしいまなざし” を作って


ジェシーの目を じっと捉える。






「やだわ・・ 調子いいのね」





おどおど俯く、女マシュマロマン。




――お、イ~感じ・・。





「キレイだ」





オトコ臭フェロモン、2倍に増量。





「えっ・・?」 





マシュマロ女が思わず、視線を戻す。





「オレ、こんなに近くで

青い目見んの、 初めてなんだ。」

    




オウジはそっと 彼女の目を覗き込んだ。






「・・ホント ガラス玉みてーだな。」



「あ・・貴方、名前はなんていうの?」



「オウジ」




「オウジ? まあ素敵! プリンスよね?」



「違げーよ・・!」



――あ、ヤベ マズった・・!






つい冷たい口調になった。



オウジは、自分の名前が キライなのだ。





が、ちょっとフキゲンになったその視線が


彼女の心を 揺らした。





――なんだコイツ、かげってるオトコに

胸キュンしちゃいますタイプか?


やった、 ラッキーパンチ!






モヤシバーテンダーが、


カウンターの向こうから 呆れた顔で



ふたりのチンケなラブロマンスを、眺めてる。






――ヤボなマネすんなよな、モヤシオヤジ・・・!


もうちょっとで イケんだからよ。





目で牽制しつつ、第2ラウンドだ。






「イカした金細工だね。 


日本のカレシからの プレゼント?」





ジェシーの右手の指輪を そっとなぞる。



彼女の指が、ぴくりと反応して逃げる。






「違うわ。  彼なんていないもの」



「ホントかよ? ラッキーだな、オレ。」






10も年下の少年の


獲物を捕らえようとする 野生の瞳が



セマってくる。






「や、やあね

子どものくせに オバサンをからかって・・・」





波打つ彼女のハートが 早くなるのを


オウジは感じとった。




――イケる!






「ドコに子どもがいて 誰がオバサンだって・・?」




エロフェロモン2割増し。


オウジは、彼女のメガネにそっと手をかけた。






「もっとよく見せろよ・・ オマエの目・・。」





プラス、ワイルド5割増し


甘さ7割増しで 囁きながら


メガネをゆっくり、外してく。




―― カンペキじゃん、オレ!






オウジは 濡れた視線を 彼女の唇まで落とし、


そのターゲットに 急接近。





その時。





「待たせちゃって ゴメーーン!」




と、ジェシーの肩に


1人のオトコが手を置いた。






--------------------To be continued!

この小説の設定は1980年代のNY。

また、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として以前アメブロに掲載されていたものです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ