表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/108

59、5番街の女神・3




ミッドタウンはランチタイムだ。




OL達が、オフィスを抜け出して



ビルとビルの隙間の


ちょこっとした広場で




サンドイッチをほおばりながら、談笑してる。





こっちでニュースペーパーを広げて


コーヒーを飲んでるビジネスマンは




ブランド物のスーツに、白いスニーカー。


NYだ。





その、5番街の


高層ビルのエントランスに



カイは颯爽と入ってく。





見上げれば、


そこそこ歴史を感じさせる そのビルも、



空に受かって



突き上げるように、伸びている。





――こんな所に 何の用だろ・・?





一面ガラス張りの明るいロビーの、


床は大理石だ。





敷き詰められた 白石のスペースに、



これまたモノホンの竹が 天高くまで植えられた、


アジアンモダン。





ホテルみたいなカウンターの中にいる 制服のオトコが、


カイを見てニッコリ挨拶してる。



馴染らしい。





カイがいくつかの番号をプッシュして、


インターフォンの向こうの相手と 二言三言、




なにやら話した後に、エレベーターのドアが開いた。




―― ココって・・ ホテル?


 じゃねーよな。


   なんか

 ・・エラい高級なんじゃねー?






オウジは、妙~な心持ち。



エレベーターの上昇するスピードも、


やけに速い。


気がする。





62階でエレベーターが止まり、ドアが開くと、



そこには 高級マンションのリビングが


奥に向かって広がっていた。




つまり、廊下なんて通らない


エレベーターからリビング直結スタイルだ。





「いらっしゃい」





部屋の住人が発したのは、


実に耳触りのいい 日本語だった。





「久しぶり」




カイはその女性と、軽くハグ。




「あら・・?」





彼女が、オウジに視線を向けた。





ライムグリーンのワンピースが


少し日焼けしてる肌に、似合ってる。




NYは冬のまっただ中だというのに、


長いカールの黒髪と、




細い金細工にパールをあしらった


ネックレスを着けたそのひと




夏のシーズンから抜け出てきたかのように、


はつらつと笑った。





「嬉しいわ、お友達も一緒だなんて。  


どうぞ こちらでお座りになって?」





―― お 座 り に な って・・?





なんか、ヘンな汗 出てきた。


だいたいこのオンナ、何モンだよ。





――カイのオンナか? 


・・にしちゃちょっとフケてるよな、

美人だけど。


でも、コイツ平気で 


年とか性別とか ブッ超えるからな・・。





ちょっとドキドキしながら


カイの後について 部屋に入って行くと、




一面の大きなガラス窓いっぱいに、


マンハッタンの街が 広がっていた。





「うわ・・!」




「ちょっといい眺めだろ?」





隣でカイも、街を見下ろしてる。




地上から見上げるばかりだった摩天楼を


62階から見下ろすなんて、キブン爽快だ。




すげーエライ奴んなったカンジ。





「ビルの隙間からみえる あの緑は

 セントラルパークだよ」





マンハッタンの真ん中に


こんなドデカイ緑の敷地が あるなんて。




この高さだと、その向こうに広がる、


ハーレムの街並みまで見える。





「すっっげーー・・・!」




――貴章の白金のマンションなんて、

 比べものになんねーな。


モノホンのセレブじゃん・・・!!





「お飲み物は何になさる? 


良いお紅茶の葉っぱを、ちょうど頂いたのだけど?」





やべえ、ソファのすわり心地もフッカフカ。





「えっとオレは・・ 

あ、ボクはぁ


えー、な、何でもいいス。」




「ぷはっ・・!」





隣のクソ甘宇宙人が、吹き出した。





「な、なんだよっ!」



「だってっ・・! アハハハッ 


オ、オウジ君が ボクとか言ってる・・!! 

ハハハハッ」




くそ、このイカレ野郎は、


笑いだすと止まらないんだ。





「ちぇっ・・」



「うふふ 仲がいいのね?」



「うん、今あの部屋に一緒に住んでるんだよ」





カイの言葉に、


彼女の丸くなった眼が こちらに向く。




「あら・・。」





今まで逢ったことのない部類の


上品なオンナの微笑みに、



オウジは戸惑いを隠せない。





「紅茶はボクが淹れるよ。  


レイ、彼のお相手をしてて」





――“レイ”・・? 



  呼び捨て?





カイはアメリカ人の友人は呼び捨てなのに、


日本人には


サンとかクンとかをつける 癖がある。





――オレのことだって、

 オウジ“君” なのに・・






「しばらく顔を見せないと思っていたら・・


そう、貴方がカイの

お相手をしていて下さったのね」





オウジの90度横の ソファに座ったレイの


斜めにそろえた足元までが 



匂い立つように、美しい。





「いや、 オレはまだ逢ったばかりで・・」




―― アレ・・なんかヤバくね? 

逢ったばかりで 一緒に住んでるって・・!

 

ヘンな誤解されねーかな・・?





額から、さらに汗が出る。







「よかったわ。


あの子、あまり同世代のお友達がいないみたいだから

心配していましたの。


私はあの子の叔母なのよ。 

 

レイコです。 レイって呼んでね」





レイはヌードカラーに美しく フレンチネイルを施した


右手を差し出した。





「えっと・・ オウジす。」



――なんだ、 オバかよ・・。





ガラにもなく照れながら、握手。





顔のキレイな女は いくらでもいるが、



こんな風に“気品”とか 


“優美”とかいう言葉が 当てはまるオンナには




お目にかかったコトがない。





屈託のない微笑みは


育ちの良さから来てるのだろう。




彼女から醸し出される、


すべての人を包み込むような 甘いオーラ。




たとえて言うなら、 南国の女神の様な。





――あれ・・?





オウジは逢ったことのない、その部類のオンナの、 


その甘いオーラを、知っている気がした。





―― どっかで 


     会った・・ か?





オウジのアタマの隅の方で、


長いストレートの黒髪が、モヤモヤと形になろうとした時





「ミルクかレモン要る~~? オウジ君」




と、キッチンの方から カイの声。




「要らねー」





と、答えた時には、


アタマの中の黒髪の影は、キレイさっぱり消えていた。





「私はレモンがいいわ」





と言ったレイの、


ナチュラル系のオレンジで  彩られた唇の形が



やっぱり、カイに似てる。





カイも女だったら、


こんな風な美人だったに違いない。





や、若くてアーティスティックな分


カイの方がちょっと上。



アトリエで果ててるバカだけどな。





とか、またしてもよぎってしまったヤバイ頭を


ブルブル振ってみる。




「うふふ・・」





笑い方までがカイに似てる。




この一族の微笑みは皆、


こんな風に、



ほの甘い空気を作るのだろうか。







---------------------------------To be continued!




このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ