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15、エプロンをつけたアクトレス・3




「ぷっ・・!」





どワルを気取るクセに、


ついぞ出てくる


コドモオウジの逆襲に、カイが吹き出す。






「ゴメンね ローズ。 


彼は子ども扱いされるのが 何よりキライみたいだ」





「そのよーね。」





花の名前を持つそのオンナは、


薄茶色の瞳で、悪タレ小僧を見返した。





「ボーイ、確かにアタシから見たら 東洋人は

みんな同じカオだけど、


アンタみたいな品のないガキは

カイの周りにいないのよぉ?


だから、ど~考えても初対面なの。」





「ボクはトーストとハッシュドポテトね。 

卵は2つ、スクランブルで。

 

オウジ君は?」





悪たれ小僧は、メニューとにらめっこ中。





「えっっと・・・」




「あっらぁ~、メニューを読んでみてるのボクぅ? 

エラいでちゅね~。


いいのよー? お兄ちゃまとおんなじで~~。」




「うっせーな、待ってろよクソババア。  

ウエイトレスだろアンタ!」




「アタシはアクトレスよ。」





彼女は毅然と、言い放った。





「はあ?」




「今度ブロードウェイに出る時には

見に来てちょーだいね! 


じゃ、ゆーーーっくり選んで。  


日の暮れないうちにね~~。」





これみよがしなモンローウォークで 腰を振り振り


ローズは去って行く。






「ハハハハッ

キミってホントに・・・アハハッ 


スゴイなあ~~!  敵を作る天才だ!」




「アッチが先に

ガキ扱いしたんじゃねーか! 


自分がババアのくせに・・  


な~にがアクトレスだ」




「ホントに彼女は アクトレスだよ? 

それにまだ30代だ。」





「ウソつけ、すっげーシワだらけじゃん!


だいたい女優ってのは、

美人でスレンダーなもんだぜ」





「スレンダーってわけじゃないけど、

彼女のサイズはアメリカでは標準だね。

 

ボクは こないだ彼女の舞台を観に行ったよ」





「ええっ! マジかよ? 

ブロードウェイってヤツ?」




「オフオフブロードウェイ。」




「なんだよそれ、超どマイナー?  

ダメじゃん!」




「前衛的な 芝居だから、

まずは小さな劇場でやるんだ。 


オモシロかったよ」




「ヒロインかよ?」




「ヒロインの友人のお母さん役」




「そらみろ、思いっきり脇役じゃねーかよ」




「要らない役なんてナイよ。

 

誰かひとり欠けたって、

芝居は成立しないんだからね。」





カイの肩越しに見えるローズは


慣れた手つきで



更やらフォークやらをトレーに乗せ、



誰かがこぼしていったコーラを 


拭きとってる。





派手な口紅のわりに、


彼女の背中がまとっているのは 


どこかイタイタしい生活感だった。





「あのオンナが女優なら、

なんで こんなショボい店で働いてんだよ」




「いつも役にありつけるワケじゃないからさ。


ニューヨークのショービジネスは 厳しいんだよ?」




「フン。  売れねーババアが

夢にしがみついてるだけだろ?


やっぱり、ただのウエイトレスじゃねーか」




「彼女はアクトレスだ。」





聞いたことのない カイのマジな声に、


オウジはハッと彼に向いた。




が、すでにカイは いつものスマイル。





「彼女が、そう言ってるんだからね。」



「へんっ・・。」



「それよりどうするんだよ、注文?」



「こ、コレっ!」





なんとはないバツの悪さに、


オウジは勢いでメニューを指をさして。




数分後、ローズがオウジの目の前に


ドサッと置いたのは、



ブルーハワイ色のクリームが べっとりと塗られ、



ショッキングピンクのチェリーと


なんかグリーンの葉っぱみたいなのと



チョコレートソースに、生クリームに、


ナッツがこれでもかとちりばめられた、ケーキだった。





ワンピースなのに、5人分くらい、


色もサイズも、クレイジー。




血の気が引いた顔で、


ブルーハワイ色のケーキを見つめるオウジに、



カイは笑いのドツボにハマってる。






「シュミ悪っっりぃ・・・

なんだコレ! 人間の食いモンじゃねーよ!!」



「アハハハっ・・それ、相当甘いよ~~。 

ハハハハ・・っっ


  コ、コーヒーくらい頼んだら?」





オウジは答える前に、カイのトーストに手を伸ばす。





「おっと・・!」





カイは腹を抱えながらも、素早くディフェンス。





「責任もって食べろよ~ 

アハハハっ・・オ、オウジが・・選んだんだから!」




「何言ってんだバーーカ! 

オレは2日間メシ喰ってねーんだよ! 


今こんなの喰ったら 絶っっ対に吐くだろっ!!」




「アハハハハッ!」




「取りぃ!!」





逆ギレのクセに、オレ様なオウジは


イカレ野郎が 笑いでフヌケているそのスキに



トーストとハッシュドポテトを奪い取って、喰ってしまい




その勢いのスサマじさが


カイを更に 笑いの谷に突き落とし、




結局は カイが、また同じモノを注文した。







ようやく食事を終え


2人は、ローズが注ぎ足した2杯目の



薄いアメリカンコーヒーを飲んでいる。





ひともんちゃく終わった後の


冬のマンハッタンの昼下がり、



キチンと片付けられたテーブルの上で


圧倒的な存在感で居座っている


ブルーハワイのケーキと



オウジは、まだニラみ合っていた。






「  ・・・ったく・・。


 

この街はどーかしてる。 


イカレてやがるぜ、ナニもかも」





大きな窓の、軒下に張り出している


ストライプのひさしから、



まとまった雪が、ドササッと


大きな音をたてて落ちた。





「キミも 相当イカレてるよ?」





カイの瞳が、嬉しそう。





「ドコがだよ?!」





窓の外に視線を流し、


溶けてゆく雪の上を、ふみしめながら歩いてゆく人々を



カイが見る。





「みんな 自分に正直なだけだよ。」





そしてその微笑みが、まっすぐオウジに向いた。





「彼女はアクトレスで、

ボクはバイセクシャルで。 


・・・さて、 キミは何モノかな?」




「えっ・・ だから オレは・・」






オウジだって言ったろ、


と言おうとして、言葉が止まった。






――   オレは・・


          

     いったい何モノだ・・? 






--------------------To be continued!




このお話の設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

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