07 元気な不登校お嬢様
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山吹先輩から話を聞いた二日後つまり水曜日の放課後、俺は西園寺さんの家に行ってみることにした。
水曜日にしたのには理由がある。
まず、一日目の水曜は門前払いで早く帰れと拒絶される。
二日目の木曜は少し話を聞いてくれるようになる。
三日目の金曜は情熱的に西園寺さんの心に訴えかけ、心動かされる西園寺さん。
土日に「学校に行ってみようかな」と考え、月曜日についに登校する。
この徐々に学校へ行く気力が出てくる感じは、いかにも漫画でありそうな展開だ。
そんな事を考えながら下駄箱へ向かうと、かなでが所在無げに立っていた。
「かなで、そんなところで何してんだ?」
突然声をかけたので驚いたのだろうか。
肩をビクッと震わせてこちらを向いた。
「は、白、ビックリしたぁ…。あの、一緒に帰ろうと思って」
「帰るって俺と?」
「逆にこの状況で他に誰がいるのよ」
「まあそうなんだが、なんでここで待ってたんだよ。」
「ほんとは今日は部活の日なんだけど急遽休みになって。それでもしかして待ってたら来るかな〜、なんて思って。迷惑だった?」
全く迷惑じゃないし、一緒に帰ろうとしてくれるのは素直に嬉しい。
ただ今日は予定が――
そんな俺の心境をかなでは読み取ったのだろうか。
「べ、別になにか予定があるなら、一緒に帰るのは今日じゃなくていいからね。でも、たまには登校だけじゃなくて下校も一緒にしたいから」
嬉しい。
やはり俺はかなでが好きなのだろうか。
こんなにも嬉しくなるなんて。
「わかった。じゃあ来週の火曜に一緒に帰ろう。バレー部は毎週火曜が休みだろ?」
「うん!じゃあ、また明日」
そう言ってかなでは帰っていった。
◇
西園寺さんの家は学校から歩いて十五分ほどにある和風な平屋だった。
家の敷地の玄関口となる門は学校の校門と同じくらいの大きさだ。
周囲は石垣で囲われており、いかにも代々この土地で暮らしてきた家系という感じだ。
ここら辺は再開発で新しくできた建物も多く、住宅街としても新しい。
そんな中にある西園寺さんの家はどこか異彩を放っていた。
「あの、どちらさまで?」
あまりにジロジロと中の様子を伺いすぎたのか、通りすがりの人に声をかけられた。
「あっ、えーっと、西園寺 時子さんと同じ学校の者で――」
「あらっ、お嬢様の御学友でしたか。そういうことでしたら上がって下さい。わたくし、西園寺家で家政婦をしております、山城と申します」
家政婦の方らしい。
西園寺さんの家は本当に由緒正しい家柄なんだな。
ただ、予定では門前払いを食らうはずなんだが――
「あっ、あの、時子さんに許可をもらわずに入っても大丈夫なんですか?」
思わずそう聞いてしまった。
「構いませんわ。むしろお嬢様は誰か来ないかといつも待っているご様子でしたから」
おかしい。
不登校なんだよな?
不登校になる学生は、あまり外部の人間と関わりたくないと思っている人が多いイメージなんだが――
そう思ったのだが、山城さんはなんの躊躇いもなく敷地の中へと案内してくれた。
家の中は想像通りというか、イメージ通りの平屋の屋敷だった。
玄関には盆栽、木彫りの熊、この長い廊下は夜に通るのは少し勇気がいりそうだ。
長い廊下を通ってそのまま西園寺さんの部屋と思われる場所の前まで通された。
こんなに簡単に入れてもらって大丈夫なのだろうか。
「お嬢様。御学友がお見えですよ」
「どうぞ」
短い返事が聞こえた。
山城さんがこちらを見て頷くと、そのままどこかへ行ったしまった。
入って大丈夫ということだろう。
「失礼しま――」
「おそーーーーーい!」
部屋に入ると突然大声で叫ばれた。
驚いてしばらく静止していると、長いポニーテールを揺らしながらこちらへ向かってきた。
「このアタイが不登校になっているのだから、もっと早く誰かが心配して様子をうかがいに来るべきでしょ?それなのに一ヶ月も誰も来ないで――」
アタイ?
「アタイが来なくたって誰も困らないってこと?アタイなんてどうでもいいってこと?」
「いやー、そのー」
こちらが挨拶する暇も無く、初対面の相手に愚痴を垂れ流している。
というかもう暴走している。
「アタイは誰かに求められたいんだ。もっとアタイを求めよ!」
数学?
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