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『向日葵』






君はまるで



明るく輝く太陽のようで



燦々と照る君は



あたしに



笑顔と



恋を



教えてくれた


















 あたし、工藤 向日葵。中学二年生。

 名前からも分かるとおり、あたしは夏生まれ。

 八月の中旬ごろに咲いていた大きな向日葵。

 それがあたしの名前の由来。


 そして、同い年で、

 あたしが想いを寄せる君。

 名前は、夏野 太陽。

 君こそ夏に生まれたみたいな名前。


「お〜い、ヒマワリ〜!」


 キミの声が聞こえてきた。

 麦わら帽子をぶったあたしが振り向くと、君が元気に走ってきていた。

 夏も中旬。あたしの誕生日も近くなってきていて、とても暑い日が続く。

 そんな中を走ってきた君は、汗を少し流していた。


「どうしたの、太陽くん?」


 首をかしげて、そう尋ねる。

 君は頭の後ろを掻きながら、笑顔で言った。


「いや、用は無いんだけどさ、ヒマワリの後姿見つけたから呼んだだけ」


 とても元気な君。

 一緒にいるあたしも元気になるようで。

 君は、いつもあたしを照らしてくれる。


「どこ行くの?」

「買い物だよ。今日の夕食の買出し」


 家では、あたしが家事全般をこなしている。

 実はあたしの家、父子家庭。お母さんは、あたしが小さい頃に亡くなっちゃってて。

 今はお父さんと二人きりの生活なの。


「俺も手伝おうか、買い物?」

「えっ、本当!? そうしてくれたら助かるなぁ」

「じゃ、早速行こうぜ」


 あたしと君が並んで歩いている。

 並んでみると、あたしより背が高くて。

 君の横顔が夏の太陽に照らされていて。


「ん? 俺の顔になんか付いてる?」

「あ、いや、なんでもない!」


 慌てて頭を振る。

 顔が赤くなるのが分かったから、あたしは少しうつむく。

 君はあたしを不思議そうに見下ろしていた。

 そのまましばらく歩いて、あたしたちは近所のスーパーに着いた。


「ヒマワリ」

「なに?」

「……こんなに買うのか?」


 買い物かごを持った君。

 あたしは君のかごの中に商品をポンポンと入れていく。

 気がついたときには、かごの中は一杯で。

 君の表情が疲労とかで、少し歪んでいた。


「あっ、ゴメン! 大丈夫!?」


 少しだけ商品を棚に戻してから、あたしはレジを済まして、君と一緒に帰途に着いた。

 外はもう夕暮れ時で。赤い太陽が西に落ちかけている。

 君はあたしを見つめながら、つぶやく。


「……大変だよな」

「え?」

「ヒマワリが、だよ。俺と同じ中学生なのに、こんな家事とかやって」


 あたしにとっては、それは苦痛ではない。

 だって、昔からずっとこうだから。

 でも君はそう言う。あたしは少し照れながら言った。


「お母さんがいないのは、あたしにとっては普通だし…。お父さんは仕事で忙しいから、しょうがないよ」

「それでもヒマワリはすごいよ。……俺に出来る事があったらなんでも言ってくれよな。出来る限りはやるからさ」


 うん、とうなずく。

 君は顔を少し赤くしている。

 でも、あたしはもっと赤いだろう。

 君は右手で買い物袋を提げている。あたしは君にとっての左側を歩いている。

 あたしは、君の手を見て、つぶやいた。


「………じゃ、手……繋いでくれる?」

「え?」


 君があたしを見つめてきた。

 恥ずかしさのあまり、あたしは顔から火が出そうで。

 うつむいて大きな声で言った。


「う、ウソだから!冗談だよ!気にしないで!」


 気まずくて、あたしは歩くスピードを速めた。

 でも、前には進めなかった。君が、あたしの手を掴んだから。


「た、太陽くん…?」

「ゆっくり……歩こうぜ」


 夕焼けがあたしたちを照らしている。

 まるで夢を見ているようで。握っている感覚が分からないほど、ドキドキしてて。

 でも、君の手から伝わるぬくもりだけは、とても温かくて。



 あたしたちは、手を繋いだまま、夕焼けの帰り道を歩いていった。











ねぇ、知ってる?

向日葵は夏に咲く花で、夏の太陽のほうを向いて育つんだよ。

あたしが向日葵で、君が太陽。まったくその通りで。


あたし、工藤 向日葵は

太陽くんが、大好きです。

いつかこの気持ちが、伝えられるように。

いつかこの気持ちが、君に届くように。























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