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断片の使徒 extra  作者: 草野 瀬津璃
web拍手掲載済ss
31/35

 2-2


 ・グレイ視点


 修太が起きてから、ヘレナが診察をして、いろいろと質問した。

 グレイが横で聞いていると、どうも一週間前の若返りの間の記憶が、今回も引き継がれているようだ。


「元に戻った時は忘れていたのに、どうなってんだ?」

「私が知るわけがないでしょ。こんなこと、初めてだもの。〈黒〉だとみんなこうなるのかしら? そうだわ、イミルちゃん、実験してみない?」


 ヘレナが、冒険者ギルドの薬草園でバイトをしているイミルを呼ぶ。内容を聞いたイミルは、ぶんぶんと首を振った。


「え、嫌です。怖いです」

「そうよねえ、何が起きるか分からないもんね。この人が報酬をたんまり払っても駄目?」

「……いくらですか?」


 イミルはしばし迷って、そう訊いた。


「おい、さりげなく俺に払わせようとするな」

「シューター君に何が起きてるか、知りたくないの~?」

「危険手当込みで、二万エナでどうだ」

「まあ、素直」


 ヘレナが呆れまじりにつぶやく。

 イミルは動揺した。


「二万!? すごい……。いや、でも、何が起きるか分からないのに」


 悩むイミルに、グレイは続ける。


「三万?」

「ええっ」

「これでも足りんか。そうだな、命の危険がある。五万でどうだ」

「やります!」


 イミルは普段の大人しさをかなぐり捨てて、前のめりに叫んだ。

 グレイはこくりと頷く。


「それじゃあ、窓口で契約書を作ってもらうから、お前も来い」

「はい! わぁ、五万エナもあったら、古民家なら買えるわ。そうしたら、私達の帰る場所に……。えへへへ。ちょっと怖いけど、おうち。ふふふ」


 イミルはぶつぶつとつぶやいて、フードの下からのぞく口をゆるめる。


「言い出したのは私だけど、そんな大金をポンと払うなんて、この男の親馬鹿ぶりをなめてたわ。勢いよく大物を釣り上げた感じがあるわねえ」


 ヘレナがかわいた笑いをこぼす。

 グレイはさっそく受付に依頼書を注文しに行こうと、医務室の入り口に足を向ける。その左手を、修太がつかんだ。


「お父さん、どこ行くの。俺も一緒に行っていい?」


 予期せぬ引き留めに、グレイはぴたっと足を止める。


「はわわわ、シューター君ってば、かわいい!」


 さっきまで報酬に目がくらんでいたイミルが、黄色い声を上げた。医務室にいる面々も、気のせいか顔がゆるんでいる。


「構わんが、つまらんと思うぞ」

「お父さんと一緒がいい!」

「……しかたない奴だな」


 この胸に湧き上がる、なんとも言えないもやもやは、こそばゆい感じはなんだろう。

 手をつなぎたがる幼子(おさなご)の対応に困りつつ、グレイは踏まないように左側に神経を集中させた。



 ちょっとだけ更新。

 五万エナは、日本円だとだいたい五十万円くらいですが、セーセレティーの物価で考えると、小さい中古物件なら買えます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 甘える修太君が可愛いです。 グレイさんが萌えを覚えそう??? 続きが楽しみでなりません(*^^*) [一言] 五万エナで釣られちゃうww そして修太君のためにならポンと五万払えてしまうお義…
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