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断片の使徒 extra  作者: 草野 瀬津璃
web拍手掲載済ss
14/35

コウの視点シリーズ 昼編「平和な午後」



 ふあーあ。

 木漏れ日が気持ちいいなー。

 あ、よく来たなあ、お前ら。ちょっとそこに座れよー、気持ちいいからー。ん? 何だよ、暑いって? それじゃあ仕方ねえなあ。


 おいらは今、窓辺の陽だまりで昼寝してる。

 親分は部屋の隅にあるテーブルで、啓介とピアスと三人で果物を食べながらお喋りに興じている。

 この二人のすごいところは、無愛想がほとんどの親分を笑顔に出来るってところだ。

 いいなあ、羨ましい。おいらにもそんな風に笑って欲しいなあ。親分って、なんでいっつも、面倒くさそうにおいらを見るんだろ。失礼しちゃうよな。

 あ、でも今、どん引きって顔してる。

 どれどれ、何の話をしてるんだろう?


「啓介、お前、何が楽しくて幽霊好きなの? これだけはちっとも理解出来ねえんだけど、俺」

「ロマンに決まってるだろ! ピアスは幽霊って見た事ある?」

「え? あるわよ、もちろん。私、猫の霊と契約してるから」

 どうやら啓介がまた怪談話をしていたらしい。

 何がロマンなんだろう、訳わかんねえや。

 だって霊やら精霊やら、その辺に普通にうようよいるじゃねえか。ほら、今だって、窓の向こうから手を振ってる。

「ウォンッ!」

 おいらは窓の向こうに浮かんでいる女の子の霊に挨拶を返した。霊はにっこり笑い、去っていった。

 ときどき嫌な霊もいるからなあ。

 おいらはそういうのからも親分を守ってるんだぜ!

「うわっ、え、何で今、ほえた? 外に向かって」

 幽霊の話をしていたからだろう、親分があからさまに怖気づいた態度でおいらと窓を見比べた。

 そんな親分を面白がって、ピアスがにやりと笑う。

「幽霊でもいたんじゃない?」

「えっ、いいなあ、コウも幽霊が見えるのか? 動物ってそういうのが見えるって言うもんな。モンスターだけど、似たようなもんだよな?」

 啓介が失礼なことを言った。

 おいらと動物を一緒にするだなんて失礼な話だ。

 動物は毒素を食べるっていう、神様からの使命なんてもらってない。世界を綺麗にしてるんだから、おいら達モンスターの方がよっぽど偉いんだぞ。

「そうねえ、確かに。どう見ても壁しかない方に向かって犬が吠えてるのを見ると、その辺にいるんだなって思うわよ。うふふ、やだ、シューター君。顔が真っ青。怖かったら、枕元に塩を置いて寝るといいわよ」

「効くっていうよな! で、塩がくすんだりすると、いたってことになるとか……」

「啓介、ピアス、それ以上はやめろ!」

 修太がバシンとテーブルを叩くと、二人はそろって笑い始めた。

「ウォンオン!」

 待てこらあ、お前ら、親分をいじめるんじゃねーっ! 幾らなでなでが上手くて遊んでくれるからって、おいらは許さないぞっ!

 おいらが怒りをこめて吠えると、ピアスと啓介は顔を見合わせた。

「あら、コウに怒られちゃった」

「悪かったよ、コウ。お前の主人をからかって。――でも、幽霊はいると思うけど」

「最後の一言が余計だっ!」

 部屋に親分の怒声が響いた。

 おいらは落ち着きを取り戻し、また陽だまりに寝転がる。


 ああ、今日も平和だ。

 


 ……end.


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