月の騎士(ムーン・ナイト) 【シナリオ形式】
■あらすじ>
ラスティスは三流の騎士。闘技会で全財産を失い、空腹を抱えて徒歩で
故郷へ帰る途中、森の中で肉を焼いている一団と出会う。
ラスティス:三流の貧乏騎士。
ゴンブロゾー:5人組のボス。名うての大悪党。
4人の男達:ゴンブロゾーの手下。
エレーナ:大貴族の姫様。
侍従:エレーナの侍従。
侍女:エレーナの侍女。
客A:居酒屋の客。
客B:同。
客C:同。
試合相手:騎馬槍試合でラスティスと対戦した重武装の騎士。
■物語>
[1]
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T「月の騎士(Moon Knight)」
(扉絵はラスティスを、高貴な騎士っぽくカッコ良くお願いします☆)
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パパラ パパー♪
闘技会の会場。テントが沢山見える。
ドドドドドド・・・・(遠くから響く馬蹄音)
[2]
□
ドカッ!
騎馬槍試合の真っ最中。稽古槍で突き飛ばされる、重武装のラス
ティス。
□
ズドドッ……
ラスティス、派手に落馬。試合相手、遠方で馬首を返している。
パパパーーッ♪
(場面転換)
□
ちゃりーん
手の中に残る、硬貨数枚。
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町中を歩いてる、平服のラスティス。マントはぼろぼろで、ほころび糸だらけ。
ラスティス「ふぅ…剣だけはなんとか請け出せたけど。」「負け続けで、とうとう楯も
鎧も馬も買い戻せなくなっちゃったな……」
□
ラスティス、硬貨をつまんで眺めながら溜息。
ラスティス「給与が足りなくて従者も解雇……マントまで拾った古着で……故郷の屋敷へ
は歩いて帰るしかない、ときたか。」
(場面転換)
□
ホーッ ホーッ
夜の森。月が出ている。
[3]
□
ラスティス、疲れきった表情で森の中をうろついてる。
□
ラスティス「は……腹減った。」
□
ガクッ
膝をつき、
□
バタッ
うつ伏せに倒れてしまう。
□
ラスティス(心の声)「このまま餓死するのかなあ……」「闘技会は負け
続け。騎士としての功名も無し。奥方も無し。ロクでもない人生だった……」
□
ラスティス(心の声)「貧乏騎士、ここに眠……」
パチパチパチ……
ハハハ……
遠くの方で音がしてる。
ラスティス「?」
[4]
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ガサ…
ラスティス、薮を掻き分け、のぞいてみる。
□
ワハハハ……
5人の、ガラの悪そうな男達が焚き火をしている。酒を酌み交わし、火には肉が炙ら
れている。
□
ゴクッ!
目を見開くラスティス。
□
焚き火の肉から香ばしい匂いが漂う。
□
ラスティス、目を瞑る。
□
ラスティス、決意の表情。
[5]
□
ラスティス「うわああああっ!」
ラスティス、必死の表情で剣を振りかざし、飛び出す。驚愕する5人の男達。
□
ドバッ!!
剣を抜こうとしたゴンブロゾーに、一瞬早くラスティスの剣が打ち込まれる。
ゴンブロゾー「うがあああっ!」
□
のこり4人の男達「ボスがやられた!」「うわあああ!」
パニックになり、逃げていく。
□
ハァッ ハァッ ハァッ
血剣を下げ、返り血を浴びて突っ立つラスティス。
□
ラスティスが焚き火の肉の串に手を伸ばそうとすると…
声「もし」
(ここから後、P.7の場面転換まで、この場が「暗い」ということを強調お願いし
ます)
[6]
□
向こうの暗がりに、縛られてるエレーナと侍女と侍従が、喜びの表情。
□
エレーナ「助けていただいてありがとうございます、騎士さま!」
□
ラスティス(串を手に肉を齧りながら)「あなた方は?」
侍従「このお方は、アールヘム大公の御息女、エレーナ姫様。」「名うての悪党・
ゴンブロゾーに捕まってしまったのです。」
□
ラスティス(焦)「ゴ、ゴンブロゾー!? 大勢の騎士や戦士が返り討ちに遭ってる
大悪党じゃないですか! それは大変!!」
□
ラスティス、3人の縄を切って
ラスティス「すぐ逃げましょう!」
エレーナ「いえ、その必要はありません。」
□
エレーナ「何者も倒せなかったゴンブロゾーを、果敢な奇襲作戦で一撃に葬ってしまう
とは……さぞかし名のある騎士さまと拝察します。どうぞお名前を!」
エレーナの目はきらきら。
□
ラスティス、呆然。
[7]
□
ボロマントを翻し、三人に背を向けるラスティス
ラスティス「名、名乗るほどのものではありません。では姫様、道中気を付けて。」
□
エレーナ「あ、お待ちください、騎士さま!」
ラスティス「ア・デュー!」
タッ!
月の方へ向かって走り去っていくラスティス。
□
ラスティス、暗い森の中を走って逃げる。
ラスティス(汗)「腹が減って略奪しようとしただけなんて、とても言えねえ……」
口には肉を加えたまま。
(場面転換)
□ 数日後の居酒屋。
何人かの客に混ざり、ラスティスもエール酒のジョッキを手に。
□
客Aの声「聞いたかい、あの噂。」
客Bの声「エレーナ姫様を助けた『月の騎士』かい? 聞いた聞いた。」
ラスティス、噂話に気づいて聞き耳を立てる。
[8]
□
客B「あの大悪党ゴンブロゾーをたたっ斬り、名も告げずに立ち去ったっていうじゃな
いか。」
客C「何者なんだろうな、いったい?」
客A「父親の太公が、姫様の婿にするため必死に探してるっていうぜ。」
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ラスティス「ああ、それは……」
客Aの声「なんでもよ……」
□
客Aの声「暗くてよく見えなかったけれど、相当の美男子だろうってことだな。」
客Bの声「マントにたくさんの飾り紐を着けた洒落者だって聞いたぜ。」
客Cの声「かなり高貴な血筋の方であることは間違いねえだろうな。」
顔がひきつってるラスティス。
□
客A「名乗り出れば出世まちがい無しなのに、名乗らないところが奥ゆかしいじゃねえ
か。なあ!」
客B「まさに男の中の男だぜ!」
客C「長く語り継がれるだろうな、ゴンブロゾーを倒した『月の騎士』の伝説は!」
客A「それにしても、誰なんだろうなあ!」
盛り上がってる客たちに背を向け、ラスティスは涙を流しながら無言でエールを
煽るのだった。
-THE END