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13、エプロンをつけたアクトレス・1





遠い記憶の海原から 聴こえてくるメロディー。



金の糸をひく 蜂蜜みたいに、


風のなかで輝いてる。





母親がスキだった曲だ。




たぶんそれは、


父親がスキだったから。





まだ幼かったころ、


シアワセだという感覚しか


持ち合わせていなかったころ、




部屋によく流れてた曲。





――  懐かしー・・。

  


・・・オレこんなレコード 持ってたっけ・・?







ゆっくりと目を開けると、


天井に 木製の4枚羽のファンが回ってる。




オウジの寝ぼけまなこが ピントを合わせるのに


数秒かかった。






―― あれ・・? この天井・・ 



どのオンナの 部屋だっけ・・・






昨夜の事を、脳ミソの中から手繰りよせてみる。







――なんか、ヒコーキん乗ってたなあ・・。 


   随分長かった・・



    で・・・?   


       ドコに着いたんだっけ・・?







オウジの目が大きく開いて、


跳ね起きた。






「 ニューヨークだっっ!!! 」






オウジは大きなベッドの上で、


ドキドキしながら



自分のおかれた状況を 見回してみる。





ナチュラル素材と 


オフホワイト系の家具で 統一されている部屋に、



小さく モーツァルトが流れていた。






「ハィ  やっと目を覚ましたね。 

 スリーピングビューティー」






胸やけを誘う、このセリフ。



そーだった。





声がしたキッチン方向に目をやると、


例の 超が付く美形ヤロウが



カウンターでコーヒーを飲みながら、



ヴィレッジのタウン誌に


目を通しているとこだった。






「だーーーれが ねむり姫だ、

このクソ甘野郎!」




「だってキミ、まる2日眠ってたよ? 


起きるかどうか、

試しにキスしてみようかと 思ったくらいだ」




「キ・・  

し、してねーだろうなっっ!!」




「あははっ ジョーダンだってば、

すぐホンキになるんだから。」




「ア、アンタならやりねないだろーーがッ!」




「あれっ、心外だなあ~ 


ボクは寝てる相手を 襲ったりしないよ?

 

オトコにもオンナにも 

不自由なんかしてないもん~。」





投げてくる、小さなウインク。




アメリカ映画のワンシーンのような


こんな仕草も


 

カイがするとさり気なく、イヤミに映らない。




このファンタジック野郎の 


フシギな魅力だった。





このイカレた男の 


ドコまでが本気なのか、冗談なのか、



オレは、イマイチつかめない。






「まる2日・・・。  

オレ、そんなに寝てたのか?」



「さぞやお疲れだったのですね、プリンセス?」



「姫じゃねーーよ」



「じゃあスリーピングプリンスかな~~」



「プリンスでもねーっつの! 

オレはオウジつんだ、バーカ!」



「だから、王子だろ?」





久しぶりの日本語で話す、


同世代の男の子との こんなイミ不明なやりとりが、



カイは楽しくて仕方ナイ。





「はい!」





オウジに向かって、リンゴがひとつ 飛んできた。





「お腹すいてるだろ。 

今それしかないんだよ、スノーホワイト。」



「だからあーー!!」



「いい香りだろ?」



「あ?」





少し小ぶりの真っ赤なそのリンゴは、


日本では見かけない品種だった。





マンハッタンの八百屋やスーパーマーケットには、


様々な種類のリンゴが 売られてる。




味も、香りも実に豊富な、


ニューヨークっ子のポピュラーな携帯食だ。




カイはクローゼットからコートを出すと


袖に手を通し、



オウジにも、彼のライダースジャケットを


投げてよこした。





「では 出かけましょうか、オウジ様?」



「はあぁ~?」





カイは玄関の方向に歩いて、


さっさとブーツを履き始めた。




このイカレ野郎との 妙なやりとりに振り回されて


アタマはだいぶ目覚めたが、



体はまだ半分 夢の中にいるみたい。



なんかフワフワと 


足が地につかないカンジだ。





オウジはしぶしぶ


黒いライダースを 身に着けた。







外に出ると、午後の日差しが晴れわたっていた。




冷ややかな 水色の空が 


ダウンタウンの頭上から こちらを見下ろしている。




街は雪で覆われていたが、もうずいぶん溶けだして


歩道の上の雪は、シャーベット状になっていた。




足場の悪い道を 身軽く力強く、


カイは歩いていく。





細く見えるその体には 芯のしっかりした、


しなやかな筋肉が、ついているのだと



オウジは気づいた。





明るくなったダウンタウンは、


オウジにとって



初めて歩く場所だともいえる。





――  うをぉぉっ ニューヨーク・・!





叫びそうになる気持ちを グッとこらえ


オウジはドキドキを 


隣のカイに気づかれないように、



そっと街を見渡した。






古いレンガ作りの建物の外壁に付いた、


黒く塗られた 非常階段が



街全体のアクセントんなって、 




いかにもニューヨーク!





そこにいる誰もが主人公になって


愛を語ったり、


ギター弾いて 歌い出したりしちゃいそうな、




そんな街。







--------------------To be continued!



このお話の設定は1980年代NYです。なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

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