表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

リンの言葉

251-255

作者: リン

251バナナの皮


バナナの皮の花びらが散る

バナナ農園で

少女は実のないバナナの皮を拾う

お腹は空いている

雲一つ無い空のように

空っぽの寂しい風が流れる

隣では

大人たちが

バナナを頬張っている

神は現実を不公平に作り

公平な愛で満たそうとする

少女は愛などいらなかった

バナナの皮を咥えて

腐っていく心を見つめて

鼻水を垂らす

枯れた涙の代わりだと

誰も知らず

笑う

笑われる少女

そんな少女を

バナナは愛している




252焼いた豚をさばくナイフ


刃の欠けたナイフのように

錆びたナイフのように

尖ったナイフのように

焼いた豚をさばくナイフのように

人に恨みを持つナイフのように

人を悲しませるナイフのように

音楽はナイフのように

ひとの心を突き刺してくる

音楽を作った作曲家は

溢れ出す心のはみ出しを削って

ナイフの形にする




253温度計が33度を超え


温度計が33度を超えた状態で

描く双曲線は2つに分かれて

永遠につながることはない

それはどこまで行っても

別れたままで

戻ることのない世界へと

2つの開かれた扉に入っていく

温度計が33度を超えた状態で

描く世界線は3つに分かれて

永遠に交わることはない

それはどこを指す時計の針でさえも

指し示すことのできない

未知の点の世界

はみ出した面の先にある

幻想のガンダーラ




254虚構の服を着て


波打ち際の

行ったり戻ったりする

時間軸のなかで

現在は現実を見失い

現実は虚構の服を着て

歩き出す

道の内側にいるつもりで

未知の道の上を歩いている

草木の生えない

自然林




255野良猫


運命とか宿命とかおはじきとか

恋とか愛とかお手玉とか

勉強とか進路とかカルタとか

真実とか現実とか手鞠とか

子どもの神のもつお人形が

飽きられて捨てられて

崩れ行く人としての形

心は血溜まり

感情はほつれた糸のようで

行き交うサラリーマンに

踏みつけられていく

汚れていく人形を

咥える野良猫は

食べ物と勘違いしている

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ