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人間は信用できないのでスライム王国を作ります!(一話あたり短め)  作者: 公卵
スライム王国建国編

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マモル、転生の巻

はじめての投稿です。誤字脱字あるかもしれませんが、これからも書いていきますので温かく見守っていただけますと幸いです。

――目を覚ました世界


最初に感じたのは、痛みだった。


背中が、冷たい。

硬い地面の感触が、じわじわと意識に染み込んでくる。


「……っ」


声を出そうとして、喉がひりついた。

乾いている。ひどく。


ゆっくりと目を開ける。


見えたのは、見知らぬ空だった。


青い。

やけに澄んでいて、雲の形までやけにくっきりしている。

日本で見ていた空より、どこか作り物めいていて――それでいて、妙に現実感があった。


「……どこだ、ここ」


体を起こそうとして、ふらつく。

制服ではない。

いつもの学生服ではなく、粗い布の服を着ていた。


混乱が、遅れて押し寄せる。


最後の記憶は――

夜の帰り道。

スマホを見ながら、横断歩道を渡って――


そこから先が、ない。


事故?

夢?


そう思った瞬間、胸の奥がひやりとした。


夢にしては、痛みがはっきりしすぎている。


周囲を見渡す。

石畳の道。

木造の建物。

遠くに見える、低い城壁。


どれも、現実離れしていた。


「……異世界、ってやつか?」


口に出した途端、自分で可笑しくなりそうになった。

ラノベで何度も読んだ設定。

でも、頭のどこかで否定しきれない。


そのときだった。


「……だ、大丈夫?」


背後から、声がした。


振り返る。


そこにいたのは、少女だった。


淡い色の髪。

簡素な服装。

年は――俺と同じくらいだろうか。


不安そうな表情で、少し距離を保ったまま、俺を見ている。


「道の真ん中で倒れてたから……」


俺は、言葉を探した。

何を言えばいいのか、わからなかった。


「……ここ、どこ?」


絞り出した声は、ひどく間抜けだったと思う。


少女は一瞬、きょとんとした顔をしてから、ゆっくりと答えた。


「ここは、ジパング王国。イフシアの町だよ」


聞いたことのない国名。

でも、その言い方はあまりにも自然で。


「……国?」


「うん。えっと……」


少女は、俺の様子をじっと見て、何かを察したように息をのんだ。


「もしかして……記憶、ない?」


俺は、正直に頷いた。


すると少女は、少し困ったように笑った。


「そっか……。じゃあ、とりあえず家に来て。水もあるし」


その笑顔に、なぜか胸が少しだけ軽くなった。


この世界で、

最初に出会った人間。


名前も知らないその少女の差し出した手を、

俺は、迷った末に――握った。


このときは、まだ知らなかった。


この世界が、

どれほど理不尽で、

どれほど残酷で、

それでも――信じてしまう場所だということを。


そして彼女が、

俺にとって「最初の希望」になることを。


――異世界の常識


イリナの家は、町の端にあった。


石と木で作られた、素朴な建物。

中に入ると、ほのかに木の匂いがした。


「座って。すぐ水持ってくるから」


言われるまま、椅子に腰を下ろす。

体が、思った以上に重かった。


差し出された水を一気に飲み干すと、ようやく息が整った。


「……ありがとう」


「ううん。倒れてたんだし、それくらい普通だよ」


イリナはそう言って笑った。

作り物じゃない、自然な笑顔。


それだけで、少しだけ安心してしまう自分がいた。


「……俺、マモルって言う」


口にした瞬間、胸がちくりと痛んだ。

名前だけは、はっきり覚えている。


「マモル……? 変わった名前だね」


「日本の名前だから」


「にほん?」


やっぱり、通じない。


俺は、少し考えてから言った。


「この世界の人間じゃ、ないんだ」


イリナは、驚いた顔をするかと思った。

でも実際には、目を丸くしたあと、静かに息を吸った。


「……やっぱり」


「やっぱり?」


「うん。たまに、いるって聞くから」


淡々とした口調だった。

まるで、雨の話でもするみたいに。


「この世界じゃない場所から、突然来る人」


俺は、言葉を失った。


「珍しいけど、前例はある。だから……驚かないよ」


それが、この世界の常識らしい。


「……ここは、どんな世界なんだ」


イリナは、少しだけ考えてから話し始めた。


「人間族と、魔人族が戦ってる世界」


その言葉だけで、空気が重くなる。


「今は、魔人族が優勢。だから、どこの国も必死」


「……戦争、か」


「うん。だから、人間は戦う力を必要としてる」


イリナは、当たり前のことのように続けた。


「十五歳になると、教会で“信託”を受けるの」


「信託?」


「神から、モンスターを授かる儀式」


胸の奥が、ざわついた。


「そのモンスターが、パートナー。

 一生一緒に戦う存在」


「選べるのか?」


俺の問いに、イリナは首を横に振った。


「ううん。完全に運」


その一言が、妙に重く感じられた。


「強いモンスターを授かれば、英雄。

 弱ければ……それなり、かな」


それなり。

その言葉の裏にあるものを、俺はまだ知らなかった。


「魔法は?」


「基本、人間は使えないよ。

 使えるのは魔人族と、一部のモンスターだけ」


不利すぎるだろ、と喉まで出かかったが、飲み込んだ。


「……今日が、ちょうどその日なの」


イリナは、俺を見て言った。


「信託の日。私も、今日」


「……俺も、行くべきか?」


「うん」


即答だった。


「この国で生きるなら、避けられない」


逃げ道は、ないらしい。



教会へ向かう道すがら、町の人間たちが俺をちらちらと見ていた。


服装が違うからか。

それとも、雰囲気か。


イリナは、何も言わず、俺の少し前を歩いていた。


「……怖くないのか」


思わず、聞いてしまった。


「何が?」


「モンスター。戦争。全部」


イリナは、少しだけ歩調を緩めた。


「怖いよ」


それから、前を向いたまま言う。


「でも、みんな受ける。

 受けなきゃ、生きていけないから」


その背中は、小さかった。

でも、逃げていなかった。


教会の尖塔が見えた。


白い石造りの建物。

静かで、厳かな雰囲気。


「ここだよ」


扉の前で、イリナは一度だけ振り返った。


「マモル。

 何が出ても……驚かないでね」


その言葉の意味を、

俺はまだ、理解していなかった。


この世界が、

どれほど“運”に支配されているのか。


そして、

その運が、どれほど残酷かを。


――俺が、スライムと出会うことになるとも知らずに。


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