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14、エプロンをつけたアクトレス・2




カイの部屋からほど近い8丁目は、


セント・マークス・プレイスと呼ばれる



イーストヴィレッジの中で、最も賑わう通りである。





古着屋や Tシャツ専門店、



クツ屋に 雑貨屋。





色とりどりの看板や


ステッカーのベタベタ貼られた店が立ち並び、



店員も客も みんな個性的。





髪もファッションも ピアスのつけ方も、


それぞれが自分らしさを


アピリまくってる。





そういえば、カイのピアスも、 左耳にひとつだけ。





耳たぶよりずっと上、


耳の真ん中あたりに 光ってるダイヤは、



やわらかな顔立ちのカイに 


絶妙な割合で シャープさをプラスしてる。




つまりは、よく似合っていた。






この街は 誰もかれもがアーティスティックだ。




今日は日曜日とあって、


ずいぶんと 観光客のにぎわいもある。





初めて歩くニューヨークのダウンタウンは、


長い間くすぶっていたオウジのハートに



充分過ぎるほど 刺激的だ。





街の発するエネルギーが


音符みたいに、弾んでる。






――そうだ・・!  


 初めてダウンタウンに 降り立ったあの夜も 


  そうカンジた!






真夜中をさまよっていた時よりも


街のエネルギーが、さらに高い。





たいていのヒトが 子どこ時代に置いてきた



無限のわくわくと 創造力が、


ココには満ちてる。



空気が、 子どもの声で笑ってる。





―― やっべ  


  オレまだ トんでるかも・・・!







数か月間、日本のマンションの一室に閉じこもって、


イミのない空しい遊びに


生きる時間を 費やしてた自分が、



今、世界中で最もホットな NYの街を、歩いてる。




 

夢から覚めたら 映画の世界に入り込んでいたような、


このフシギは なんだろう。




隣には、


浮世離れした美形の イカレ野郎。






――なんで、ヤロウと2人で

リンゴなんかかじって、歩いてんだよ

    

    オレ?







なんか可笑しい。  


笑い出しそう。




あれっ




ウキウキしてる? オレ。







2人は、ロックTシャツが


ズラリと掲げられている 店の前を通る。






「オウジ君のスキそうな店だね」



「キョーミねーし・・・!」





とっさに 営業ブッチョウ面。




と、足を 溶けかけた雪にとられて 


オウジの重たいミリタリーブーツが


ずるりと滑りそうになった。





「あっぶね~!」



「ハハッ よそ見してるからだよ」





カイは、わざと歩調を速めた。





「あっ! 待て、んのヤローっ」





滑らないように気を付けながら、それを負う。





「うわっっ・・と」





今度はカイが足をとられて。





「ぶははッ ダッセーーの!」






オウジが追い抜く。




道行く人が皆、慎重に歩く雪の中を


2人はダッシュで走った。




ビニールのひさしから 溶けだした雪が


塊りになって落ちてきて、



ちょうどカイのアタマを直撃。





「冷っめてーー!!」



「ガハハッ  ざまみろ!」





あちこちに残っている雪のカタマリが、


太陽を反射してマブしく光る。




自然にオウジの目が細くなった頃、




ようやくカイがドアを開け、


一軒のカフェレストランに入った。






丸椅子の並んでいる カウンターの向こうに


数人の従業員がいる。




バタバタと駆け込んできた、2人の若者ばかもの


彼らは、気さくな笑顔で出迎える。




なんだよ、ココもコイツの行きつけか?





何席かあるボックス席は、



2~3人掛けのカラシ色の


ビニールシートが向き合っている。





「今日はこっちにしよう。」





ボックス席を選んでカイが座り、


オウジも 彼のさし向かいの席に着いた。





テーブルの上に、


ガラスでできた筒状の シュガーポットと、



大きさだけが取り柄みたいな ケチャップにマスタード、


ガサツに入れた紙ナプキンが、ドーンと置かれてる。




この、やたらとクソ甘で


アーティスティックなオトコには不似合いの、



超庶民的な店だよな。





「ここのハッシュドポテトが、サイコ~に旨いんだ」





カイがそう言うと同時に、


ウエイトレスがメニューを持って やって来た。





「いつものトーストでいいのかしら、ハンサムさん?


  もう昼はとっくに過ぎてるけど。」





彼女は白のブラウスに シンプルなエプロンをつけ、



わざとらしく染めてある、真っ黒のソバージュヘアーに


ラズベリーレッドの口紅をつけた 白人だった。





「ハィ ローズ。 

チークの色を変えたんだね。


一段とステキだ! 愛してるよ。」





「さすがに抜け目がないわね。

アタシも愛してるわぁ、カイ」





――愛してるだぁ?!

ウソっ  デキてんの、コイツら?






にしては、ずいぶんババアだなと


じろじろ見てくるオウジに



その年増女が、メニューを手渡してきた。






「あら、こちらは初めて見る顔ね。  

ハィ、ボーイ。 ローズよ」




「アンタに東洋人の見分けがつくのかよ、オ・バ・サン。」





初対面の少年の 好戦的な第一声に


ローズの顔が、ピクリと歪んだ。







--------------------To be continued!



このお話の設定は1980年代NYです。なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

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