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27、節くれだった丸い指先・3




周りの話し声が、空間の中に溶けてゆく。



そしてゆっくりゆっくり 


気だるい音楽おとへと 変わってく。





風の中に メロディーが聴こえる。





――あ  書き留めなきゃ・・・



  イヤ



   ・・もう、いんだっけ。






曲なんか書いたって、


歌えないんだから イミがない。 



歌う場所だって ナイんだし。





――そーさ、 だからもう



  どーでもいい・・・。






このまま 消えてしまえたらいい。




このまま、


まるで生まれて来てなかったみたいに、



何もかもを白紙に戻して、



 

この空間に 


溶けて行けたら いいのにな。







「あらあら~

ボクちゃんは寝ちゃったじゃないの。


主役なのに~~ ダメねぇ」





ショウゴの目は、赤ん坊を見る母親みたい。





「よっぽど疲れてるみたいだよ。


一昨日も いつの間にか寝てて、

そのままずーっと眠ってたんだ 」




「こうして見ると、まだあどけない顔してるのねぇ・・

 可愛いわぁん 


起きてると、ナマイキちゃんだけどぉ。」




「ウッテ変わって ムボービな寝顔デスね!」




「ち、ちょっとカイちゃん  この子・・・。」





閉じているオウジの、黒いまつ毛から


涙がひとつ 流れ落ちる。




カイの中で、鼓動がひとつ


小さな音を立てて 鳴った。





「オウ、何かワケあり少年デスかね~?」




「やーね  この知りたがり坊主が!

やたらに人の過去を 詮索するんじゃないわよ?」




「ノーウ! そんな事シマセンよ~~ぉ」






ショウゴはオウジの あどけない寝顔を見つめ、


ふうと、ため息。






「だいたいね、


この街に流れ着く人間なんて 知れてるわ。



野望に駆り立てられて 狂ってるか 、


過去を忘れたくて 溺れに来てるか、どっちかよ。」





「ボクもそうだったな  ・・溺れまくってたよね。」




「ええっ! カイが? ですカ?!」






キースがこの店でカイに出会ったのは


半年ほど前だが、



その頃はもう ダウンタウンのグラフィックライターとして


知る人は知る存在だったし、




そもそもカイには


幸せを絵に描いたような 印象しかなかったのだが。






「投げやりで イラ立って荒んでて。 



でも、その瞳の奥で 


何かを 必死に探してる・・。



彼は、ココに来た頃の ボクに似てるのかもしれないね。



・・だから、

なんか 放っておけないのかな?」





「あの頃のカイちゃんの方がヒドかったわ!


このボクちゃんは 殺しても死ななそうだけど、


カイちゃんは、風が吹いたら飛んでいきそうなくらい

だったもの」




「ええ~、そうだった?」




「人相が変わってたわよ! 


このアタシが、小さな頃からず~っとヒイキ筋だった

11代目寿三郎だって


気が付かなかったくらいだもの!


んもぉ カオも青白く痩せて、クッラ~イ目をして・・」





「テンサイ女形が ダイナシですネ!!」




「そんなにヒドかったかなあ~~  ハハッ」





「いいのよ。 痩せてもコケても、

転んで立ち上がれなくなってもね。


這いつくばるだけ這いつくばって、

休むだけ休んで、 


また 瞼を開ければイイんだわ。



カイちゃんが そうだったようにね・・・」






ショウゴは手を伸ばし


その節くれだった丸い指先で、



そうっと、オウジの黒髪をなでた。






オウジは自分を 捨てて行った父親が、



幼い自分と


おもちゃのピアノを弾いている 夢を見た。






--------------------To be continued!


このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。


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