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魔文豪  作者: 三流木


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魔文豪・神坂文護


神坂文護は魔文豪である。

文豪として小説を書き上げた際、悪魔が娯楽に魅入る時、小説を一冊の魔導書に変える。

小説から変化した魔導書を使役した時、その時初めて、魔文豪と名乗る事が出来るのだ。


「せんせの作品が魔典賞(グリモア・エグリゴリ)の一次審査を突破しましたの」


六畳一間の部屋の中。紫陽花の様な色彩を放つ髪を優雅に靡かせる御令嬢が小悪魔らしい笑みを浮かべていた。

神坂文護は彼女の顔を見つめていた。

本来は天井を見つめていたのだが、何時の間にか彼女が顔を覗いていたのだ。


「……紅院(くいん)か」


彼女の名前を告げると、西洋の出で立ちをした紅院(くいん)(きさき)は、歯に噛む様に笑う。


「取り敢えず無言で部屋の中に入るな、驚いて死んでしまう」


神坂文護は体を起こし、座布団で作った枕を解いて彼女に渡す。

座布団は丁度、彼女の下に敷かれる様になった。


「そして、客人として来たのならば、先ずは座れ、あと、部屋の中で傘を差すな、《《宙にも浮くな》》」


紅院妃は宙を浮いていた。

彼女自身が幽霊であるかの様な浮遊。

ふわふわと日傘を差しながら空中を漂い続けている。


「ま、わたくし、せんせと同じ空間に座っても宜しくて?同じ空気を吸い、同じ時を過ごしても構わぬと、つまりせんせ、それは求婚と受け取っても?」


興奮しながらまくしたてる紅院妃に苦みのある表情を浮かべて神坂文護は諭すように口にする。


「キミは悪魔だろうに、人とは相容れないのだろう?」


悪魔。

それこそが、彼女の正体であった。

長い時を過ごす悪魔は人を玩具に遊ぶ。

破滅する程までに弄り尽くした末に、その魂を刈り取る。


それが悪魔としての仕事だが。

時に悪魔は娯楽に飢えている。

悠久の時を過ごした結果、暇を持て余す程に。

その様な時は人間が作り上げた娯楽や趣向品に手を出すのだ。

そして作品に心を奪われる事もある。

人間が作り上げた小説を読み、人間に対し心を奪われるのだ。

紅院妃は神坂文護の小説を読み、そして彼の作品を愛してしまった。

彼の全てを、愛してしまったのだ。


「愛を前に全ての障害は無に等しいですわ、わたくし、せんせの全てを愛してますもの」


狂信的に。

狂愛的に。

紅院妃は必要ならば自らの肉体を差し出す程に。

神坂文護の小説を愛していた。

聊か、懐疑的な顔を浮かばせる神坂文護は自らの作品に、彼女程の愛着は無く、だからこそ、自分に興味が無い事を悟っている。


「キミが好きなのは俺の小説だろう?売れもしない三文小説を」


その様に蔑む様な言葉を口にする。

すると、彼女は口を大きく開けて唖然とした。

ゆっくりと座ったまま畳の上を擦りながら神坂文護の前に向かうと、彼の手を掴んで自らの胸に置いた。


「その様な事を言わないで下さいまし、せんせは、疲れているのでしてよ、わたくしの愛を、どうか感じとって下さいまし……そして、少しでも自分の作品を愛せる様に……」


彼女は手を隙間の空いた谷間に向けて神坂文護の手を突っ込ませた。

柔らかく、瑞々しい胸の感触が掌に感じ入る。


「ぁン……せんせの、熱が、わたくしの胸に……」


彼女の姿を見て、神坂文護は溜息を吐く。


「所詮はキミの欲を満たす為の行為だろうに……」


そう言いつつも、彼の手は強く胸を揉みしだいていた。


「ん……お好きですのね、せんせも


」甘い声を漏らす紅院妃に、神坂文護は視線を逸らした。

胸を揉んだ状態で、脳内にインスピレーションが湧いた為だ。

胸を揉みながら、もう片方の手で筆を走らせる。

最早、紅院妃に目などくれなかった。



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