表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
皇妃候補は麗しく  作者: 河野 る宇
◆第1章
3/8

*急襲(きゅうしゅう)

「俺の正室になる人です! 絶対に渡しません」

「いくらなんでも正室を男にするのは止めなさい。私に渡せばいいのです」

 この国の皇族は一夫多妻制だ。血筋を絶やさないためのものだが、さすがに男性を正室として迎えた者はいない。

「!」

 2人のやりとりをはしばらく眺めていたベリルの耳に、カチリ……という微かな音が聞こえた。

 視線をゆっくりとそちらに向ける。

 視界の先には部屋の扉があり、静かに開かれていく──それに気付いたのはベリルだけだ。

「?」

 音もなく開かれる扉を、怪訝な表情で見つめる。

「!」

 そんな彼の目に入ってきたのは、消音器サイレンサーを取り付けた銃身だった。

「伏せろ!」

「えっ!?」

「何っ!?」

 ベリルは声を張り上げながら、扉の人影に駆け寄った。軽い破裂音が2~3度して、銃弾がレオンめがけて放たれる。

「きゃあぁ!」

「! なんだ?」

「レオン様の部屋からだ」

 レオナの叫び声で、外にいた侍女たちや衛兵たちがざわついた。

「ベリル!」

 拳銃ハンドガンを持った男と対峙しているベリルの名を呼び青年は見つめる。相手はレオンを狙うために必死だが、それは動きの予測も付けやすくなる──

「チッ」

 持っていた男の武器を蹴りで弾くと、舌打ちをして逃げていった。

「ふむ……」

 小さく溜息を吐いて、ハンドガンをゆっくり拾う。

「皇子! お怪我はっ!?」

 それから、ようやく衛兵が駆けつけた。その衛兵にハンドガンを手渡して、再び小さく溜息を漏らす。

「……ベリル」

「どこの国にも、ああいう手合いはいるものだな」

 駆け寄ったレオンにつぶやき、震えているレオナに近づく。

「心配ない。もう誰もおらんよ」

「怖かったわ」

「部屋に戻って少し眠った方が良い」

 抱きつこうとした彼女に優しく発した。

「そうね」

 足取り重く部屋から出て行く。

「私は帰らせてもらう」

「! ベリル」

 引き留めようとベリルの右腕を掴んだ刹那──

「!? ベリル!?」

 ガクンと折れるように彼が片膝を付いた。その顔は痛みに歪んでいる。

 まさか弾が当たったんじゃ!?

「早く医者を!」

「! だめだ」

 医者を呼びに行こうとしたレオンの腕を掴んで制止した。

「なんで……っ!?」

 そうしている間にも胸の辺りがみるみる血でにじみ、苦い表情のベリルと胸を交互に見やる。

「死んじゃうよ……」

「死にはしない。少し、休ませてくれないか」

 今にも泣き出しそうな青年に笑みを浮かべた。

「こ、こっち」

 震える声で彼を寝室に案内した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ