表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間は信用できないのでスライム王国を作ります!(一話あたり短め)  作者: 公卵
スライム王国建国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/34

マモル、魔法に触れるの巻



次の日の朝。

国は、いつも通りに動いていた。


畑ではスライムたちが黙々と作業をし、

建築地ではアイアンズが石を積み上げている。

カッパー率いる兵団は、外周を巡回していた。


――順調だ。


「スライム王国は、良い方向に進んでいます」


隣で、ゴールドが静かに言った。


「俺も、そう思う」


昨日の夜、考えたことが、まだ胸に残っている。

国は成長している。

なら――次は。


「次は、俺が成長する番だ」


ゴールドは、少しだけ目を細めた。


「戦える力を、お望みですか?」


「……ああ」


守られるだけじゃ足りない。

任せるだけでも、足りない。

いざという時、自分自身が立てる力が欲しい。


「よろしいかと存じます」


即答だった。


「ではまず、私と手合わせをなさってください」


王国内の少し開けた場所。

建物も畑もない、ただ地面が広がる場所で、

俺とゴールドは向かい合った。


結果は、はっきりしていた。


――敵わない。


動きも、判断も、力も。

俺の攻撃は、すべて見切られ、受け流される。


「……強いな」


「光栄でございます」


息を整えながら、ふと気づく。


「でも今の、少し……変じゃなかったか?」


俺の放った一撃。

その瞬間、空気がわずかに震えた。


ゴールドが、少し驚いたように俺を見る。


「……マモル様」


「なんだ?」


「魔力反応が、ございました」


一瞬、意味がわからなかった。


「人間は、魔法を使えないはずだろ?」


「ええ。通常は」


ゴールドは顎に手を当て、思案する。


「ですが、マモル様は長時間、

ライム様の魔力が満ちたこの土地で過ごしておられる」


「……それが影響してる?」


「可能性は高いかと。

パートナーモンスターの力により、

人が魔法に目覚めた例は、過去にもございます」


胸の奥が、わずかに熱くなる。


「じゃあ……俺は、魔法を?」


「才能は、ございます」


だが、とゴールドは続けた。


「申し訳ありません。

私は治癒や補助は扱えますが、

攻撃魔法の指導は専門外でございます」


「あの時、俺の腕を治したのは?」


「簡易的な治癒です。

戦闘用魔法とは、系統が異なります」


沈黙が落ちる。


どうする?

誰に教わる?


――その時。


ライムが、ふわりと発光した。


柔らかく、しかしはっきりとした光。

その中から、ひとつの影が形を成す。


現れたのは、

魔法使いの装いをした、女性の姿のスライムだった。


長い髪、落ち着いた佇まい。

だが、質感も色合いも、確かにスライム。


「確認いたします」


ゴールドが即座に動く。


「……魔法特化型スライム。

高度な魔法運用が可能。

実力は……私と同等か、それ以上」


そのスライムは、俺に向かって、静かに一礼した。


「はじめまして、マモル様。

私は、あなた様の魔法修練を補佐する存在です」


声は落ち着いていて、丁寧だった。


俺は、自然と口を開いていた。


「……シルバー」


名を呼ぶと、

彼女は微笑むように目を細める。


「その名、謹んでお受けいたします」


俺は、深く息を吸った。


国は、育っている。

仲間も、揃っている。


そして――

俺自身も、ようやく、進めそうだ。


「シルバー。

俺に、魔法を教えてくれ」


「喜んで」


こうして、俺の修行が始まった。


王としてではなく、

一人の戦える存在として。



開けた場所に、静かな風が吹いていた。

スライム王国の中でも、この場所は魔力の流れが安定しているらしい。


向かい合うのはゴールド、そして少し離れた位置にはシルバー。

ライムはいつも通り、肩の上で静かに光を揺らしている。


「まずご理解くださいませ、マモル様」


シルバーが丁寧に言葉を選びながら説明する。


「魔法に万能は存在いたしません。

 魔法を扱えるようになった者は、必ずどこかに得意・不得意が生まれます」


「得意・不得意……」


「はい。攻撃、回復、補助、防衛――どの系統を伸ばせるかは、才能と感覚にほぼ依存いたします」


ゴールドも静かに頷く。


「私の専門は回復と補助でございます。

 高度な攻撃魔法は、残念ながら習熟しておりません」


「私は攻撃魔法に特化しております」


シルバーが静かに微笑む。

どちらも努力ではどうにもならない、天性の偏りがある。


「では、私の適性は……?」


ゴールドが一歩前に出て、静かに告げる。


「マモル様の適性を知るには、まず手合わせが必要でございます」


王国内の開けた場所に立ち、俺は集中する。

魔力の流れを感じ、指先にわずかに伝わる熱を確かめる。


「焦らず、まずは何をしたいのか、明確にしてくださいませ」


ゴールドの言葉に従い、思考を一点に絞る。


――この国と仲間を、守りたい。

――危険から逃げる者を、守りたい。


手を前に差し出すと、空気がわずかに揺れた。

小さな衝撃が地面に伝わる。

それは、直接の攻撃ではない。

だが確かに、周囲の流れを変えた感覚があった。


「……これは」


シルバーが目を細め、分析する。


「攻撃魔法ではございません。

 補助魔法の範囲にも含まれません」


ゴールドも静かに観察する。


「マモル様の適性は、防衛系統でございます。

 場を整え、仲間を守り、状況を制御する魔法に向いております」


胸の奥が、静かに熱くなる。


「防衛系……か」


これなら、俺の望む力と重なる。

戦う力ではなく、守る力。

国を、仲間を、スライム王国を守る力。


「ご理解いただけましたか、マモル様」


ゴールドが、いつも通り執事の口調で確認する。

丁寧で落ち着いているその言葉に、安心感を覚える。


「……ああ、分かった。俺は防衛系魔法に特化する」


シルバーが、静かに頷く。


「喜んで修練を補佐いたします。

 マモル様の力が成長されることを、私も楽しみにしております」


ライムは、肩の上で小さく光を揺らす。

その姿を見て、俺は心の中で決める。


――国は、確かに成長している。

――次は、俺自身が成長する番だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ