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10、路上の天使・2





トランペットの音が 黄金に輝いて、


空いっぱいに、鳴り響く。




全身に降り注ぐ 音の雨。






上質のエコーが、


綿菓子のようにふわふわと


幾重にも重なる その音は




やわらかく 甘く 


だが、重厚だ。




この世のものとは思えない 美しいサウンド。






―― すっ げ 


      ぇ・・・。







胸が震えた。





天国の音が 聴こえるとしたら、


きっとこんな音に、違いないんだ。






ずっとずっと求めながら、


決して見つからなかったその答えに



思いがけず出くわしたような、



ヨロコビと 充実感。






―― ココは 天国か・・?  



      マジかよ 



 オレ、 やっぱ 死んだのかな・・?






「 それもいっか・・ 」






一面スカイブルーの音の空に、オウジは呟いた。





 

―― オレが死んだって、どーってことない・・。  


 誰も悲しまねーし 困らねーし。



 ・・世界は 何んも、変わんねぇよ。







『 オウジ、オマエの声は

  オレの夢なんだ

 

オレがテッペン取らせてやる!! 』




――なンだよ 貴章・・

アンタ今、豚バコん中だろ・・?






マブタの中に浮かんできた貴章は、


出会ったころの目の輝きを失い、



土気色の顔に やせこけた


惨めな男だった。






『 ゴミはゴミ同士、


慰めあってるのかしらねぇ? 』





パープルルージュの唇が、ふてぶてしく嗤ってる。




――よかったな美津子 

ゴミが一匹減ってよ・・・。







そうさ、オレは唯のゴミだ。



人一人殺しても  


平気な顔で歌ってられたんだ。





何でもしたさ 



このくだらねえ地獄から 這い上がるためなら。





でも   




もう、イイや・・・。





声もでねーし 


曲もできねーし 




ホントに、オレは 



唯の


何も持たない   






  桜児オウジだ・・・。








天使のまなざしは 


何も彼もを知っている という風に、


オウジを受け入れている。



テレパシーでも通じんのかな。





空が 



このうえなく、蒼い。






―― なぁんでこんなに キレーな最期なんだろ  


   オレ、 


  クズなのに・・・。




 神サマなんてのが 




ホントに いんのかなぁ・・・ 







「なあ・・・アンタ  


 オレを、連れてってくれんのか?」






目の前の天使に、そっと聞いてみる。



天使はやんわりと微笑んで、


白く長い指を そっと差し出してきた。





「いいよ。」






その手を取って、目を閉じる。



あったかい。





天国の旋律に、身をゆだね 


音の中に 溶けてゆく。






――  ああ     

      

   すげ ぇ





  気持 ち 


      イイ・・・ 。







意識がフェイドアウトし、


体はスカイブルーと ひとつ。






―― NYで行き倒れ って・・・

 

  コレめっ ちゃ

   

    カッコい ンじゃね・・?

     



 ザマーミや がれ   

   美 津子・・・



      ホントに オレ



     伝説ンなって  


  やる  

      から



     な・・ ・




     

完全にオウジのイシキが 消えようとした、


その時。





「こらこら ダメだよ、寝ちゃ。」





ハッキリとした


生身のオトコの声に、引き戻された。





――え・・?





ぼんやりと開けた目の前に、


なんかちょっとだけ雄雄しげな天使の、ニコニコ顔。





「ハィ  また逢ったね、黒曜石クン!」






オウジの周りから ブルースカイが完全に消え去って、



ニコニコ天使の背景に、



まだ明けない空から 


白いものが舞い落ちていた。





――   天使の 羽  か な・・・?






おぼつかない頭。



コレは夢の続きなのか。





目の前に立っている天使は、


さっきよりガタイがよくて、グレーのコートを着てる。



あれ?  



え?




 ・・・ オトコ・・?






と、自分の手を、


その天使オトコが、握ってる。





「う、うわぁああっっ!」





慌てて、飛び起きる。





「な、なに手~繋いでんだよっ!!」




「え? ウチに来るんでしょ?

こんな所で寝たらカゼひいちゃうよ? 


あ、その前に凍死するか!」





アハハッと笑う、聞き覚えのあるその声に


オウジの緩んだ脳ミソが シュッと固まった。






「あ! アンタさっきの・・!」






忘れもしない、今夜のカモを奪った美形ヤロウ。



その、ヤロウの背景に白く舞っているのは、


降り始めた雪だった。




そーだろ、


天使の羽なんて 降ってくるわけねーし。






思いっきり覚めた目で 周りを見回すと、


どこか知らない道ばたに、座り込んでる。





その足元の路上には、



誰かがチョークで描いた、落書きと言うには


クオリティの高すぎる空が 


広がっていた。





コンクリートの中に四角く切り取られた、


そのスカイブルーの空間に、



虹色の雲が浮かび、



あの東洋顔の天使が、微笑えんでいる。





「げえっ!」





思わず声が出た。





――んっだよ・・!

オレが行ってたのは 天国じゃなくて、



えっ?  この絵の中・・?


   あの天使の ねーちゃんは・・ 



・・落書きの中の コイツかよっっ?!!






美しかった最期の時が、


こんなこっ恥ずかしい現実だとは。





絵の上に散らばっている、


沢山のKOOLの吸い殻。




随分長い時間 ココにいたらしい。 



気づけば、体も冷え冷え。





「チクショウっ・・  

また 邪魔しやがってッ」




「ん?」




「今、このネーちゃんとヨロシクやってたんだよ!


 クソッ 

もーちょっとだったのに・・」





「今度は 天使を口説いてたの?」





カイは目を、まんまるに見開いて。





「アハッ アハハハハ!」



「なんだよっ」



「キミ、ほんっとオモシロいな~~!」





夜明け前の路上で、


腹を抱えて 笑ってやがる。





天使だと思って握った手が、


目の前でバカ笑いしてる野郎のだったとか、


ありえねー。




黒歴史隠滅のために


ああ、 


今すぐコイツをブチ殺したい。






「この一本先のストリートを

左に曲がって2ブロックまっすぐ行くと、


角にブックストアがあるんだ。 



そこの3階がボクんち。 



死ぬ前に、どう? 熱いコーヒーでも。」





そう言うとカイは、その方向に向かって歩き出し、


そしてすぐに振り向いた。






「あ、そうそう。 

キミのバーボン代、ジェシーが払ってたよ。


ちゃんと返さなきゃ。 


キミ、死んでる場合じゃないからね!」






軽やかに、アメリカ映画なウインクを残して



カイはまた歩き出した。







--------------------To be continued!



このお話の設定は1980年代NYです。

また本編は作者本人により「イースト・セブンス・ストリート ~NYの夢追い人~」として以前アメブロで掲載されていたものです。

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