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第52話 アンデッド浄化作戦

「何をするつもりなんだ? ミルク」


「えっとね、私の力で、アンデッドを浄化する魔法が作れたらなって」


 アンデッドは、このサーシエに充満する負の魔力によって誕生する。


 グルージオが今やってるみたいに、アンデッドを倒せば少しずつ魔力が霧散していくけど……その大部分は霧散する前にもう一度負の魔力に取り込まれて、次のアンデッドを生み出す材料になっちゃう。


 だから、私が負の魔力の霧散していく様子をしっかり観察して、それを魔法で再現する。


 本物の浄化魔法とは違うから、上手くいくか分からないけど……グルージオ一人に任せて、このままボロボロになっていくのは見たくない。


「だから、そのために……出来るだけ近くで、アンデッドが倒れていくところを視たくて……」


「なるほど。つまり、俺はミルクを抱えた状態で、なるべくゆっくりアンデッドを倒せばいいんだな?」


「うん……ごめんね、ラスター。大変なお願いして」


「この程度、問題ないさ。アンデッドの大半はグルージオが引き付けてくれているし……何より、ミルクも随分と強くなったからな」


「私が……?」


 強くなった自覚があまりない私が首を傾げると、ラスターはいつものように優しく撫でてくれる。


「ああ、初めて会った頃よりもずっとな。だから、そこまで手加減しなくても、今のお前ならしっかり見極められる。そうだろう?」


「うん……がんばる」


 ラスターが、私に期待してくれてる。

 そう気付いた私は嬉しくなって、気合いを入れるようにふすふすと鼻を鳴らした。


「その意気だ。じゃあ、行くぞ!」


 ラスターが私を背負って、アンデッドに向かって走り出す。


 飛ぶような速さで、一瞬にして何十メートルと移動した先で、アンデッドの体が両断され、魔力が霧散していく。


「ちゃんと視えているか? もう少し遅く出来ないこともないが」


「大丈夫、視えてる……! この調子で、お願い!」


 周囲には、たくさんのアンデッドがいる。あまりゆっくり動きすぎれば、ラスターが怪我をしちゃうかもしれない。


 今の私はお荷物だけど……お荷物なりに、ラスターやグルージオの役に立つんだ!


「ふっ、良い子だ」


 そう呟いて、ラスターは剣を振るってアンデッドと戦い始める。


 グルージオとあまり近いと巻き込まれちゃうから、少し距離はあるけど……こっちにもたくさんのアンデッドが集まってきたから、視る相手には困らない。


 私は目を凝らして、アンデッドとその魔力が、どう変化していくかをじっと見つめ続けた。


「体が壊れると、そこから血を流すみたいに魔力が溢れて……大気に触れてる間に、ちょっとずつ色が変わって……」


 私の眼には、アンデッド達やサーシエに満ちる魔力は“紫”に見える。


 悪い人が、悪意を持って誰かを貶めようとする“黒”の魔力とはまた違う、もっと純粋で不安定な、世界を呪う憎しみの色。


 純粋だからこそアンデッドになれるけど、アンデッドじゃなくなった魔力は宙を漂ううちにどんどんその色を失い、霧散していく。


 ある程度までなら、大気を覆ってる紫の魔力に取り込まれて色を取り戻せるけど、完全に失くしたものはもう戻らない。


 ……そういうことなら。


「こうして……」


 ラスターが斬り飛ばしたアンデッドから溢れた魔力を、私が眼の力で抑え込む。


 そこに、私自身の魔力を混ぜ合わせて、“紫”から別の色に無理やり書き換える。


「……よしっ、やった!」


 そうして色を変えた魔力は、思った通り元の“紫”に取り込まれることなく、そのまま少しずつ色を失って霧散していった。


 これなら、ただ闇雲に倒すよりもずっと早く、アンデッドの浄化を進められる!


「どうやら、コツを掴んだみたいだな」


「うんっ、グルージオが倒した分も浄化していくね」


 一度コツを掴んでしまえば、距離が離れていても“視界”の中に入っているなら同じように処理出来る。


 何なら、暴れるごとにすごくたくさん溢れてるグルージオの魔力と混ぜて変色させれば、どんどん浄化を進められるはず。


 そんな私の目論見は大当たりで、グルージオがアンデッドを何体も何十体も纏めて撃破しても、それを全部浄化しきることが出来る。


 でも。


「ウオォォォ!!」


 少しずつ正常な状態に近付いていくサーシエとは裏腹に、グルージオはずっと変わらず、悲しげな咆哮を轟かせ続けていた。

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