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人間は信用できないのでスライム王国を作ります!(一話あたり短め)  作者: 公卵
スライム王国建国編

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マモル、人生の分岐点の巻


――分岐点


「……マモル様」


ゴールドの声で、意識が現実に引き戻された。


「こちらの岩場に、違和感があります」


指し示されたのは、ダンジョンの壁。

ただの岩肌――に見える。


だが、よく見ると、

風の流れが、わずかに歪んでいた。


「……隠し、エリア?」


「その可能性が高いかと」


ゴールドは、淡々と答える。


「通常の探索では見過ごされる構造です。

 先程の戦闘による魔力の残滓で、顕在化したのでしょう」


奥へ進めば、

人の手が届いていない場所。


危険。

だが――


「……行きたい」


そう思った瞬間、右腕が軋んだ。


痛みで、息が詰まる。


「……まだ、無理か」


「そのようですね」


ゴールドは、一歩近づく。


「治癒を行います」


「……え?」


次の瞬間、

ゴールドの手が、淡く光った。


温かい。


皮膚の内側に、じんわりと広がる感覚。


痛みが、引いていく。


「……魔法?」


「はい」


あっさりと、肯定された。


「ライム様の魔力を基に、簡易的な治癒を行いました。

 完全ではありませんが、行動には支障ないかと」


腕を動かす。


……動く。魔力の凄さを感じた。


足元を見る。


ライムは、少しだけ小さくなっていた。


「……ありがとう」


言葉にすると、

胸の奥が、静かに温かくなった。


「行こう」


ダイヤが、無言で先に立つ。

岩場に触れると、

壁が、水面のように揺らいだ。


一歩、踏み出す。


――空気が、変わった。



その頃、冒険者ギルド


「……ハイオーク、ですか?」


受付の職員が、眉をひそめた。


「間違いない。

 初心者用ダンジョンに、上位種が出た」


リーダー格の男が、疲れた顔で言う。


「命からがら、逃げてきました」


ギルド内が、ざわつく。


ハイオーク。

その単語の重さは、誰もが知っている。


「……報告は、受理します」


職員は、すぐに奥へ指示を飛ばした。


「当該ダンジョンは、

 即時『要注意ダンジョン』へ指定。

 しばらく、潜入禁止です」


男たちは、安堵したように息をつく。


そのとき。


職員が、ふと首を傾げた。


「……確認ですが」


視線が、三人を順に見渡す。


「パーティ登録は、四名だったはずですが」


一瞬、空気が止まる。


「……ああ」


男は、すぐに笑った。


「新人が一人、途中で腰を抜かしましてね。

 逃げる途中で、はぐれたんですよ」


「スライム連れで、足も遅かったし」


軽い口調。


「生きていれば、戻ってくるでしょう」


職員は、数秒、黙ったまま三人を見る。


だが、深くは追及しなかった。


「……わかりました」


書類に、ペンを走らせる。


「報告、ご苦労様です」


三人は、何事もなかったかのように踵を返す。


ギルドの扉が、閉まる。


職員は、最後にもう一度、書類を見た。


――マモル。


その名前が、そこには残っていた。


だが、

誰も、それ以上を確かめようとはしなかった。



ダンジョンの奥。

隠された空間へと、俺たちは進む。


人間の世界から、

少しずつ、確実に、遠ざかりながら。


ここから先は――

もう、引き返せない。


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