08 強敵との対峙
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一通り愚痴を言いきった後、西園寺さんは疲れたのかしばらく大人しくなった。
びっくりした。
不登校だと聞くと学校で何かがあり、それで落ち込み、登校しづらくなったのかと考えていたが、見たところとても元気だ。
さて、この後どう話を展開していこうか――
「あのー、西園寺さん。突然押しかけてしまってすみません。二年二組の藤織 白といいます」
まずは挨拶からだろう。
「藤織?聞いたことがあるわね。二年生になってすぐの頃に学級委員と図書委員の両方に立候補したって――」
「ああ、そうですそうです。その藤織です」
「アタイより先に目立ってたから気に入らなかったのよね〜」
はい?
「アタイは西園寺 時子。知ってるわよねえ?」
「そりゃあ、こうやって家まで来てるわけですから――」
「そうじゃなくって、一年の頃から有名だったでしょ?」
正直あまり印象がない。
西園寺さんとは一年の頃は別クラスだし、そもそも教室の場所も別の棟だ。
朝檜山高校は一年生が一階、二年生が二階、三年生が三階に教室がある。
そして奇数組が美術クラスで美術棟に、偶数組が音楽クラスで音楽棟と教室の場所が分かれている。
西園寺さんが一組で美術クラス、俺が二組で音楽クラスだから――
「ごめん、あんまりわからない。多分、教室の位置する場所が違うから――」
「アタイを知らない?あなたムショから出てきたばかりなの?」
俺の様子を見た西園寺さんは大層呆れた様子でそう言った。
そのレベルで有名なのか西園寺さんは。
ここまでで西園寺さんについて分かったことをまとめると、
・不登校だが、おそらく元気
・一人称が「アタイ」
・情緒不安定
・自分の言いたいことははっきり言う
・自分の存在をアピールしたいという気持ちが強い
・承認欲求が強い
これらを踏まえると、下手に回りくどい言い方で登校を促しても逆効果な気がする。
しかも、ストレートな方が女の子はキュンとするだろう。
ここは――
「それで、西園寺さん。学校に来なくなった理由を聞かせてもらえる?」
直球勝負
「アタイはね!何でも一番じゃなきゃ気がすまないの!一年生の頃はアタイはクラスの中心にいて皆がわたしに近寄ってきたわ。でも二年生になってクラスが変わるとそんな状況が一変して――」
真っ向から質問を受け止めてくれた
「それでクラス内で孤立して学校に行かなくなったってこと?」
「まあ、そういうことになるわね。まあ、アタイの計算では同じクラスの誰かがアタイのことを心配して家に来ると踏んでいたんだけど――実際に来たのは他クラスの変人だったってわけ」
周囲の環境が変化したことで、自分は一人ぼっちになったと思うようになったわけだ。
そして不登校になることで周りの反応を見て自分の存在意義を再確認しようとしたのか。
なんとも『特別』な展開を用意しづらい相手だ。
漫画やアニメでもここまで扱いづらいキャラクターは出てこない。
さて、どうしたものか――
「あなた、そういえば何でアタイのところに来ようと思ったの?他クラスでしょ?」
なんて答えればいいのだろうか。
「んー…」
「誰かに頼まれたの?」
「んー…」
「担任に頼まれたの?」
「いーや」
「じゃあ、アタイのことが好きとか?」
「それはない」
「なんでそこははっきり否定するのよ!」
本当になんて答えればいいかわからない。
ここまでの強敵とは想定していなかった。
もう少し装備を整えてからバトルに臨むべきだった。
「じゃあ、なんで来たのよ!」
うーむ、こうなったら
「俺は君を迎えに来た白馬に乗った王子様さ!」
「きっしょ」
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