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人間は信用できないのでスライム王国を作ります!(一話あたり短め)  作者: 公卵
スライム王国建国編

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マモル、王国が生まれるの巻①


――スライムに同調する土地


拠点作りは、思ったよりも上手くいっていなかった。


アイアンズたちは黙々と作業を続けている。

岩を削り、地面を均し、柱を立てる。

その動きは正確で、無駄がない。

なのに――なぜか、形にならない。


「……進んでる、よな?」


俺の呟きに、ゴールドが静かに首を振った。


「ええ。作業自体は問題ありません。ですが、建築物が“定着”しないのです」


壁を作っても、翌日には歪む。

通路を整えても、気づけば微妙に位置がずれている。

壊れているわけじゃない。

まるで、土地そのものが拒んでいるようだった。


「このままでは効率が悪いですね。原因の特定が必要かと」


俺は腕を組み、未完成の拠点を見回した。

逃げ込んだ先で、ようやく落ち着ける場所ができると思ったのに――現実はそう甘くない。


その時だった。


ぷる、と。

足元で、ライムが小さく震えた。


「……ライム?」


次の瞬間、柔らかな光がライムの体から溢れ出した。

眩しさはない。

ただ、温かい光だった。


その光は、ライムを中心に広がり――やがて、ゆっくりと建築現場の方へ流れていく。


「これは……」


ゴールドが目を細める。

ダイヤは無言のまま、警戒するように周囲を見回していた。


光は地面に染み込むように広がり、

岩へ、土へ、空間そのものへと溶けていく。


しばらくして、光は消えた。


何も起きていないように見えた。

だが――空気が違う。


「……調査完了しました」


ゴールドが静かに告げる。


「この一帯の土地が、スライムに同調しています」


「同調?」


「はい。正確には――ライム様の魔力に反応し、土地そのものが“スライム的性質”を帯び始めています」


理解が追いつかない。


「つまり……?」


「この土地は、もはやただの土地ではありません。

 スライムにとって“居心地の良い形”へ、自律的に変化し始めています」


……拠点が、生きてるってことか?


それから少し経った頃だった。


最初に完成した建物が、俺の部屋だった。


石造りなのに、どこか柔らかい印象の室内。

天井の高さ、壁の距離、空気の流れ――

不思議と、落ち着く。


「……居心地、いいな」


正直な感想だった。


ゴールドは少しだけ考える素振りを見せる。


「おそらく、ライム様の無意識的な指示でしょう。

 “主が最も安らげる空間”を、優先的に形成したものと思われます」


ライムを見ると、何事もなかったかのように、ぷにっと揺れていた。


その時だ。


部屋の隅に――

いつの間にか、小さな影があった。


「……?」


人の子供の姿をしている。

だが、肌は半透明で、質感は明らかにスライム。

不安そうに、こちらを見上げている。


「ゴールド、あれは……?」


「確認します」


少し間を置いて、ゴールドが答えた。


「この土地を象徴するスライムです。

 いわば――“拠点の核”のような存在ですね」


その子供型スライムは、

俺を見ると、ぱぁっと表情を明るくした。


「……マモル、さま」


たどたどしい声だった。


そして、ライムの方を見て、深く頭を下げる。


「ライム様」


……慕ってる、な。


俺は少し戸惑いながら、その子に近づいた。


「えっと……お前、名前は?」


首を傾げる。

どうやら、まだ無いらしい。


「じゃあ……アルミン、でどうだ?」


子供型スライム――アルミンは、

一瞬きょとんとした後、嬉しそうに頷いた。


「アルミン、です」


アルミンは、完成したばかりの俺の部屋の床にちょこんと座っていた。

壁に手を当てたり、床を撫でたりして、まるでここが自分の体であるかのような仕草をしている。


「なあ、アルミン」


声をかけると、ぴくっと反応して顔を上げた。


「はい、マモル様」


「この土地のこと、少し教えてくれないか」


アルミンは少し考えるように首を傾げ、それからゆっくりと言葉を選ぶ。


「ここは……もともと、建てられるのが、きらいでした」


「嫌い?」


「はい。

 石を削られて、形を決められて……じっと、されるのが、いやだったんです」


なるほどな、と腑に落ちる。

アイアンズの建築が上手くいかなかった理由も、それで説明がつく。


アルミンは続けた。


「でも……ライム様の、ひかりが、きて……

 やさしくて、あたたかくて……」


その視線が、ライムへ向く。


「ぼくが、生まれて……

 ここは、スライムが、生きやすい土地に、なりました」


一瞬、言葉を失った。


土地が嫌っていたものを、力でねじ伏せたわけじゃない。

拒絶されていたはずの大地を、受け入れさせた。


「……そんなことまで、できるのかよ」


思わず、ライムを見る。


ライムは、ぷるん、と少し弾んで――

どこか誇らしげに、胸を張るような形になった。


……ああ、これは完全に自覚してるな。


「すごいよ、ライム」


そう言うと、ライムはさらにぷるぷると揺れた。

まるで「当然だよ」とでも言いたげに。


俺は小さく息を吐く。


ハズレと称されていたはずのスライム。


なのに今は――

土地すら変えてしまう存在が、俺の隣にいる。


「……本当に、とんでもない相棒だな」


その言葉に反応したのか、ライムは俺の足元まで転がってきて、ぴたりと止まった。


アルミンはそれを見て、嬉しそうに笑う。


「はい。

 ライム様は……すごい、王様です」


王様、か。


俺はまだ、その言葉の重さを理解しきれていなかった。

けれど、この土地が生きている以上――

もう後戻りは、できない気がしていた。


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