表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

因果応報:Ver.1.01

作者: エンゲブラ
掲載日:2026/02/23

ひとはなぜ、争うのか?


生存と繁殖の本能。

それを超えてのさまざまな渇望。

富という、未来をも疑似的に保証する概念も生まれ、上限は外れる。


求めれば、求めるほど、渇いていく。

底なしの恐怖と欲望が、争いを生む。


神は、自らの「設計ミス」を認めた。

これは予定になかった不和であると。


そして、パラメータの修正を行うことにした。



「この世界も本当に平和になったものだな」

「ああ、一年前とは別世界だ」



一年前のある日、世界中の人々の脳内に、言葉が降って来た。

すべての人類に<因果応報>のスキルを付与すると。


スキルという名の修正パッチの適用。

そのワールド・アナウンスであった。


自らの行いである因には、相応の報いである果が訪れる。

従来の因果応報のプログラムには、その報いが訪れるまでに、大きなラグがあった。


すぐに訪れる報いもあれば、死を迎える直前に押し寄せる報い。

時には、一族にかけられた因果のような、幅の大きなランダム値が、設けられていた。


神は、この値に修正をかけることにした。

悪いことをした報いは、すぐに訪れるように、数値を二週間後に固定した。


他者から奪ったものは、必ず自らも奪われる。

与えた危害は、必ず自らにも返って来る。

被害が広範であれば、自らの周辺も焼かれる。


善い行いをした報いは、一年後に訪れるように固定された。

一年一年を真摯に生きるために、この世界から「運の不確定要素」を大きく削った。


「物語」としては、面白くなくなる修正であった。

しかし、すでに不快指数が飽和状態ではあるが、愛着のあるこの地球の人類に、最後の施しを与えることにした。



アナウンスから二週間後、人類の2%ほどが、この世を去り、一割が重篤な病に臥せ、半数以上が体調を崩した。これは、この二週間で行った罪に対する報いではなく、これまでの人生に対するものであった。


死を公表された者の多くは、刑務所の重犯罪者たちであったが、様々な企業のトップや、街の暗部なども多く死に、火葬場は、しばらく機能不全に陥った。


予想外の死者も多かったが、一部の人々は気付いた。


今も刑務所で、何の変化もなく、元気に過ごしている者たちの罪は、すでに洗い流されているのではないかと。あるいは、罪そのものが冤罪なのではないかと。


次の二週間後、死者は激減していた。

死んだのは、二週間のあいだに、殺人や凶悪犯罪を犯した者だけで、後はせいぜい小さな不運に見舞われるといった程度であった。


しかし、そこで人々は確信した。

あのアナウンスは、本物の神の啓示であったのだろうと。


人々は、自分なりの善を他者に押し付け合うようになった。

善の押し売りが始まった。


一日一善の流れは、一日十善にもすぐに変わった。

人々は、社会的弱者を探し、施すことに躍起になった。

かならず最後には、自分に返って来ることが保証された善行は、もはや施しではなかった。


一年後、一年の善行の決済の日が訪れた。

一年かけて行った善行に対する報いであった。


返ってきたものは、与えたものとは性質を大きく変えた、ランダムなものではあったが、多くの人間がそれに満足し、また一年の善行を誓った。



神は、最初の百年ほど、その平穏な風景に満足した。

しかし、やがて飽きは訪れた。


愚かなこどもほど、可愛く、

優秀な手のかからないこどもほど、放置する。


因極まれば、陽となり、陽極まれば、陰がさす。

神にも、二重人格的な側面があった。


神は、またプログラムの修正を考え始めた。

神が好む「善の物語」を際立たせるには、巨悪が必要であるのではないかと。


悪の暗闇の中でこそ、善の光りは輝く。

闇のない世界では、善の光りもぼやけて霞む。


神は、また、まばゆい光を見たいという欲望、自らの中の影を解放すべきかどうかに、悩み始めていた。


神には、ふたつの顔があった。

善と悪は、神の表と裏でしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ