マモル、実戦訓練の巻
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空はまだ薄曇りで、草木の葉が風に揺れる音だけが静かに響いていた。
俺はゴールドとシルバーと並んで、防衛魔法の訓練に集中している。
指先に魔力を流し込み、バリアの形状や厚みを微調整するたびに、空気がピリピリと反応した。
そのとき、アルミンの声が小さく、少し震えながら聞こえた。
「マモルさま……あのね……ゴ、ゴブリンさんたち……こっちに……くるよ……」
俺は振り返り、幼いスライムの姿を目で追った。
体は小さいが、目の中には必死な光が宿っている。
「分かった、アルミン。シルバー、助言を頼む」
シルバーはいつも通り穏やかに頷く。
「承知いたしました、マモル様。今回は、防衛魔法を実戦で試す良い機会です。焦らず、状況を見極めながら展開なさってください」
俺は深く息を吸い込み、両手を広げる。
視界の端でライムが小さく光を揺らすのを感じた。
そして、地面の上に透明な結界がゆっくりと立ち上がる。
風が結界の表面に当たり、わずかに音を立てる。
――これが俺の力か。
守る力……俺でも、仲間や国を守れるんだ。
遠くからゴブリンの唸り声と足音が聞こえてくる。
彼らは突進してくるが、結界に触れると弾かれ、地面に尻もちをつく。
何度ぶつかろうとも、バリアは破れない。
アルミンが小さくぴょんぴょん跳ねながら、興奮気味に叫ぶ。
「すごいよ、マモルさま! ゴブリンさんたち、あたらないよ!」
俺は自然と笑みを浮かべる。
これが……守る力の手応えなんだ。
「さて、ここからは兵団の出番だ」
カッパー率いるスライム兵団が、陣形を整え始める。
槍や弓を持った兵士型スライムが一斉に前進し、正確な攻撃を繰り出す。
ゴブリンたちは散開し、慌てて退却する。
戦いはあっという間に終わり、王国側の被害はゼロだった。
安堵の息をついた瞬間、全身の力が抜け、どっと疲れが押し寄せる。
胸の奥まで、魔力を使い切った感覚が広がった。
「マモル様……大丈夫でございますか?」
ゴールドの穏やかで落ち着いた声が聞こえる。
「防衛魔法は魔力消費がそれなりにございます。
今回は領土全域に大きくバリアを展開されましたので、相当な魔力を使われた影響が出ております」
「ふぅ……でも……守れた」
俺は空を見上げ、遠くに散るゴブリンの姿を目で追った。
まだまだ未熟だが、それでも――
「俺は……スライム王国の力になれている」
小さなアルミンがにこにこと跳ねて近づく。
「マモルさま……ぼく、いっぱいお手伝いする! マモルさまとライムさまを……まもるの!」
俺は肩を軽く叩き、笑った。
「ありがとう、アルミン。頼りにしてるぞ」
ライムは肩の上で静かに光を揺らし、何も言わずとも喜びを伝えてくる。
その光に、俺は小さく頷く。
――国は確かに成長している。
――次は、俺自身が成長する番だ。
守る力を手に入れ、スライムたちと共に、この国を守り抜く。
まだ道は長い。けれど、俺は進む。
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