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49.黒歴史/乙女の集い

 現在、魔法という存在は人々に『才能』という形で認知されている。

 しかし、それは一部地域に限る話あり、それ以外のその一部地域に住まう者たちよりも遙かに大多数の人間にとって、魔法とは――否、『魔粒子』とは災いという認識が強い。

 何故ならば、その一部地域以外の世界は魔粒子という存在に蝕まれているからだ。

 魔粒子、それはエネルギーそのものであり、世界に変革をもたらすことの出来る、概念世界の自由変数因子。

 その方向性を定めてやれば事象を引き起こす、アカシックレコードより生み出された『この世界オーベ・レセル』の概念序列ことわりをも変革できる、力の根源。

 だが、それを完全に御するには、人類という種にはまだその体が追いついてはいなかった。

 魔粒子遭遇危機より、数千年が過ぎた今でも、まだ人類という種は、人間という域を超えてないなかった。


※※※※


 西暦2300年、人類は滅亡した。原因は、世界的に同時多発した未知の病『悪魔病』。

 その銘々は呼んで時の如く、人々を悪魔にするところに由来する。

 比喩的な表現ではない。実際に、人間という貌が失われ、『悪魔』そう表現されてもおかしくない姿となる。

 発生初期に置いては、そのおぞましい姿に耐えかねて自殺する者があり、逆に人外じんがいと迫害し死へおとめる者もいた。

 だが、次第に後者は数を減らしていった。

 理解を示したからではない。責め立てていた自分達自身がそうなったためだ。

 健康不健康、老若男女、何をも問わずに人々は次々と変質していった。

 しかし、それはただの変貌に止まらない。

 ある者は忽然と、ある者は苦しみながら命を落とし、ある者は正気を失い尋常在らざる怪力にて暴れ回り、そして結局は力尽きて死に至った。

 こうした騒動が世界中でおこり、人類社会はたったの数ヶ月という時間で滅んだのだった。

 しかし、絶滅はしていなかった。

 完全に変質しながらも生き長らえる者、僅かの変化のみで至って良好な者、その病の影響も全く受けなかった者と、僅かながら人類という種は絶えてはいなかった。


 そして、ここから暫くの間が、この悪魔病の発症期よりも、凄惨な暗黒期と言われている。

 社会というものが崩壊と同時に――否、本質的には悪魔病の発症期からからだろう、人間の個々のモラルというものも崩壊仕切っていた。

 協力・助け合い・同族意識……ありとあらゆる人々の結束を促す言葉が失われていた。

 正に動乱の時代。強者ではない、狂者こそが正義を統べるという時代だった。

 今の世から見れば、或いは滅亡以前の人類から見れば、蛮族と云う他ない醜悪極まりない社会だ。

 しかし、それを攻めることの出来る者は存在しない。

 人類の初期の社会大系も同様であった筈であるし、現在生きる者たちはそういった歴史があるから、今の自分たちがあるのだから。


※※※※


 彼女は、そこまでの歴史の話を子どもたちに分かり易く、昔話――まあ、歴史のことだから昔の話って意味では合ってるんだけどね――というよりは御伽話おとぎばなしを読み聞かせる様に語った。

 私はその間、彼女の話を聞きながら、丁度今度の社会の小テストの範囲であるそこを、教科書の内容に置き換えながら頭の中で繰り返す。

「沙樹お待たせ~」

 子どもたちの相手を終えた、マリちゃんが私の方ににこやかにやって来た。

 今まで子どもたちに、歴史の本を語り聞かせていたこの娘は、國府田こうだマリ子。私の中学からの仲の良い友達グループの中の一人。

 ここは児童図書館、彼女はここでボランティア(?)――って言うよりは、趣味だよね(笑)――でこうして偶に子どもたちに本の語り聞かせをしている。

 図書館の筈だけど、もうここはほぼ児童館ばりに子どもたちがはしゃぎ回ってって大変。私も何度か、手伝いに来てるけど、その度にヘトヘトを通り越して、ボロボロにされちゃう……(苦笑)

 でも、今日は単なる待ち合わせ、ごめんねみんな、マリお姉ちゃんは私が貰っていくね。

「うーうん、ぜんぜんだよ。それより、久しぶりっ!!」

「ホントだよ~!!(怒) 春休み中、全然連絡取れなかったの、あんただけだかんね」

 私は卒業式以降、初めて会った気の置けない友達に嬉々として挨拶をしたら、マリちゃんはそれよりも、春休み中に連絡を取れなかった私を咎めた。

「うっ、ごめ~ん(泣)」

 だって、しょうがないじゃ~ん!! 私だって色々あったんだよ?

「でも、ほんとに良かった。沙樹が元気で」

 そう言ったマリちゃんさっきまでと違って、とても優しい声と温もりで、私を抱きしめてくれた。

「うん、ホントに心配掛けてごめんね」

 春休み中の私は、あの事で完全に参っていてとてもみんなと出かけられる状態じゃなった。

 だから、誰からの連絡も気のない状態で適当にあしらってたから、きっとみんなに凄く心配掛けちゃったと思う。

 いつも、元気な私がそんなんだったら、余計に……ね?

 だから、今日はその埋め合わせ!! みんなで騒ぐぞーー!!


※※※※


「今日は楽しかったね~」

「いや~、騒いだ騒いだ」

 女三人寄れば姦しいって言う様に、四人集まれた尚のこと、騒がしくもなる。

 私とマリちゃんは後の二人、半場友恵はんばともえ:友ちと島涼香しまりょうか:リョカチャンらと合流した。因みに、この二人は私なんかよりも、大分賑やか――と言うか、騒がしい。

 授業などでは兎も角、それ以外となるとマリちゃんには手に負えなくなるので、いつも私が率先して、引っ張ることで、彼女たちの暴走を食い止めている。というのが、私たちの関係かな?

 そんなんだから、全員で集まったときも、この娘たちが何かをしでかす前に、私が纏め上げてたって云うのが、凍夜くん曰く『真面目なこと以外での中心人物』の実態。決して、私が人一倍お転婆ってわけじゃないことだけは、間違えないように!!

 このメンバーが、いつものグループ女子部で、それに凍夜くんを始め緑川くん(コウくん)、真殿くん(みっちゃん)、伊藤くん(けんちゃん)の男の子四人を加えた八人が、私たちの中学三年時代のいつものメンバー。通称、凍夜隊(笑)

 今日は、始めにジョイセンターでバーチャルアクション系を遊び倒して、次に体休めでカラオケ、その後は話し込むためにこのモールまで来てこのファミレス入るまで、通りすがらに店にも入らずに適当にウィンドウショッピングして、漸く今に至る。

「ホント!! 久々で何か疲れちゃった」

「アンタはサボり過ぎっ!!!」

 私がポロッと言ったら、結構な勢いでリョカチャンから突っ込まれた。

 でも、サボるって……別に義務じゃないんだから(苦笑)

 何て、苦笑いしたら更に友ちからも言われてしまった。

「そうそう。ウチらは、春休みの三分のニはこんな感じだったかんね!!」

 だから~っ!!! 義務じゃ(ry

 何て感じでちょっと責める様な言い方をするのは、それだけ私を心配してくれたってこと何だよね……

 それでも彼女たちは私の春休みの事を訊くことをしない。

 それは、私への配慮とそして頃合いを見て、私から話してくれるという信頼から来るものだと分かっているから、とても心地が良い。

 流石は凍夜隊!! 凍夜くんが近くに置く人たちだけのことはある。

 って、それを言うと自分も含まれるだけに、ちょっと自意識過剰かな~とは思うけどね。

 ここにいる娘たちは、みんな凍夜くんに片想いをした(三人は継続中)経験のある娘たちばかりで、友ちに至っては中一からって言う、私なんかよりも片想いの大(?)先輩だったりする。

 友ちだけじゃない、凍夜くんに想いを抱き始めたのはみんな私より先……告白もみんな中学の頃に済ませてるって状態。

 結果はみんな実を結ばなかった訳だけど、それでも人としてお互いに良い関係が築けてる。

 当時、凍夜くんに告白した娘は、振られても逆に仲良くなるって言う七不思議の一つがあって、中学までの私はその理由を分からなかったけど、今なら分かる。何しろ、実際体験中ですからっ(苦笑)

 この中で唯一彼氏のいるリョカチャンも、凍夜くんのお陰でそういう機会に恵まれたって言ってたから、凍夜くんへの想いは無駄ではなかったらしい。


 それだけに、黙ってはいられない。

 今のことを……そこに至った訳を……

 でも、もう大丈夫。凍夜くんが平気だったから、というだけでは本来足りないかも知れない。でも、彼に打ち明けて、それでも受け入れられたことは本当に励みになっている。

 そして、何より今目の前にいるこの娘たちは、凍夜くんだけじゃない、私自身が選りすぐった親友たちでもある。だから、もう怖くない。

 そして、私は打ち明ける。私の家柄と立場を、そして今の私と凍夜くんの関係を…… 

幕間は、こんな感じに進めて行きます


今月は、引っ越しのため、もう更新できない可能性があります(まだ、確定ではありません)

最悪来月の頭にまで、色々食い込む可能性があるので、ご迷惑お掛けすると思いますが、これからも宜しくお願いします

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