12 問題児は語る
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけましたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと幸いです!
「俺には、両親がいないんだ。離婚しちゃってね」
「えっ?」
「高校一年生の終わり頃にね。元々両親はすごく仲が良かったんだけど、父親が段々と仕事のストレスが増えてきて、そのせいかすごく怒りっぽくなってきたんだ」
「……」
「そんな父の変わりように母親は凄くショックを受けて、精神的に病んだり、病気がちになって―― それまで通り家事を続けることができなくなったんだ。そんな母に対しても父はキツく当たって、もう家はめちゃくちゃだったよ。母は部屋にこもりっきり、父はなかなか家に帰ってこなくなった。その頃の俺はとにかく二人の仲を取り持つことに必死だったよ。でも父にとっては余計なお世話だったんだろうね。逆に父の怒りに油を注いでしまったり、母に対して俺への教育が悪かったんだと罵ったり――」
「……」
「そこから一ヶ月くらい経った頃かな。父はだいぶ落ち着いくようになったんだ。それで母に謝ったりしたけど母はショックが大きすぎて、これ以上一緒に生活ができなくなって―― あっという間に離婚したよ」
「離婚――」
「そりゃそうだよね。あれだけ家をめちゃくちゃにしといて、それを今更謝ったって遅いに決まってる。父は俺達家族のために仕事を頑張っていた。それは心から感謝してるし尊敬してる。でももう少し他のやり方でストレスを発散してほしかった。家族で出かけるとか美味しいものを食べに行くとか。人に当たるのだけはやめてほしかった」
「藤織は今――」
「一人暮らしだよ。父と暮らすことは俺から断った。流石にね。母は療養のために実家に戻って、それ以降会っていない。ああ、仕送りは父が毎月してくれてるよ。だから生活はなんとかなってる」
「アタイもこれから、そんな生活になるのかな――」
「そればっかりは、自分でどうにかなる問題じゃないから―― でも両親が離婚しても、しなくても時間は等しく過ぎていって人生は進んでいくんだよ。だからどんな結果になっても受け入れるしか無いし、たとえ両親と離れ離れになっても自立する時期が少し他の人より早いだけだって割り切って進むしか無いんだよ」
西園寺さんは黙ったままだ。
「それに、少し変わった人生を歩むのも悪くないかもしれないし」
なぜ急に俺はこんな話をしたのか。
そんなことは分かりきっている。
西園寺さんを過去の俺と重ね合わせているからだ。
俺はあのときどうやって立ち直ったのか。
近くに支えてくれる人がいたからだ。
それは友人の京であり、なにより幼馴染のかなでだった。
西園寺さんには?
学校ではうまくいってないない彼女にとってのこれからの支えは?
ああ、いるじゃないか。
今、身近にいる人が――
「お嬢様、失礼しますよ」
家政婦の山城さんと山吹先輩が部屋に入ってきた。
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけましたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと幸いです!




