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皇妃候補は麗しく  作者: 河野 る宇
◆第1章
2/8

*争奪戦

「……」

 こいつ、無視する気か……満面の笑みを浮かべて手を握り続けるレオン皇子に、眉間のしわを深く刻んだ。

「大体、同性を正室だか側室だかに加えた皇族など今までいるのか」

「いるよ」

 しれっと応えられ、言葉が出ない。

「同性愛が認められているのは皇族だけなんだ。むしろ折角なんだからって同性を側室に入れる者もいたと聞いた」

 それにベリルは頭を抱えた。

 19歳のレオンは第一皇子で、現在の皇帝はムカネル皇帝50歳。皇族が支配する独裁国家だ。

その時──コココ! ガチャ!

「レオン、正室候補って誰?」

 ノックが無意味なんではと思われる速度で扉が開き、赤いドレスに身を包んだ女性が入ってきた。

「姉上……」

「! 男じゃない」

 レオンが手を握りしめている人物を凝視する。

 赤いドレスに見事なウェーブのかかった栗毛を背中まで流し、ブラウンの瞳は艶を帯びている。

 この国では男子がいた場合、基本的に第一子の男子、つまり長男が第一皇位継承者となる。

「ふ~ん」

 長女であるレオナ皇女は、ベリルの顔をじっと見つめた。

「あなた、名前は?」

「ベリルだ。もういいだろう」

 レオンが代わりに応えるが、どうやら彼は姉が苦手のようだ。弟の声などスルーして、彼女はベリルを見定めるようにまだ眺めている。

 金髪のショートヘアにエメラルドの瞳。そして、その整った顔立ちにフッ……と笑みを浮かべたレオナに、レオンはギクリとした。

「決めた! あなた、私の部屋に来なさい」

「は……?」

「!? だめですっ」

 青年はガバッと立ち上がり、彼女の行動を遮った。

「いいじゃない。気に入っちゃったんだもん。あんたには勿体ないわ」

「だめです! ベリルは俺が見つけてきたんだ。絶対に渡しません。姉上はそうやって、いつも俺のお気に入りを奪っていく!」

「……」

 ベリルは2人のやりとりを呆然と見上げていた。

「ほらっ見なさい」

「うっ……?」

 レオナはベリルの腕をグイと引っ張り、立ち上がらせる。

「私に似合うでしょ」

 人をアクセサリーのように言い放つ。

「! あら、あなた。レオンより低いのね」

 ベリルを見上げてつぶやいた。彼は174cmでレオンは178cmに、レオナは157cmだ。

「あなた、年齢はおいくつ?」

「……25だ」

「姉上! 彼の手を離してください」

「私は24歳だから丁度良いわね」

 レオナは無視して続けた。

 何が丁度良いのか解らないが、とりあえず掴まれている腕を離して欲しいとベリルは思っていた。

「さ、行きましょ」

「だっ、だめです!」

 ベリルの腕を引っ張って部屋から出ようとするのを止めようと、反対側のベリルの腕を掴む。

「レオン! 姉の言うことがきけないの!」

「これだけは嫌です!」

 2人はベリルを引っ張り合った。

「……」

 段々と腹が立ってきた。

「いい加減にせんか!」

 勢いよく2人の手を引きはがし、交互に睨み付けた。

「私はお前たちのオモチャではない」

「当り前だ。俺の正室になるんだから」

「あなたは私の側にいればいいのよ」

 ベリルはギロリとレオンを睨むと、ビシッ! と指を差した。

「私がいつ、それを認めた。勝手に決めてもらっては困る」

 そして次にレオナに指を差す。

「私はお前のアクセサリーではない。似合うとはなんだ」

「……」

 怒鳴られて2人は沈黙した。それにベリルは大きく溜息を吐き出す。

「あなたの声、いい声ね」

「何……?」

 彼女は見上げて嬉しそうに微笑んだ。

「やっぱりあなたには勿体ないわ。私に譲りなさい」

「姉上は横暴だ!」

「……」

 こいつら何を聞いてたのだ。

「いい加減にしてくれ」

 ベリルは右手で顔を覆い、深い溜息を吐き出した。

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