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3.裏工作は準備万端?

 これから二人が通う様になるのは国立魔法師育成高等学校常盤ときわ校舎(通称:十二校)である。

 現代では、就学前教育からの魔法師教育機関(以降、略して魔法学校)が確立されているため、国立以外の魔法学校も数多くあるが、国立は魔法学校の発祥であり、その第一号が、現在の国立魔法師育成高等学校斎鳳さいほう校舎(通称:一校)となっている。

 国立魔法師育成高等学校は、一昔前までは国立魔法師育成第○高等学校という名称だったが、制度の変更により、現在の様な国立魔法師育成高等学校○○校舎という名称に変わった。

 その名残として、建てられた順番に応じて通称が付けられて、生徒間・教師間の口頭でのやり取りの場合は、主にこの通称を使われている。

 国立は(学校側の)『伝統とエリート意識』が強く、かなりハードルも高い。

 故に、凍夜への視線の意味は、実のところ小夜の丸っきりの勘違いというわけでもない。

 しかしそうは言っても、制服や二人の歩き姿に気を取られるのは一時のことで、それ以降は先の通りだ。

 因みに、国立の制服はブレザーで、国立というイメージにはそぐわない程に女子に人気があったりするくらい、いいデザインになっているので、やたらと目につきやすい。

 無知な者――国立魔法科は有名なので、知らない方が今は異常と言っていいレベル――から見れば私立の生徒と思われることもある。

 何故この制服になったのかは、お金と権力おとなの事情と言うことで、その理由を知るのは一部の人間だけで、それも昔の話のため、今ではその当事者もいなくなり、その真実は後を継ぐ者に資料として残っているのみらしい、が真実は定かではない。

 だが、生徒にしてみればそんな事情は関係ないことで、変更当時から生徒には強い指示を受けているという。

 数年毎にマイナーチェンジは繰り返してはいるが、ベースは当時のままと変わっていないものの、未だ持って生徒からの制服変更の希望がないことからもその人気の程が伺える。

「着きましたねっ!」

 小夜が笑顔満開で、凍夜へと顔を向ける。

「クラス見てくるから、ここで待ってて」

「はいっ! お兄様!!」

 小夜は絡めた腕をすんなり離し、新入生の群がる大型のホロウィンドウへと進んでいく凍夜を見送った。

 本来、小夜の性格ならば、ここで一悶着ありそうなところなのだが、凍夜と離れた小夜の顔に変わりはなく、終始笑顔のままだ。

 凍夜は、人混みの最後列のところまで来て足を止め、左腕を折り曲げて腕時計型の携帯端末の画面をホロウィンドウへ向けた。

紫司(しづか)凍夜、ダウンロード」

 声を発して、自動で開いた携帯のホロウィンドウに、受信完了のメッセージを確認したら、きびすを返して小夜のところまで戻っていく。

 その間で、携帯のホロウィンドウを操作して落としたデータを呼び出して自分のクラスを確認する。

「何組ですか?」

「A組だ。小夜は、友達のは確認しなくていいの?」

「ええ。大丈夫です。行きましょう」

 今度は、腕を組むこともなく、しかしピッタリと寄り添うようにして凍夜に並んで校舎へと入って行った。


 本来、自分のクラスを確認するだけなら、携帯さえ持っていればこんなものだ。

 携帯には、自分のクラスと出席番号、クラスの地図が添付されているため、このデータさえあればこと足りる。

 しかし、大型のホロウィンドウの前からはなかなか人だかりが消えることはない。

 皆が残る理由は自分以外の確認に他ならない。

 落としたデータに表示されるのは自身のものだけで、取れるのは自分のデータだけという仕組みになっていて、他人のを落とすことは出来ないため、友人やその他気になる相手のクラスはこの広いホロウィンドウから探し出さなければならない。

 孤立無援で一人で受験(合格)したのならば、先ほどの凍夜と同じ対応となるが、ここに受けにくるものの殆どが同じ中学出身のため、こうして人だかりができて、同じクラスになったことを喜び、別れたことを励まし合ったりとにぎわいを見せているというわけだ。

 向こう一年を一緒に過ごせるかどうかというイベント(実際には今決まったわけではないが)なのだ、盛り上がるのは当然の反応だ。

 しかし、あの二人は――というより、小夜に全く動じた様子はなかった。

 更に、そればかりかデータを受け取ったのは凍夜だけなのだ、本来この時点ではまだ小夜のクラスはわからないはずなのである。

 勿論それには、理由があった。

 小夜が動じることのない、凍夜が自分のクラスだけを確認した理由。

 実はこの二人のクラスが同じになるというのは確定したことだったのだ。

 世間的に言うところの家庭の事情というもののためだ。

 つまりこれは、小夜が学校に乗り込み教師陣を説得した成果――ではない。

 小夜ならやりかねない感は否めないが、流石に今回の件は違う。

 家庭の事情というよりは、(本人にしてみれば問題ないのだが)凍夜が問題を抱えているため、妹である小夜がそれを補佐できるようにという、飽くまでも正真正銘『学校側の配慮』というものだった。

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