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44、キヨシの野望・1




冷たく晴れ渡った 12月のダウンタウン。




風が雲を押し流す。





なけなしのコインを使い果たした


オウジとカイは、




ついに、サマーキャンプならぬ、


2人限定の 気ままな合宿状態から、抜け出した。







ダウンタウンの路上で


カイがグラフィックを描き、



その傍らで


オウジが ブルースハープを吹く。





そうして街の 観客から集めたチップで、


2人はその日の食料を買い、




週末のフリーマーケットで


服やら雑貨やら、



欲しいものを手に入れるのだ。






オウジは、そんな風にカイとツルんでる事が、


ただ、無条件に楽しかった。





いつも自分の隣にいる


このオトコは、



映画みたいな街の 


どの風景ともマッチして、



スタイリッシュなシーンを 創り上げる。





カイは、生まれながらの主人公だ。





そして、彼と同じ歩調で歩いてる


自分だけが、



カイ・サカモト主演の この物語に属する




たった一人の共演者だ、



という、優越感。





街を歩けば、


みんなが、オレ等2人を振り返る。





空は澄んだ、アイスブルー。 





どうしたって、 キブンがイイ。






「ふふっ・・」





隣でカイも、笑ってる。





「んだよ?」




「みんな、ボク等を 見てるね」




「そ~かぁ?」





とか、気づかないフリ。





「あの人達は何かしら? 


同じ東洋人だけど、兄弟でもなさそうね・・。 

親戚? 友達かな? 


それとも恋人同士?」





「アンタ、自イシキカジョ~。 

そんな事 いちいち考えるかよ」





「何なんだろうね? 


  ・・ボクたちは?」





少し背の高い、自イシキカジョ~が


オウジのカオを覗き込み




ちょっとイジワルな微笑みで、


彼の黒い瞳を捕える。





この超がつく美形に みつめられて、


目をそらさずにいられるヤツなんて いるだろか。






「し・・知るかよっ」 



――やっぱ コイツ 

 ・・オレに 気があんじゃねーか?






ヤバい、


オレも立派に自イシキカジョ~。





やたらと 瞬きが多くなってしまう視線を、


オウジは反対側にある、ショーウインドーに向けた。




その、ちょっとコジャレたブティックの前で


カイが立ち止まる。






「OK、今日はここにしよ。」





カイは、肩に下げていたバッグを降ろした。





中から、チョークの入っている


キャンディー缶を取り出して、蓋を開ける。





そして店の入り口から 距離を置き、



水色のチョークで


4m×5mほどの四角形を


コンクリートの上に 縁取った。






「いつもより、サイズがデカイじゃん。」




「うん、今日はこれくらいのカンジ!」






この水色の境界線が、2人のキャンバスだ。





オウジは店の横にある、


アパートメントに上がっていくための


階段に腰かけて、




カーキ色の コートのポケットから


小さなハーモニカを取り出した。






「・・さて、

今日はどんな音がするのですか、


オウジさま?」





カイは、その日の 


街の奏でるメロディーを 聴きたがる。




オウジにしか聴こえない


ダウンタウンの歌だ。






イタズラなに誘われて、


街の音にチューニング。






風の音 


イエローキャブのクラクション 




猫の鳴き声



アメリカ語 チャイナ語 スペイン語



 

ダンスミュージック

 

物乞いの声  



喧嘩するカップル  





祈りの歌







シルバーアッシュに染めてから、


オウジは髪を 逆立てない。





洗いざらした前髪の 隙間から覗く


切れ長の目を、静かに閉じ




彼が聴き取る 街のメロディーは、



いつも 


どこか感傷的だった。






ブルースハーモニカが奏でる


その音に 包まれて、




ロングコートを着た スレンダーな青年が



コンクリートの上の


切り取られた空間に、




すべるように


チョークの色彩を 広げていく。






オウジとコラボする時には、


カイは 天使を描かなかった。





彼がオウジの音の中から カンジるのは、


いつも大自然の中の 


ひとつの風景だ。





この日にカイが描いたのは


群青色の 夜の空。




その上に大きく


ミルキーウェイが横たわり 




星々が 輝き


命を祝う。






星がひとつ 描き込まれるたびに、


道端に集まったギャラリーから




「オオ~ウ」と、声が上がった。






美しいものには、感動がある。





ゴキゲンなギャラリーのざわめきを


通り抜け



オウジは、夢うつつの中にいく。






銀髪の少年が奏でる


メランコリックな音と、



甘くかさなる 色の抒情詩。





そして



彼ら2人が醸し出す


どこか東洋的な エロティシズムの香りに



道端のギャラリーは、酔っていた。







「やっぱ、いいなぁ 

バツグンに画になるよ・・!」





ふいに、耳に飛び込んできた日本語に、


思わずオウジが、カオを上げた。





ギャラリーの中に 紛れていたその青年は、


オウジの視線を受けて、


あわてて口をつぐんだ。




そして、肩にかけたバッグにしのばせている 


ビデオカメラに、気づかれないように、



彼は体の角度を、そっとずらした。





――この銀髪、

こないだもショウちゃんの店で


カイと ツルんでたヤツだよな・・?





NYヤンキースのキャップを


深々とかぶったその青年は



帽子のツバから 半分だけ目をのぞかせて、


オウジをもう一度確認する。





――なんか ヤケに目立つよな・・ 


何モンだ、コイツ?






青年はもう一度、


カメラのフォーカスを 合わせようと試みたが、


バッテリーが 切れそうになった事に気がついて、



それを期に、


静かにその場から姿を消した。






――いいぞ 

この企画、かなりイケてるハズだ!






静かにガッツポーズを作りながら、



ヤンキース帽の青年は


ウキウキとした足取りで 13丁目へと急いだ。








カランカラ~ンと、13丁目 居酒屋 SHOCHAN 


の入口ドアの 鐘が鳴り、



いつもの野太い声が 客を迎える。






「あーら、キヨポンいらっしゃ~~い 


今日は早いのねぇ?」





このイカレ店長は、


今日も 冬だと言うのに、半袖Tシャツの下から


上腕二頭筋を 黒光りさせ



超がつく健康を、アピりまくっている。





「最近やけによく来てくれるじゃない!? 

ショウちゃんウレシイ~!


どーお? 


TV局のお仕事は ウマくいってる~?」






ホカホカのおしぼりを渡しながら、


ショウゴは、つぶらな瞳の奥で


キヨシの表情を伺った。





「へへっ  し、仕事にちょっと空きが出てさ

・・・わりと時間があったりして?」






というのは、


この店によく顔を出すようになった目的を


隠すための、ウソっぱち。




キヨシは、脱いだコートを 椅子の背もたれに掛けた。





いつも、ダウンタウンの古着屋で買った、


似たようなロゴ入りのトレーナーと


ジーンズ姿のキヨシは、




ヤンキース帽をかぶったまま


カウンターの椅子に腰かけて、



店の中を、ひとまわり見回した。






「えーとぉ、変ったことなかった? 


あの・・ 例の~ 


行方不明の少年について、

なんか分かったことないかな?」





ホントの目的は、コレなのだ。







---------------------------------To be continued!



このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

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