ゴールド、情報収集の旅の巻①
私は元来、知識を集めることを好む性分でございます。
状況を把握せずして最適解は導けない――それが、私の行動原理でした。
スライム王国は順調に成長しております。
防衛、農業、軍備。どれも最低限の形にはなりました。
しかし一つだけ、どうしても不確定な要素が残っていたのです。
この土地の周囲に、人間は本当に存在しないのか。
存在するとすれば、どの距離に、どの規模で、どのような性質を持つのか。
私はその調査を、マモル様に進言いたしました。
しばらく王国を離れ、周辺の地形と人の気配を確認したい、と。
マモル様は一瞬、不安そうな表情を浮かべられました。
それでも最終的には、静かに頷いてくださいました。
「無理はしないでくれ。……必ず、戻ってきてくれ」
その言葉に、私は深く一礼いたしました。
一人で王国を離れることに、迷いがなかったと言えば嘘になります。
ですが、もう一つ――マモル様にもお伝えしなかった理由がありました。
もし人間と出会ったなら。
人間という種族は、本当に信用に値しない存在なのか。
それを、この目で確かめたかったのです。
まずはスライム王国を中心に、ぐるりと円を描くように歩きました。
やがて理解いたしました。
王国は四方を山々に囲まれております。
切り立った岩肌、獣道すら乏しい急斜面。
人間が偶然辿り着けるような土地ではありません。
人間の気配が皆無であった理由に、私は静かに納得いたしました。
やがて北を目指し、山を越え、さらに歩を進めた頃。
視界の先に、煙が立ち上るのが見えました。
――村。
私は補助魔法を用い、旅人の姿に変装いたしました。
装いは簡素な外套、顔立ちは平凡。
疑われぬことを最優先に。
村へ入ると、ほどなくして一人の村民が声をかけてきました。
「どこから来たんだ?」
「イフシアからでございます」
そう答えると、彼は目を丸くしました。
「となると……ウフィーグの山脈を越えてきたのか」
その言葉に、私は内心で反芻いたしました。
ウフィーグ――なるほど。
会話を重ねる中で、理解いたしました。
スライム王国の存在する土地は、
この世界ではウフィーグと呼ばれる山岳地域に属している。
人が近づかぬのも、道理でございます。
村民たちは、警戒する様子もなく、驚くほど穏やかでした。
水を勧め、火に当たらせ、行き先を気遣う。
――人間は、常に敵意を向ける存在ではない。
その事実を、私は確かに受け取りました。
私は決めました。
しばらくこの村に留まり、情報を集めることを。
人間を知ること。
土地を知ること。
そして、マモル様の判断が正しかったのかを、確かめるために。
静かに、慎重に。
私は人の中へと、歩を進めました。




