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53、夢見るマシュマロ女・1





カイの部屋のカギを 手に入れた。




これでカイの都合とは関係なく


スキな時、スキな場所に 行ける。





そして、いつでも帰れる場所があるというコトの


証しであるこの合鍵は、



根無し草なオウジに、


根っこを生やす 重要なアイテムだった。





と言っても、出かけるときは



カイとコラボする時か、タバコが切れた時。





この日も、1人でタバコを買いに出たついでだった。




オウジはセントマークスプレイス辺りをふらつき、


13丁目で ショウゴの店の前を通った。





午後4時すぎ。




曇り空の下に広がる平日の1番街は、


そこそこの賑わいを見せている。






窓から覗いた居酒屋 SHOCHANの店内は薄暗く、


従業員が数人いるだけだ。 



どうやらディナータイムまでの


休憩中のようである。





オウジは冷やかしで 木製のドアを開け、



シルバーアッシュの前髪の隙間から、


イタズラな目をのぞかせた。





今、買ったばかりのハットを


見せびらかしたかっただけ、とも言う。







「オウちゃ~~~~~~~んっっ!!!」






オウジを見つけるや否や、


カウンターの奥から 黄色い声を発しつつ



筋肉質のイカレ店長が、


オネエ走りで駆け寄ってくる。






「うわっ!  何すんだっ 離せクソヒゲ!」




「いや~~ん 離さないぃ~~」






抱きつくというよりは


柔道の技かなんかだろ、その密着度and馬鹿力。






「ギ・・ギブ、ギブ!!」






オウジはジリジリと歩み寄ったテーブルにタッチするが、


まだ離してもらえない。


こいつ、プロレス知らねーのか。



ショウゴはうっとりと目を閉じたまま。






「お願いもうちょっと・・・ もうちょっとだけ・・っ」




「オトメな声で囁いてんじゃねーよ! 

キモいんだよっ!!」






オウジが引きはがそうとしても、


元柔道部、元警官の鍛え抜かれた筋力である。




カウンター席では


マシュマロ女・ジェシーが、笑ってる。




今日は非番なのか、


ギャルソンエプロンを付けていない。







「おーーい なんとかしろよ、このクソ店長~!」




「ショウちゃんは今、

エネルギーチャージの真っ最中なのよ」





「はあっ?」





「ぷはーーーっ! 

生き返ったわぁ~!!」






水面に上がって来た セイウチのような息を吐き、


やっとショウゴが手をほどく。






「もうアタシ、血中イケメン度が下がり切っちゃってさぁ!

死ぬ寸前だったのよぅ~~」






生き返ったショウゴの頬は、ピンク色。






「んだぁ そりゃ?!」





「ショウちゃんは

イケメンのオーラを吸って 生きてるんですって。」





「だって、もう2週間!! 

2週間もカイちゃんに逢ってないんですもん!

 

動悸息切れ、メマイはするわ手はシビれるわ・・・

あああぁぁぁ」





「コーネンキだろ?

キューシン飲んでろ、カマジジイ」





「あ~っ久々の悪たれ口! 

いいわぁ お肌引き締まるわー! 


さあさ、何にするっ? 

バド?それともバーボンソーダ?」 






黒く焼けた肌に脂のノッた光を


取り戻したイカレ店長は、



スキップでカウンターに入った。




冷蔵庫からオウジのために バドワイザーの小瓶を


出して、いそいそとつまみの用意を始める。






「ショウちゃん、 大丈夫かしら・・?」





ジェシーが、銀縁メガネの奥の目で


不安そうに、店の入り口を確かめる。




例のオウジを狙うヘビ女、


井上真由美を警戒してのコトだ。






「へーきへーきぃ!! 


キヨポンは 昨日来たばっかりだものぉ 

今日は来やしないわよ!


来たって、

この銀髪だものわかりゃしないって~~ 

ブォホホホ!」






美少年オーラを満タンにチャージして、


ショウゴは天下無敵だ。






「キヨポン・・? なんの話だ?」




「なーーんでもない、ない!」






ショウゴは店に流れる


ラテン系ミュージックの音量を大きくし、



自らも、合っているのか不明な 巻き舌で歌いながら


ゴキゲンに腰を振り始めた。





「よう。」





オウジが、カーキのモッズコートを脱ぐ。



そしてカウンターに座っているジェシーの隣に座りながら、


人懐こい笑顔を、彼女に向けた。





これは、自分に好意を持っているオンナに対して


オウジが条件反射でやってのける



ヒモやジゴロの天性をめいっぱい発揮した、


営業スマイルである。







「今日はカイが一緒じゃないのね」





「別に・・っ

いつもツルんでる訳じゃねーよ」






テレ隠しの、ムクレ顔が 年相応で可愛い・・。



などと思ってしまう自分を、ジェシーは戒める。






掴みどころのないワル男に、


10も年上の自分は


まんまとハメられるワケには いかないのだ。






えんじ色のハードカバーの本を読んでいたジェシーの、


何かの分厚い専門書を



オウジが、パラパラとめくってみる。





英語表記の上に


専門的な単語が 羅列されまくりで、



何のことやらサッパリだ。





そうでなくても、義務教育は、ほぼサボリ。




英語を耳で覚えたオウジは、読み書きが苦手なのだ。







「すげーー字がちっせぇ~! 

わかんなスギて、もはや呪文だぜ。 


コレ何の本?」





「心理学なの・・」





「へえ  

やっぱアタマいいんだな、アンタ。」




「そういうわけじゃないけど・・・」






こんなくったくのない笑顔を見せられると、


すぐさま心を引っぱられてしまう。




ジェシーは思わず目をそらせて、


ハーブティーを一口飲んだ。






カウンターの向こうでは、


イカレ店長が



両手に持った包丁を


マラカスのごとくに振りながら、



まな板の上の数種類のハーブを 細かく刻んでいる。





店の中は、色んな香辛料の混ざりあった、


多国籍な匂いで いっぱいだ。




マサイの人形や日本の花笠、



ハワイ土産の、すでに朽ちたレイから


エスキモーの帽子に、メキシコのマラカス



アボリジニのブーメランまで





なんでもかんでも 陳列しまくりのこの店には


統一感どころか、


セッソーというモノも、まるでない。







「アンタさ、

何でこんな店で働いてんの?」




「何でって・・?」




「似合わねーだろ、こんなフザケた店」






ジェシーは、あら、と目を丸くして、


すぐにコロコロと笑った。






「こんな店って、どー言う店よおっ?!」






カウンターの向こうから、


口を尖らせてショウゴが お通しを出す。




今日はタコのカルパッチョ。


グリーンの特性ソースがかかってる。






「あ、うめえ~~このタコ! 

ショウゴ、料理だけは天才な!」





「でしょ、でしょっ?! 

このグリーンソース、

あたしが腰振りながら作ったのよっ、こうやって!」





「うん、ンマイ。」






そのオウジのスナオな笑顔に、


ジェシーの頬が少しばかり赤くなる。




きっと本来、この少年は


こんなにフツウの男の子なのだ。







---------------------------------To be continued!


このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

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