*皇子と青年
「……」
彼──ベリル・レジデント──は、自分の手を握りしめて潤んだ瞳で見つめる青年に眉をひそめた。
以前、ルシエッティ王国のノエル王女の護衛を頼まれた事から目の前の青年、レオン皇子とのつながりがある。ここは、ルシエッティ王国の隣国に位置するフォシエント皇国の皇族が住まう城──第一皇位継承者であるレオン皇子の自室だ。
元々はノエル王女を狙っていたレオン皇子だったが、ベリルに諭されそのまま彼に恋をしてしまったのだ。
何故、彼がわざわざレオン皇子の処にいるのかというと……
「いい加減にしろ。依頼も無いのにひっきりなしにオファーの電話をかけおって」
高級ソファに腰掛けて足を組み、握られていない左側で片肘をついてその上に頭を乗せる。黒髪と漆黒の瞳は、そんなベリルを捉えて離さない。
金のショートヘアとエメラルドの瞳は、整った中性的な容姿に相応しく見た者を魅了する。細身だが、引き締まった体は見た目の想像とは異なり筋肉質だ。
ソフトデニムのジーンズに黒のインナーと半袖のブラウンの前開きシャツを合わせた格好をしている。
傭兵であるベリルは、携帯にかかってくる依頼を受けて仕事をこなす。しかし、その携帯に四六時中レオン皇子から電話がかかってくる。
彼は、その抗議のためフォシエントに訪れたという訳だ。
*「お姫様のガーディアン」の続編でもありますので、そちらの方も是非読んでみてくださいです。
もちろん、この作品からでも十分にお読みいただけます。