表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇妃候補は麗しく  作者: 河野 る宇
◆第3章
6/8

*憂い

「ごめん……」

 うつむいて抱きしめていた腕をゆるめる。

「お前の望みは叶えられん」

「うん、解ってる」

 無言でうつむく青年を一瞥し、服を着る。着終わる頃には青年の気分も多少、戻ったのか顔を上げた。

「いつから不死なの?」

「25からだ」

「えと、25ってどれくらい前……ハッ!?」

 それを聞いたら今、彼が何歳が解ってしまう!? 歳を聞くのはなんか怖い!

 ベリルは、半笑いのまま固まった青年に目を据わらせる。青年は頭を振って気を取り直し、再び問いかけた。

「ど、どうして不死になったの?」

「色々あってね。まあ偶然というやつだ」

「ぐ、偶然? へえ……あ」

 少し大きめの服を整えてリビングに向かうベリルの後を追う。

「ベリル──っ! ……?」

 部屋に入り、何か言いかけた青年を手で制止する。険しい表情を浮かべて辺りを窺い、窓に目を向けた。

「逃げなかったのか」

「え?」

 体勢をやや低くして青年を自分の背後にし、無表情な声色ながらも強く発する。

「いるのは解っている」

 すると──

「!」

 中庭が見える窓が静かに開かれて、ゆっくり入ってきたのは先ほどレオンを襲った人物だ。

「お前は!」

「勘が良いな」

「衛兵! えい……っ」

 青年が兵士を呼ぶのをベリルが無言で止めろと示した。

「どうして……」

「また逃げられるのがおちだ」

 侍従の恰好をしているが、その鋭い眼差しは戦いをくぐり抜けてきた者の目だ。

「何故、彼を狙う」

「報酬がよくてね」

 固い黒髪にブラウンの瞳の男は薄笑いでベリルを見つめる。

「なるほど」

 予想通りの答えに同じく薄笑いを返した。

「お前からは憎しみは感じられなかった」

「ご名答。独裁国家には暗殺はつきものだろ」

「お、俺の国に反乱分子がいるっていうのか!?」

「まだお前の国じゃないだろ」

 男はスパッと言ってのけた。

「アサシン……ナイトウォーカーか?」

「残念、暗殺者でも盗賊でもないよ」

 口の端を吊り上げて応えると、ベリルに睨みを利かせる。

「さっき、そいつがベリルって言ったな。もしかしてお前『死なない死人』か」

「死なない死人……?」

「私にはいくつか名前があるようでね」

 後ろから怖々と問いかけた青年に応えながらも、男から目は離さない。

「実際にお目にかかれて光栄だ。どうりで一発、胸に当たったはずなのに平気な訳だ」

「どうするね」

 諦める様子の無い男に訪ねた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ