19、憧れに続く道・2
「おい、ヒトの話聞ーてんのか?
オレは 吹けねーつったンだよっ!!」
飛んできた銀色のハーモニカを、
思わず 受け取ったてしまったが。
「うん、吸ったり吐いたりすれば 音が出るから。
なんか吹いて。」
「ああ~? 何言っちゃってんの」
「そうだ、あれ吹いてよ!
キミが 天使の前で歌ってたヤツ」
「何、それ」
「ボクがオウジ君を拾った時に、歌ってた・・」
「拾っ・・ オレは猫じゃねーぞ!」
「あ、歌う?」
「歌わねーよっっ!」
とか言ってから。
―― え、歌ってた・・?
オレが、天使の前で・・?
じゃあ、あん時
天使が 歌ってたのって・・
ヤっべぇーーーー!
オレがラリって、自分で歌ってたのかよ・・?
道端で気持ちよーく 歌っちゃってるなんて
ただのヨッパライじゃねーかぁ!!
赤くなってるカオの温度を
むりやり1度5分下げて。 平然を装って。
―― ・・・でも
オレが 歌ってた?
歌えたって コトなのか・・?
まったく身に覚えがない。
海馬やら大脳皮質やら、ぜーんぶが
もやもやとグレーの雲に 覆われてる。
カイはカバンから 大きなキャンディーの空き缶を出すと、
長い指先で手際よくフタを開けた。
中には色とりどりのチョークが
びっしりと、詰まってる。
――え、マジか・・?!
こんな、子どものお絵描き道具で、
あの天使を描いたって?
カイは被っていた ブルーグレーのソフト帽を、
道のかたわらに さかさまにして置くと
「最初は こんなカンジかなーー?」
と、赤いチョークを壁に走らせた。
その時、背後から カン高い声が降って湧いた。
「あらウレシイい~~っ カイちゃん
やっと描いてくれるのねーーーっ!!」
いやな予感と共に振り向くと、
オウジの目の前に 色黒でずんぐりむっくり、
髭ヅラの中年オトコが 両手で頬をおさえながら、
乙女の目つきで、カイを見ていた。
――またヘンなのが現れた・・・
あっ、コイツがショウゴ?!
カイが、もう何も聞こえていないかのように
何色ものチョークを走らせる。
店の壁には、あっという間に
雲のグラデーションが 広がっていく。
赤をベースにした、
朝焼けの 淡く、鮮やかなグラデーション。
穏やかでありつつ 命の力強さが湧き上がる
カイ独特の、色彩の空が
どんどん描かれていく。
その集中力と展開の速さ、クオリティの高さに
オウジはただ唖然と
突っ立って見ているしかなかった。
「カモン オウジ!」
「カモンて・・・」
気づけば、すでに何人かの通行人が
ギャラリーになって 周りを取り囲んでる。
彼らの うきうきした視線もまた、
カイの空にくぎ付けだ。
「ね、あの曲 こんなカンジだろ?」
カイのその言葉で 視線を戻すと、
目の前に広がる壁の空と、
あの時聞こえた フルオーケストラの壮大な音楽が、
いきなりオウジの体の真ん中で
バシッと音をたてて一致した。
そして、何かに突き動かされるように
オウジは ハーモニカに、口をつけた。
--------------------To be continued!
このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。
なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。




