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34、美津子の刺客・3






今夜のカイは栗毛色の髪を


サイドから中央に モヒカンアップしていて、



スレンダーな体が、余計ノッポに見える。





普段はお目見えするコトのない、



体のラインにぴったり沿った 金ラメシャツの


ナンバー1ホスト仕様のカイに、



ショウゴはもう テンションマックスだ。






「カイちゃんってホンっトに なんでも着こなしちゃうのね! 


お悪なカイちゃんーー、

セクシ~あんどワイルドぉ~~! 


もうーー、アタシを食べちゃってーーーっ!」





「ショウゴさんだって、

今夜もチャーミングなお腹だよ。

 

食べちゃおうかな?子豚ちゃん」





「子豚じゃなくて

大豚のチャーシューだろ? 


おーーい、チャーシュー麺一丁な!」





予想通りのショウゴの反応に、オウジもご満悦。





「オウちゃんも可愛い~~ぃ 


どしたのピンクなんか着ちゃって!

超似合ってるぅぅ~~」





「ちっ、

オレじゃなくてコイツのシュミなの!」





「さすがカイちゃんだわ! 

オウちゃんのこと よくわかってるうー」





「ボクはシルバーアッシュの前髪だけ、

桜色にしようって言ってるんだけど」





「ヤだね! 

そんなロリコンアニメに出でてくる

オンナみたいな色」





「絶対似合うのに 


・・・・あっ・・・!」






カイの全身が突然フリーズし、


すべての動きが 5秒だけ止まった。




そして、すいっと立ち上がったかと思うと


店の入り口に向かって、足早に歩き出す。






「えっ・・? 帰んの?


おい、メシどーすんだよ?」





「オウジ君は ゆっくり食べておいでよ!」






カイは夏祭りに行く子どもかよってくらい


目を輝かせ、




オレ達には見えない羽が 生えてしまったらしい


その背中を向けて、



あっという間に行ってしまった。






「カイちゃん絶好調ねぇ~。」





ショウゴはハート形の目で、カイを見送る。





「ゼッコーチョー?」




「何か思いついたのよ。 

きっと、すごく楽しいこと!」




「ふーーん 

アイツも相当 イカレてるからな・・」




「待ってて、 今おいしいモノ作るわねっ」






そう言って、ショウゴは


バドワイザーの小瓶をオウジに渡し、



カウンターの中に いそいそと入っていった。





「まったく コイツらといると・・


毎ン日が祭だな」






オウジは一息つくと、カウンター席に移り


バドワイザーのボトルに口を付けた。





カウンターの向こうで、皿を拭いているジェシーは、


なんか、しょぼくれてるカンンジ。




オウジの視線を感じたジェシーと、


今夜は初めて目が合った。





「ハィ」





そう言ったオウジの声が 聞こえなかったかのように、



ジェシーは視線を落として、


もくもくと皿を拭く。




彼女は、どんな顔をしてオウジを見ればいいのか


わからなかった。






いつもの人懐こい笑顔と


姉さんぶりを発揮しないジェシーを


フシギに思ったオウジに、



キースが 今夜のお通しメニューを持ってきた。





「オウジはカイの恋人デスカ?」





ひじきサラダの小鉢を出しながらの、


いきなりの直球である。






「はぁ? んなわけねえじゃん」



「ふーーん?」





じゃあ、いったい何が目的でカイと一緒に・・?と


オウジを見るキースの目つきも、昨日と違う。




今日は他の従業員はいない。


客も一組だけ。  




なんとなくそっけない空気が 店にたたずんでいる。





――カイがいないと、こんなもんかな・・。





オウジは一人でKOOLをふかした。






「ささ、できたわ! 

これ持って今夜はカイちゃんの所に、お帰んなさい。

 

きっとオモシロいもんが 見られるわよ~」





変わらないのは いつもハイテンションな、


このチャーシュー親父だけである。





「えーー、マジかよ

腹減ってんのによう~~」




「いーから、いーから。」




と、背中を押され。




「あ・・!」





ドアの前で 何かを思い出したオウジが、


カウンターの中に居るジェシーのところに


戻って来た。





「オレの飲み代、オマエが払ったんだって? 


これで足りる?」





オウジはポケットから


クシャクシャになった20ドル札を2枚出すと、


カウンターに置いた。






「 ・・ちょっと多いわ 」



「サンキュ。 助かったぜ姉ちゃん」






用が済むなり、


さっさと行ってしまうこの少年は、



今夜もあの晩のように、


年上のオンナに効果絶大の ムジャキな顔で笑っていた。




この笑顔は、


どこまでホンモノなんだろうか。





本当にこの少年が数々の大人を タブらかし、


思い通りにしてきたのだろうか。




日本からやってきたばかりなのに、


やたらと存在感を見せつけてくるこの少年。





―― 天使・・?



    それとも悪魔なの ?






ただ、ジェシーにわかるのは、


混乱しながらも 妙に気にかかるという、



認めたくない事実だった。






「ホントに似合うわ~~この色。


ね、オウちゃん、

もう黒い服なんか 絶えっっ対に着ちゃダメよ!」






店の出口で、オウジに夜食の入った


風呂敷包みを渡しながら、



ショウゴがいつになく マジな顔。






「それからね、うちのスタッフから


新型急性ハイクオリティ

トリブタタヌキインフルエンザが出たのっ 


東洋人の若い男ばっかり

コロコロ死んじゃってるって話よ! 


だから暫くは 


絶対に 絶っっ対に、店に来ないでね!!」





ショウゴはオウジを、ギューッと抱きしめた。





「ゲッ、何すんだ 

このっ オカマオヤジ!!」




「だって暫く会えないんだもーーん。  

じゃあねっ! 


ショウちゃんは いつも美少年の味方よーーーっ」





ショウゴは手をブンブン振りながら、


オネエ走りで逃げて行く。






「・・ホンっト、


  イカレヤロウばっかりだな・・!」






オウジは、ダウンタウンの空を仰ぐ。




何かの目的で作ったわけではない笑いが、


ボロボロとこぼれ落ちてくる。



ああ、オレも イカレてる。






「えーーと、

あっちがエンパイアだから、上、だな。」






オウジはエンパイアに背を向けて、


カイの部屋のある、7丁目に向かって歩き出した。







--------------------To be continued!



このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。


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