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断片の使徒 extra  作者: 草野 瀬津璃
web拍手掲載済ss
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 2-5 (おわり)



 双子が家に来ても、特に問題はなかった。

 せいぜい、文官に内定が決まっているラミルが、課題図書リストをこなすのに必死になっているくらいだ。

 学園は修太と三人そろって病欠して、元に戻るまでやりすごすことになった。

 ササラが騒がしいのだけは、グレイにとっては大問題であるが。

 最初は警戒していた修太だが、ササラが素晴らしい料理の腕を披露したせいで、あっさりと受け入れた。


(あいつが元に戻ったら、食べ物につられないように言っておくか)


 修太は食べ物につられたりしないと言うが、あやしいところだ。

 それでも、いくらか着せ替えさせられると嫌になったようで、グレイのところに逃げてきた。


「お父さん」


 グレイの後ろに隠れたくなる気持ちは、よく分かる。グレイだって、そんな犬耳がついたフードなんかを着せられたくない。


「グレイさんとおそろいですよ、シュウタさん。ほら、ポンチョのすそに、グレイさんと同じ黒い尻尾付き」

「むう」


 ササラが指で示すと、修太はポンチョを脱ぐ手を止めた。


「……おそろい?」

「それでなんで俺を見るんだ。好きなものを着ればいい」


 そんなことを言っていたら、そこにいるトリトラもおそろいだ。弟分馬鹿のトリトラは、満面の笑みを浮かべる。


「シューター、僕とも同じだよ。いや、なんで脱ぐのさ」


 修太はむっとして、ポンチョを脱いだ。トリトラへの塩対応は、子どもでも同じらしい。


「眠いー」


 足にしがみついてくる修太を、グレイは腕に抱える。眠いから運べという子どもらしいわがままかと思いきや、体調不良を眠いと表現しているようだ。


「おい、顔が赤いじゃねえか。水を飲め」

「うーん」


 夏日に着たり脱いだりしていたから、よく動いた分、のどが渇いたのだろう。台所に向かおうとするグレイを止めて、ササラが謝って駆けていく。


「ごめんなさい、シュウタさん。お水を持ってきます」


 ついでにおやつの時間にすると、居間の長椅子で本を読んでいたイミルとラミルが寄ってきた。彼らもササラの手料理に味をしめたらしい。

 まるで託児所だ。

 子どものお泊り会をすること三日。

 やはり、朝、目が覚めると修太達は元に戻っており、修太だけはその間の記憶が飛んでいた。



     *****



「あのアイテム研究者は暴行容疑で逮捕。今回の件を外に漏らしたら、秘密保持契約違反で再逮捕するっておどしてるから、ひとまず安心じゃないか」


 冒険者ギルドで、リックから報告を聞いたものの、修太にはぴんとこない。


「暴行?」

「謎のアイテムを他人に使うのは、暴行だろ。道を歩いていて、突然、水をかけられたらどんな気分だ? それがただの水か分からないんだぞ」


 なるほど。いたずらと呼べる範囲を越えているわけか。


「なんで無効化したら、子どもになるんだろうな?」

「元々が変化の魔法だから、無効化した時に、魔法が変化して、よく分からんことになるんじゃないかっていうのがヘレナさんの予想。一瞬すぎて、解析しようがない。……けど」


 リックは声をひそめる。


「若返りを求める人間はいるから、隠したほうがいいだろうって」

「一時的でも?」

「永遠になる可能性もあるだろ」


 修太はフッと鼻で笑ったが、そう考える人間がいるというのが問題だと、頭では分かっている。


「とりあえず、ギルドからしたら悪夢だから、本当に怖い」

「なんで?」

「賊狩りのお兄さんが、小さい子をあやしてるんだぞ。死神の足元に、無邪気な子犬がうろついていろよ。はらはらするじゃないか」


「いやでも、グレイはあれで結構、面倒見が良いから、変じゃないと思うけど」


 気持ちは多少分かるが、修太にはなんらおかしいとは思えない。


「シューターが結婚して子どもができたら、あんな感じなのかな。ぜひとも連れてきてくれよ」

「おいおい、彼女もいないのに、気が早すぎる」


 お前は親戚のおじさんかと、修太は手を振って、受付を離れた。




 修太が大して気に留めていないのは、子どもでいる間のことを覚えていないのに、なんだか楽しい夢を見ていたような名残のようなものを感じているせいだ。

 ただし、帰宅して、含み笑いをしたニミエに、それを見せられるまでだった。


「坊ちゃん、まあまあ、こんな可愛いものを着せられていたのですね」

「は?」


 なんのことかと、ニミエが広げた洗濯物を見て、修太は凍りついた。すでに乾いており、日なたの良いにおいがするそれは、犬耳と尻尾がついたポンチョである。

 すかさず居間で茶を飲んでいたトリトラがのほほんと口を出す。


「あの姉さんが買ってきたんだよ。それを着たシューター、可愛かったよ。僕らの仲間みたいでさ」

「あ……」

「え?」


 修太は頭を抱えて叫ぶ。


「悪夢だ!!!!」


 もう絶対に、あの謎のアイテムには近づかないぞと深く決意し、修太は子ども服を視界から追い出した。



 間があいてしまったので、ほとんど無理矢理終わらせました。

 ただのお遊びで書いていたんですが、アフター本編に隙を見てねじこもうかなと考えが変わったので、いずれそちらに移動させると思います。


 extra目次は、いったん完結にしておきます。また更新する時は、連載に戻しますね。

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