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・グレイ視点
修太が起きてから、ヘレナが診察をして、いろいろと質問した。
グレイが横で聞いていると、どうも一週間前の若返りの間の記憶が、今回も引き継がれているようだ。
「元に戻った時は忘れていたのに、どうなってんだ?」
「私が知るわけがないでしょ。こんなこと、初めてだもの。〈黒〉だとみんなこうなるのかしら? そうだわ、イミルちゃん、実験してみない?」
ヘレナが、冒険者ギルドの薬草園でバイトをしているイミルを呼ぶ。内容を聞いたイミルは、ぶんぶんと首を振った。
「え、嫌です。怖いです」
「そうよねえ、何が起きるか分からないもんね。この人が報酬をたんまり払っても駄目?」
「……いくらですか?」
イミルはしばし迷って、そう訊いた。
「おい、さりげなく俺に払わせようとするな」
「シューター君に何が起きてるか、知りたくないの~?」
「危険手当込みで、二万エナでどうだ」
「まあ、素直」
ヘレナが呆れまじりにつぶやく。
イミルは動揺した。
「二万!? すごい……。いや、でも、何が起きるか分からないのに」
悩むイミルに、グレイは続ける。
「三万?」
「ええっ」
「これでも足りんか。そうだな、命の危険がある。五万でどうだ」
「やります!」
イミルは普段の大人しさをかなぐり捨てて、前のめりに叫んだ。
グレイはこくりと頷く。
「それじゃあ、窓口で契約書を作ってもらうから、お前も来い」
「はい! わぁ、五万エナもあったら、古民家なら買えるわ。そうしたら、私達の帰る場所に……。えへへへ。ちょっと怖いけど、おうち。ふふふ」
イミルはぶつぶつとつぶやいて、フードの下からのぞく口をゆるめる。
「言い出したのは私だけど、そんな大金をポンと払うなんて、この男の親馬鹿ぶりをなめてたわ。勢いよく大物を釣り上げた感じがあるわねえ」
ヘレナがかわいた笑いをこぼす。
グレイはさっそく受付に依頼書を注文しに行こうと、医務室の入り口に足を向ける。その左手を、修太がつかんだ。
「お父さん、どこ行くの。俺も一緒に行っていい?」
予期せぬ引き留めに、グレイはぴたっと足を止める。
「はわわわ、シューター君ってば、かわいい!」
さっきまで報酬に目がくらんでいたイミルが、黄色い声を上げた。医務室にいる面々も、気のせいか顔がゆるんでいる。
「構わんが、つまらんと思うぞ」
「お父さんと一緒がいい!」
「……しかたない奴だな」
この胸に湧き上がる、なんとも言えないもやもやは、こそばゆい感じはなんだろう。
手をつなぎたがる幼子の対応に困りつつ、グレイは踏まないように左側に神経を集中させた。
ちょっとだけ更新。
五万エナは、日本円だとだいたい五十万円くらいですが、セーセレティーの物価で考えると、小さい中古物件なら買えます。




