55、夢見るマシュマロ女・3
ハナシを聞いているオウジの指が
ム意識に、
流れるBGMに合わせて リズムを取っている。
「ショウちゃんやカイと居ると、
世の中なんでもアリなんだと思えるわ。
自分を囲っていた枠組みが、
ひとつひとつ 外れていくような気がするの。
心のリハビリ中ってとこかしらね・・?」
そばかすの頬とスキッ歯で、
マシュマロ女は、実年齢より子供っぽく見える。
「ダイジョブかよ
オーガニックのベジタブルしか食わねーヤツの口に、
いきなり餃子ツッコまれてんじゃねーの?」
「あらヤダっ!
アタシがいきなりツッコむのは、可愛いオトコの口だけよっ?!」
「オマエは黙れ ヘンタイ髭っっ!」
オウジがおしぼりをイカレ店長に投げ、
ジェシーが笑う。
こんなクソ下ネタで喜んでるとは、
もはやこのカタブツ女の脳ミソも
そーとー侵されてる。
てか、わかってねーのかな。
――色んなヤツが いるモンだ・・・
それはココがNYだから、じゃない。
地球のドコへ行っても
たぶん皆、何かしら抱えて生きてんだ。
「でもね、オウジの曲は好きよ」
「え・・」
「胸が熱くなるわ。 そう、熱いの。
カイの絵も好き。
綺麗で、やさしくて 力強くて・・」
ジェシーは、オウジとカイが初めてコラボしたあの時を、
目の前に蘇らせていた。
「うらやましいわ。
2人とも好きなものがあって、
誰にもマネできない 才能を持っていて
たくさんの人を 感動させることが出来て!」
「バカだろ、オマエ」
「えっ・・」
オウジの瞳がサディスティックに嗤って
自分を見ている。
どこか気になる、その黒い翳が。
「オレが、音楽を好きで、サイノーがあるって・・?
勝手に美化すんな。
スキとかキライとか、そんなんじゃねーよ。」
「 で、でも・・ 」
「怒りとか、やりきれねーとか、
そんなんを吐き出してただけ、
そーでもなきゃ
やってらんなかったってだけだ
もし、あの時のプレイに
アンタの心を動かす 何かがあったなら、
それは・・ カイの・・ 」
その先は、出てこなかった。
それはもう一人の
あの胸が灼けるような 才能が
創り出したに、他ならないのだ。
自分への賛辞なんか
受け取れない、
オレに
そんな価値なんかない。
「 ・・オレは
人を感動させたことなんてねーよ」
「そんなことないわっ!」
ジェシーの声が、めずらしくうわずった。
「私は本当に、
あなたの音楽に 心を動かされたわ。
あの、・・カイとのコラボレーションは
どうしようもないくらい!
走り出したくなるくらい、胸が熱くなったわ!」
「だから言ってんだろ、
あれはオレの曲じゃねーんだよ!」
「違うわ! あれは紛れもなくオウジの曲よ!
アナタの情熱がハーモニカから・・」
「うるっせーーなブス!
オマエに何がわかんだよっ!!」
イキオイで立ち上がったオウジに、
ジェシーの体が ビクッと凍り付いた。
と、2人のど真ん中に、
ショウゴが後ろから割って入る。
「はいは~い、
おフランス直輸入のチーズで作った
チーズスフレちゃんですよ~~ぉ」
「いらねえよっ!!」
腹立ちまぎれに払いのけた ケーキが床に落ち、
皿がガシャンと四方に散った。
「あらら~~ぁ ダメよ、おイタは!!」
が、ショウゴはひるまず、
そんなオウジの腕をガッシと抑え込み、
そのまま彼を、厚い胸に抱きかかえた。
「なっ、何すんだ クソオカマ!!
離せっっ!」
どんなにもがいても、ショウゴの力にはかなわない。
オウジは身動き一つとれずに
抱え込まれてしまっている。
「ヨシヨシ・・いい子ね」
ショウゴのゴツイ手が
オウジの頭を、ぽんぽんと叩いた。
「チクショウ
離せよヘンタイっっ!
ブタ髭!! デブオカマ! くっ・・・」
「今度はね
オウちゃんが、
アタシの愛をチャージする番なのよ。」
どこから出すのか、
静かにそうつぶやいたショウゴの声は
まるで聖母のようで
オンナのように 柔らかくはないその胸は
厚く暖かだった。
母親なのか、父親なのかわからないが
不覚にもオウジは
大きな何かに包み込まれてしまった。
ナゼかふいに、切なくなる。
「・・わかったから
・・ 離せよっ」
大人しくなったオウジを そっと体から離すと、
ショウゴは満面の笑みを浮かべた。
---------------------------------To be continued!
このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。
なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。




