4月5日 入学式
「ふぁ~~あ」
まったく。いつまで続くんだ。入学式とやらは。在校生がいる意味はあるのか?
俺は比較的どうでもいい校長の話を聞き流しながら心の中で愚痴っていた。
『次は、生徒会より。新入生歓迎の言葉です。生徒会長、3年B組、麻槝 舞魅さん。お願いします』
おぉ。ようやく校長の話は終わったようだ。
じゃあ、あと一眠りする頃には終わっているかな。
と夢の世界への船を漕ぎ出そうとしたとき、辺りが騒がしくなった。
「なんだ?うっさいな」
俺が思わず口に出すと、後ろにいた麗が答えた。
「会長の話だ。いつもの事だろう」
「あぁ~」
それを聞いて納得する。
麻槝 舞魅。義妹にも劣らぬ頭脳と、麗と同等の運動神経を持つスーパー生徒会長だ。
更に容姿もまさに“美”を具現化したような存在と言われている。噂によるとB90代、W50代、H60代らしい。
その極めつけが性格だ。
誰に対しても優しく、慈愛の女神と言っても過言ないレベルらしい。
頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗、性格も良し、と揃えば男子が騒がない訳がないと言う事だ。
「皆さん。静かに」
会長がそう言うと、講堂は一瞬にして鎮まった。
「改めまして、新入生の皆さん。ご入学、おめでとう。私達………」
さてと、鶴の一声で静かになった事だし、今度こそドリームワールドに旅立たせて貰うとするか。
羊が一匹、羊が二匹、羊が三匹、羊が…………。
『おい、なんだあの娘』
『いいのが入ってな~』
『天使のようだ』
………………今度はなんだ!
ようやく彼方の世界に足を踏み入れたと思ったらまた騒ぎおって。新手のいじめか?
「麗、今度はなんだ?」
「なんだって、君の妹様だよ」
「は?鈴?」
慌てて壇上の見上げると、何か話している義妹がいた。
「なんであいつがあそこに………」
「新入生代表からの挨拶だってさ」
「あぁ、そーいやそんな事を言ってたけか」
数日前に「新入生代表の言葉ってどんな事言えばいいの~?」とか言って俺の部屋に突撃してきたっけな。
ドアが開いてコンマ三秒後に自分で考えろって蹴り出したがな。
「しかし、出てきただけでこの盛り上がり様。やはり明日からの俺の学校生活には、平穏が訪れる事はないんだろうな」
「ゴシュウショウサマ」
俺の嘆きに麗が抑揚のない声で、労いの言葉をかけてきやがった。
「まぁ、未来の事を気にしてもしょうがないな。俺に再び夢の世界へ旅立つから、終わり次第呼び戻してくれ」
「りーかい」
そうして俺は今度こそ夢の世界へ旅立っていった。