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45、キヨシの野望・2





「行方不明の少年・・?」





ショウゴは、一度だけすっトボケ。





「あーー!


あの黒髪で~、黒づくめでクールなお目目で~、


くっそナマイキなのに

寝顔が赤ンボみたいに 超~カワイくて、


ローニャクナンニョ ダっレでも落としちゃうって~、


黒髪ジゴロちゃんねぇ?」





「え?  そんな情報あったっけ・・??」





「もう、そーんな黒髪なコがいたら


ショウちゃん真っ先に 食べられちゃう~~ぅ!


早く捕まえて連れてきて、


その黒髪少年ちゃ~~ん!!」






“黒髪”をわざわざ連呼して、


キヨシのイシキに刷り込もうとしている、


策略がバレバレだ。




カウンターの中で、この店特性のオイキムチを


小鉢に取り分けながら、




ジェシーは吹き出しそうになるの をこらえた。







「アハハッ ヤダなショウちゃん

自分の好みに 脚色してない~? 


オレ、レモンハイね。」


 



「は~い、レモンハイ一丁~!」






と、オーダーを通すために 厨房をふり返り、


ショウゴはペロリと舌を出す。




ディナータイムには まだまだ早いこの時間、


キヨシの他に、客は一組だけ。






カウンターに座っているキヨシのところに


キースが運んできた 今日のお通しは、




ケチャップがどっぷりの、


いかにもアメリカ~ンなポークチョップ。






またしても、


謎の黒づくめ失踪少年に関しての、収穫はなかった。






ああ、ボスの真由美に なんと報告したものか。





あのツリ上った目つきを想像すると


ユーウツなキブンだ。






――ま、いっか。 


別にオレが悪いワケじゃ ナイもんな・・。






今日のキヨシは悪びれずに


バッグの中をごそごそあさり、



1枚のポスターを取り出した。






「あの・・それよりさ、

カイって元女形だよね? 


たしか、この嘉川京之助って 歌舞伎役者、


カイの関係者じゃなかった?」





「あらぁ~~京さまーー! 


いやん、カイちゃんのお父様よっ、 

どしたのそのポスター?」





「やった、ビンゴだ!」






キヨシも、今度は大きく ガッツポーズをとった。






「実は今度さあ、


この嘉川一門が

NY公演をやることになったんだよ!


うちのTV局もスポンサーにつくんだけどね」






そのポスターには


来年のNY公演の日取りと、



凛とポーズをとるカイの父親、嘉川京之介、




そして嘉川一門の役者たちの顔が


並んでいた。







「日本の局では


それに向けて

嘉川のドキュメンタリー番組を、撮ってるんだ。



でさ、こっちはこっちで


一門の秘蔵っ子、カイのNY生活を追って


その番組の中に

組み込んだらどうかなーーって・・!」





「あのヘビ女・・・じゃなかった 


えーと、

井上真由美がそう言ったの!?」






今度はカイにまで 魔の手が忍び寄るのかと、


ショウゴの声が 応戦体制。




真由美はもはや、


ショウゴの図表では 天敵の位置なのだ。






「いや、ボスはまだ知らないよ、


誰も嘉川の息子が 

NYでグラフィック描いてるなんて


思ってもいない。


 

だから、オ・・オレがさ 企画しようと思ってんだ!」






キヨシの目に、妙な目力。




日本で4年、こっちに来て3年。



そろそろイイ企画を立ち上げて、


真由美に こきつかわれるADの身から


解放されたい。







「ね、ショウちゃん、

カイに取り持ってくれないかなぁ?」





「どうかしらぁ・・・

カイちゃん、家を出てきたんだし・・


あんまり表に 出たがらないと思うけ・・」





「わ、悪い話じゃないよッ!」






思わずキヨシが立ち上がる。






「今は稼業を放り出して


NYに逃げ込んだ、みたいな形んなっちゃってるけどさ、



カイがこのアートの中心地で


グラフィックライターとして 名を馳せてるってのは、

嘉川一門のアピールに・・



そもそも、カイの存在を


肯定することにも なるじゃないかっ!!」






普段は、その他大勢的人生の キヨシのハナ息が、


めずらしく荒い。







「そ・・そうねえ・・?」





「いいじゃないデスカ!TVショ~!! 


カイは画づらもいいし、絶対ウケますヨ。 


これをキッカケに


お金持ちで美人のパトロンが つくかもデスぅ~!」







ドコにでもカオを突っ込まないと


気が済まないキースも、コーフンぎみに参戦する。





おせっかいジェシーも レタスをちぎりながら、



耳だけこちらに 傾けている。






確かにカイが、何がしかの道で、


頭角を現してきている コトを知れば、



カイ達親子の間のミゾも


多少は 埋まるのかも。






この親と子の間に 何があったのかを


ショウゴは知らないが、




家を出てきたカイが、父親に対して



何か複雑な想いを 抱えていることは


わかっている。







ショウゴは日本にいた頃から、



あらゆる美形の男を チェックするのが


生きがいだった。





歌舞伎界でも、


オーソドックスな人気役者達や、



カイの父親である 嘉川京之助ももちろん、





カイやヒナにも


子役の頃から 注目していたヒイキ筋である。





その後NYに移り住み、


10年間働いて ようやく小さな店を


構えることができたショウゴが、




別人のようになったカイに


出会うことになろうとは、夢にも思わなかったが。






衰弱しきったカイを ずっとそばで見守り、


支え続けてきたショウゴにとって





カイは今でも 


絶対に守るべき天使であり



アイドルであり、マドンナなのだ。








ヤンキース帽のつばの下から、


キヨシの細い目が、



ショウゴをじーっと見つめていた。






この若いAD、根はマジメな好青年。


が、今はチャンスを目前に 妙にハイテンションだ。




気持ちに先走って、


何かやらかしてくれそうな気配、まんまん。





それにキヨシは、


オウジを狙う暗黒大魔神、ヘビ女・真由美の手下。




今キヨシをカイに近づければ、


もれなくオウジの居場所も バレてしまうだろう。







「実はアタシ・・ 


カイちゃんを怒らせちゃって  

・・・ 絶縁状態なのよ・・」






ショウゴは目にいっぱいの 涙をにじませて、


ため息をつた。






「えええ~っ?!マジで? 

いつも仲よかったじゃん 何でさっ!?」






その反応が、ショウゴにスイッチを入れ、


脳内スポットライトの 出力を最高にした。






「だって~~ぇ 


豹柄コートのカイちゃん 

あんまりセクシーだったのよぅ。



野獣のような、カイちゃんの色メキ! 


子豚のような、ショウちゃんのトキメキ!



ああっ、アタシもうムラムラしちゃってえーー


つい つい、押し倒したのっっ!



でねでねっ、こうやってカイちゃんの首筋に


ショウちゃんのゴツイ 

上腕二頭筋をからませてぇ、


そしたらカイちゃんが 潤んだ瞳で・・・って、


オイ聞いてんのかよ、キヨシ!!」





「れ、連絡取れないの?! 電話番号はっ?」





「知らないわよぅ・・ 

カイちゃんはナゾの美少年だもの。 


だいたい、アタシに教えたら


毎んチ夜這いに 行っちゃうじゃないのぉ~~ 


ねえーーっ?」






ジェシーも苦笑いしながら、うなずいた。






「マジでぇ?! 


くっそーー 

ショウちゃんなら 絶対だと思ってたのにー!!」






キヨシは首をうなだれて、


ヘナヘナとイスに座り込んだ。





カイが懐いているショウゴからの一押しは、



絶対に必要な 援軍だったのに。






絶ボー的なキヨシの背後に、


あっけらかんと、ラテンの音楽が流れてゆく。






「マジかよぉ・・・」





すっかり気を落としたキヨシは


不味そうにレモンハイをすすった。





カウンターの向こうでは


ショウゴがラテンのリズムにノッて



キャベツを千切りにしている。






―― ちぇっ・・


ショウちゃん、実はギリ堅いもんなぁ


カイを、どこまでも護るつもりなんだな。



やっぱ、隠し撮りで 進めるしかないかぁ・・・。






「今日はサンマが、おススメですヨ~~ 


日本の銚子から直送、

冷凍モノが入ってきマシタ!」






キヨシの前に、そばかすキースが


今日のディナーのメニューを持ってきた。




この日のカウンター席担当の ウエイターは


ハッピ姿のゴキゲンアメリカ人、キースだ。







「あ~、サンマね・・。 」




「・・ボクはオモシロイ思いますよ? 

カイはスバラシ 絵描きさんデス。」




「・・・?!」






ショウゴに聞こえないように囁く、


そのソバカスの白い顔を見て、



キヨシは 真由美の言葉を思い出した。






『 タヌキ親父は食えないけれど、

 あの白人男は使えそうよ・・・ 』





「そ、そうだよね? キース・・!」






キヨシも、ショウゴに聞こえないように


声を落とした。






「梨園を捨てて、

NYの路上に 天使を描き続ける イケメン・・! 



コレ、画になるよね!」





「ボクは絶対、

天使はカイの コイビトと思いマス!! 


キヨポンは、ど思いマスカ?」





相棒を見つけたキースも、ルンルン。






「天使は恋人かぁ・・ 


ますます ドラマチックだなあ~!」






「ショウちゃんの話では、


カイがNYに来たコロは

すごく落ち込んでいたらしデスよ」






「天使にフラられて・・? 


カブキの世界を 捨ててまで来るんだもん、


何かスゴイ

曰くがありそうだよね・・!」






このヤジ馬白人青年は、役に立つ。






「キース、サンマ貰うよ。


それから、タコスとトーフサラダと

焼きビーフンもね!」






キヨシは目の奥に


ねっとりとした炎をチラつかせ、



いつもよりツマミの注文を 奮発した。






---------------------------------To be continued!


このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

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