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103、白銀の夜明け・2



「オウジは 無事だよ?」





思いもよらない相手からの その言葉に、


カイはいったい、何が起こったのかわからない。



動かないマネキンのように、ただキヨシを見つめてた。





「どどど、ど、どういう事よ? キヨポンっ!!」





代りにショウゴが、身を乗り出す。





「オウジはウチのボスが保護したよ。

あ、えーとぉ・・


オウジはもともと、


うちのボスが 日本の知り合いから頼まれて

預かる事になってた、タレントなんだよね。

 


3日前に、ボスがミッドタウンで

偶然 彼を見つけてさ、


さっきまでオレが見張っ・・ 

 

い、一緒にいたんだよ」




「なんっっで連れてこなかったのよおっ!! 

このボケナスがあああぁっ!!」




「お、オチツイテ ショウちゃん!」




またしても掴みかかろうとするショウゴを、


キースとリカが、ガッチリと抑えた。





「・・・元気なんだね、オウジ君   



   よかった・・  。」





心の底からの安堵した、


カイ本来のやわらかな笑み。



ショウゴもぷしゅ~っと気が抜けて


その場にへろへろと座り込んだ。





「よかった! よかったわ・・・!」




「で、オウジは今 ドコにいるデスカ?」




「バワリーアヴェニューの

“Mist and shadow” ・・だと思う。


さっき飛び出してったから」





「なんでそんなヤバイ店に?!」




「さあ? 黒い天使がどうのって言ってたけど・・?」




「 黒の天使・・? 」





カイがぽつりと呟いた。





「またそこから、逃げちゃうんじゃないかしら・・?」





「イヤ・・ そんなことは・・  ないと思うよ?


迷惑かけないって言ってたし・・? 



たぶん・・・?」





「どっちなのよ!もおおおう、じれったいわねっっ!」




「カイ、行きましょう!」





ジェシーが頬を上気させる。



カイは しずかに、首を振った。




「無事だってわかれば、 それでいいよ。」



「カイ・・!」





それ以上 カイは何も言わなかった。




ただ、いつものように ムダひとつない美しい所作で、


泣きじゃくるショウゴの 背中をさすっていた。





―― 逢いたくないのかな・・?





思わずカイの様子を伺ってしまうキヨシの目と


カイの目が、ふと合う。





「 ありがと、キヨポン。 教えてくれて。 」





その邪気のない微笑みに

 

キヨシの頬が、かあっと赤くなる。



なんか、自分だけが ものすごーく


セコくてエゴいパパラッチの、


情けなーい人物に思えてきた。




立派なジャーナリストになろうとか


思ってたわけじゃナイけどさ、



オレだってそれなりに


エンターテイメントに夢持って、NYここまで来たんだぜ。






ひとつ咳払いをして、


キヨシはもう一度 カイに向き直る。





「あのさ、カイ。 頼みがあるんだ」




「ん?」




「カイのを、撮らせてもらえないかな?」




「・・・?  どういうこと?」




「ホラ、あれ。」





キヨシが、店に貼ってある


嘉川歌舞伎の 公演のポスターを指した。





「今度、ウチの局が


嘉川のNY公演の スポンサーに付いたんだよ。

 ・・・それでその・・」




キヨシはちょっと口ごもったが。


  

自分もこの店の 常連客の1人、


この乾いた街で支え合う、仲間の1人でありたかった。





「あの、歌舞伎界の貴公子と言われた

11代目 嘉川寿三郎も


NYでちゃんと活躍してるんだって事、


日本のファンに伝えたいんだよ。」




「そうデス ボクも大賛成デスよ~! 

カイの宣伝にもなるデスよーー」





急に湧き上がってきた話の展開に 


ついていけないカイの表情かお




キヨシは、カバンからビデオカメラを 取り出した。





「実はさ、もう

撮っちゃってるんだ へへっ・・」





そう言うと、


キヨシはビデオを再生モードにして


ディスプレイ画面を カイの方に向けた。





「どうかな? 

けっこう いいカンジだと思うんだけど・・。」




キヨシの即席ビデオ上映会に 


店の客達が どよどよと集まり、


みんなでその画面を覗き込む。




そこには、ダウンタウンの日常が映っていた。





ブラウンストーンの街並みに、


道行く様々な人種。




地下鉄の入り口に描かれたペインティング 



散歩する犬たち。





「意外とよく撮れてるじゃない、キヨシ」



「へへっ だろ? リカ。」





そして、次に映ったのは



そのストリートにかがみこんで、チョークを走らせている


ひとりの美しい青年。




白昼夢に 属しているような表情と、



長い指先から広がってゆく 


パステルカラーの魔法。




彼の傍らにはいつも、


ブルースハープを吹く 銀髪の少年がいた。





「オオ~~ゥ・・」







観ているみんなの口からため息が、洩れる。




少年の奏でる


メランコリックなメロディーと


その2人の登場人物は、




映画から抜け出てきたかのように、


あまりにも美しく、この街を彩っていた。





「オ・・オウちゃんっ・・!」




またまた泣き出すショウゴに




「まだ死んだって

決まったわけじゃないんだからぁ~」




とローズが茶化す。




「生きてるに決まってンでしょっ! このどブスっ!!

アンタこそ死んでおしまいっっ」




泣いたり笑ったり、感動したり 喧嘩したり、


いつもこの街は忙しい。




カイはスッ・・と立ち上がった。





「え・・? カ、カイ・・?」






怒らせたのかとビビるキヨシに、


カイは凛と微笑むと、



壁に掛かっていたコートを掴み、


何も言わぬままにドアを開け、街の中へと歩き出した。





「ど・・どしたんデスカね?」




「大丈夫かしら・・。」




「カイちゃん・・・。  何か見つけたのね・・。」





どよめく店の中で、


ショウゴはハンカチで涙をぬぐいながら 


うんうんと頷いた。





13丁目の空に、


新しい太陽を迎えるための



銀色のグラデーションが、始まっていた。





---------------------------------To be continued!



このお話はフィクションであり、設定は1980年代NYです。

なお、本作は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として、以前アメブロに掲載されていたものです。

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