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17、モスグリーンのパスポート・2






「じゃあさ 小遣いかせぎ、する?」




カイの眼が、がぜん楽しげに オウジを誘った。




「何すんだよ?」




そのいたずらな瞳に、つい釣られ。




「OK 決まりだ! じゃ、日の暮れないうちに行こう」





カイはローズに 素早く支払いを済ませ、


もう店の出口に向かってる。





「お、おい・・っ」





ついぞ慌てて、テーブルの上の


化け物ケーキなどを持ち



オウジは カイの後を追った。






カイのフットワークは すこぶる軽い。



思いついたら、まんま行動する


子どもとおんなじだ。






昨日逢ったばかりの、この妙なオトコに


オレは 振り回されっぱなし。




でも、ワルい気がしない。  





これから起きるワクワクな事だけを


映し出してる彼の




夢とか 花とか 




オマエは少女マンガかよって


ツッコみたくなるような



ナンかが あふれ出てて




気づけば同じ速度で 隣を歩いてしまってる。






こんな風に 誰かとツルむなんて、


今までの人生に なかったのにな。






「ドコ行くんだよ?」



「ナイショ。」





ヤバい。 


なんか、ココロハズんできた。




やたらとエネルギーのある、この街のせいだろか。





それともコイツの栗色の髪が 



小気味よくリズムを刻んで


揺れるから?






午後の日差しに 雪の白が反射して、



街がキラキラと眩しい。






――  世の中って  



いつも こんなに 



   輝いてたのかな・・?






それは 


全く新鮮な、大発見だ。






雪の解けてゆく道を


はしゃぎながら歩いてゆく観光客。






――あの、路上に描かれた


チョーク画の天使は どうなったんだろ・・。






この雪の下に 埋もれてるだろうか。





カイは、颯爽と隣を行く。





不安も悲しみも、


自分とは無縁だとでもいうように、



力強く そして軽い足取りで。






―― コイツは 平気なのかな・・? 






だって自分の描いたモンが


泥にまみれてるかも知れないんだぜ。




それを他人が気づきもせずに、


グチャグチャに 


踏みつけて行ってんだぜ。






―― ・・そんなの  


オレは 


絶対 耐えらんねーよ  






踏みつけられるのは 怖い。


だからいつも 先に吠える。 






―― ああ、クソ  


オレは弱っちい チビ犬だ・・・!





些細なことで、心が揺れる。




ウキウキしたり 沈んだり




この街に着いてから、


オウジのココロは忙しい。




でも、


そんなのも、なんかワルくない。 





裸になった街路樹の枝が 


太陽をあびて笑ってるみたいだ。




ちょっと 眩暈がする。





イースト・ヴィレッジの街と


オレの体が 呼応してる。





生きてる。





そんなカンジかな。





ああ、やっぱ オレ


すげーヘン。






1歩先を歩いていたカイが、


自分のアパートメントの前で 立ち止まった。





「ちょっと待ってて!」





階段をかけあがる後ろ姿を 見送りながら、


オウジは道に立ち止まる。




風はつめたく


気温もずいぶん低かった。



六本木からすれば、もう北国だろ。





「チクショウ美津子め


こんなジャケットじゃ 寒みぃじゃねーかよッ」





手には、ブルーハワイ色のケーキを持ってる、オレ。





「あーー ・・・  


どーすんだよ コレ・・。」






ふと、何かが気になった。




辺りを見回すと


似たような赤煉瓦造りの建物が、並んで立っている。 





モスグリーンやサーモンピンクの


アパートメントがあるのだが、



街全体として、色の調和が


しっくりととれた、落ち着いた街並みだ。





「あれっ?」





向かい側のアパートメントの階段が、


そこだけ白く、光って見える。





通りを渡って近づくと、古びた階段の側面に



チョークで描かれた 天使がいた。





「 カイの天使・・? 」





サイズは、路上に描いてあった天使より 


かなり小さい、手のひらサイズ。 




線が、つたない。  


きっと初期の作品だ。





階段の天使は心なしか 悲しげにみえた。




そして、今にも動き出しそうに


カイの想いがつまってた。





―― なんのために 


 アイツは こんなモン描いてんだろう・・。





通りを歩く人間の、


いったい何人が 


この天使に 気が付くだろう。







「キミはヒナを、よく見つけるね?」






振り向くと、そこにカイがいた。




ソフト帽をかぶり、肩にはショルダーバッグ。


出かける準備はOKらしい。





「・・ヒナ?」




「天使の名前だよ。 

ハワイの“月の女神”なんだって」




「へえ・・」




「ボクの名前は、

日本語でもハワイ語でも“海”なんだ。


おもしろいね」




「ナニが?」




「いろんなものが、

思わぬところで 繋がっててさ!」





そう言いながら、

オウジの首に カイがショールを巻きつけた。



ふんわり。



春風みたい。 





「暖ったかいだろ?」





大判のショールは 墨色の地に


マリンブルーと白がマーブル模様に染め抜かれてる。



まぁ悪くない。




「お、サンキュ」





え、なにスナオに 感謝とかしちゃってんだ、オレ。



あわてて目をそらすオウジに、


カイは小さく微笑んだ。








--------------------To be continued!



このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。




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