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人間は信用できないのでスライム王国を作ります!(一話あたり短め)  作者: 公卵
スライム王国建国編

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9/35

イリナ、王都に到着するの巻


――王都オイコット


イフシアを出て、数日が経った。


馬車の窓から見える景色は、少しずつ変わっていった。

素朴な家並みは消え、道は整えられ、

行き交う人々の服装も、どこか硬い。


「……あれが、王都」


オイコット。


城壁は高く、白く、

まるで世界そのものを選別するみたいに聳え立っていた。


ペガサスは、私のすぐそばを歩いている。

その存在だけが、心を現実につなぎとめてくれていた。



城の中は、静かだった。


静かすぎて、

足音が罪みたいに響く。


玉座の間に通され、

私は、深く頭を下げた。


「よく来てくれた、イリナ・イフシア」


国王は、穏やかな声だった。


年老いているのに、

その目には、はっきりとした意志が宿っている。


「神話級モンスターを授かった者として、

 王国を代表し、感謝を伝えたい」


「……恐れ入ります」


「急な招集だっただろう。

 不安も、戸惑いもあるはずだ」


その言葉に、胸が少しだけ緩んだ。


この人は――

少なくとも、私を道具としてだけは見ていない。


「君の力は、魔人族との戦いにおいて重要だ。

 だが、それ以前に、君は一人の少女だ」


そう言って、国王は微笑んだ。


「ここでは、守るべき存在として扱おう。

 安心してほしい」


……本当に?


その問いは、心の奥に残したまま、

私は再び頭を下げた。



謁見を終え、

城の廊下を歩いていたときだった。


「……へえ」


低く、気怠そうな声。


振り向くと、

一人の男が、柱にもたれて立っていた。


金色の髪。

鋭い目。

纏っている空気そのものが、違う。


「これが、例の神話級か」


視線が、私とペガサスを行き来する。


「田舎の女にしちゃ、

 ずいぶんと派手なのを引き当てたな」


――言葉が、刺さった。


「……失礼ですが」


言い返そうとした瞬間、

男は、つまらなそうに笑った。


「アーサーだ」


名前だけを、投げ捨てるように言う。


「期待すんなよ。

 ここは、力がなきゃ、生き残れない」


そう言って、

私の肩を軽く叩き、通り過ぎていった。


残されたのは、

冷えた空気と、胸の奥の違和感。


――これが、王都。


強い者が、全てを決める場所。


ペガサスが、低く嘶いた。


「……大丈夫」


そう言ったけれど、

自分に言い聞かせているだけだった。



その日のうちに、通達が出た。


私は、城での戦闘訓練を受けることになる。


「基礎から叩き込むそうです」


案内役の騎士が、淡々と告げる。


逃げ道は、ない。


選ばれたのだから。

力を持ってしまったのだから。


「……わかりました」


答えながら、

私は、ふとあの人の顔を思い出した。


マモル。


今、どこで、

何をしているんだろう。


王都の空は、

イフシアよりも、ずっと高くて、遠かった。


私は、不安を抱えたまま、

この城で、戦うことになる。


――知らない世界の、中心で。

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