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第十一種:「卑劣漢の末路」『じゃれあう恋人達』【暴走する巨躯】






















デイヴィッド小隊には何の思い入れも糞もない。あいつらは殺すために作った。あと曽呂野登場前に死んだ馬鹿も殺すためだけに作った。

「はっはっは!どうだい曽呂野!

これで僕に逆らう気なんて一気に失せただろう!

何、簡単なことさ」

デイヴィッドは声高らかに語り始めた

「僕の能力を使ったんだよ!

天才の僕に相応しい能力をね!」


「能力…?」

こいつにそんなものがあったのか?

あったとして、そこまで強力なのか?

曽呂野はそう思い、また二人も同じであった。


「そう!

僕の能力、それは『強奪』さ!

僕は、死んだ異形の能力を奪い取ることが出来るんだ!

だからこそ一太が死んだとき、僕はその能力を奪い取り、『屍術』の能力を得たって訳さ!」

「ははぁ…それでアンタに撃たれた(サカリ)は…アンタの奴隷になっちまったって訳!」

「その通り!これが僕の力だよ!

どうだい?これでもう君は僕に従わざるおえn―――「ざけんなッ!」


曽呂野の激しい怒声は、デイヴィッドの発現を遮った。


「…まだ僕に逆らうのかい?」

「逆らって当然。

むしろアンタ等に逆らわずして人禍で誰に逆らうってのよ?」

「言うね。君如きの分際で」

「っは。アタシだってね、伊達に437年生きてないわよ」

「いいのかい?下手な事をすればこの周囲の海底基地に控えさせているペンギン大隊をここへ総動員させることも出来るし、君の大事な木伏盛(キブシサカリ)をどうするも、僕の意志によるというのに」

「っハ!やってみれば?その瞬間アタシのこの剣がアンタをぶっ裂いてるわ」

デイヴィッドと曽呂野。

両者一歩も譲らず、また少しも強気な姿勢を崩そうとしない。

「どうだかね?

遠慮は要らん。殺れ、高橋!」

デイヴィッドは盛を拘束している部下に命令する。

しかし、何も起こらなかった。


「どうした高橋、僕の命令が聞こえなかったのか?」

そう言って部下の方を見たデイヴィッドは凍り付いた。


「…た、高橋…?」

「「「!?」」」


高橋の死に様を一言で言い表すならば、「X」の一文字に尽きた。

床に倒れた彼女は、その美しい顔面の擬態を剥がされ醜い真の姿がさらけ出されており、腹を中心に「X」字型に切り裂かれていたのである。


デイヴィッドは叫んだ。

「誰だ!?このデイヴィッドの部下にこんな真似をした不届き者h――――「私」


「「「「!?」」」」


突如天井から聞こえた、デイヴィッドの台詞を遮るような女の声。

それは天井にへばりついている、人とも昆虫とも呼べる姿の、美しいような不気味なような異形によるもの。

異形は地上に降り立つと、デイヴィッドの背後に立ち、言った。

「デイヴィッド小隊長。

貴方はたった今、不二子・コガラシ総統の御意志により、反逆者として処刑されます」

「な…どういう事だい!?

それに君は…何者なんだ?」

異形は淡々と話し始めた。

「申し遅れました、私の名はウィナグ。

古藤様の娘の一人にして、益獣部隊所属の者。

『虐殺』の称号を持つリオックの疑似霊長です。

ちなみに私の名前は、琉球語で『女性』を意味します。

続いて、貴方が反逆者とされた理由についてお話しさせて頂きます。

貴方は12分前、小沢一太様の肉体より逃亡なされたサヴラ様と交渉し、サヴラ様の持つ『屍術』の能力を借用。

それを用いて機関員・木伏盛様を射撃・隷属させ曽呂野様への不当な脅迫に利用しました。

総統は曽呂野様を大変信頼しており、また木伏様を今回の計画に於いて大変重要であると考えて居られていたため、ご自身の身勝手な考えにより木伏様を攻撃し、挙げ句曽呂野様を脅迫なされた貴方を反逆者に定められました。

ちなみに私は古藤様からの命令で、貴方と貴方の行動に荷担したジュリエット・高橋様を処刑するため此処に来させて頂いております。

尚、貴方の指揮下にあるペンギン大隊も、先程海軍の総攻撃によって全滅しました」


「何…だと…?」


総統に捨てられた。ペンギン大隊が全滅した。

そのショックで凍り付いて動けないデイヴィッドの身体から、何かが這い出てきた。

それは蛍光チックな緑色を放つ不定型なゲル状の物体であり、ゲル状の物体は徐々に形を成していき、最終的には少女の形を成した。



「サヴラ!?

君まで…僕を裏切るのか…?」


一太とデイヴィッドに『屍術』の能力を与えていた変形菌の疑似霊長・サヴラは、デイヴィッドを嘲笑うかのように彼の問いに答えた。

無論、デイヴィッドが異形であるというのは真っ赤な嘘である。


「裏切った…?

何を言っているのよ。

裏切ったのはアンタでしょう?」

そう言って、床材の隙間へと消えていくサヴラ。

その冷酷な答えに、これから待ち受ける悲惨な運命を悟ったデイヴィッドは、大声で叫んだ。




「ち…ちッ…………畜生ォォォォォォォォ―


最後まで叫び終わるより前に、ウィナグはデイヴィッドの眼前へ平手を立てに振り下ろした。

一瞬で「X」字型の切れ目が入り、分断されるデイヴィッド。

その体内から溢れ出たのは、血肉や臓器ではなく、なんと無数のゴミやガラクタであった。



「な……あの野郎…!」

「生き物じゃあ…無かったというの!?」

あまりにも突然すぎる出来事に驚く二人。

その驚きは、曽呂野もまた同じであった。

いや寧ろ、彼女の方が二人より驚いていただろう。

何と言ったって、曽呂野の場合驚きのあまり声も出せなかったのだ。

総統驚いていたのだろう。



さて、ウィナグはそんな硬直状態の曽呂野へ駆け寄っていき、彼女に液体の詰まった管のようなものを手渡した。

「曽呂野様、古藤様より預かり者です」

「…薬?」

「はい。これを木伏様に注射してあげてください。

そうすれば屍術の能力は浄化され、あの方は助かります」

「…有り難う、ウィナグ!

何か私…今まで貴方の事、全く知らなかったよ…空気扱いしてご免ね…」

盛が余程大切な存在なのであろう、曽呂野は涙を流しながらウィナグに礼を言った。

「例には及びません。

それに私を知らなくても、それは仕方のないことです。

何せ私は普段古藤様の研究室で雑用や、あの方の身の回りのお世話をさせて頂いている身ですから」

ウィナグは、その昆虫混じりの身体から人間のような美しい姿に変化すると、付け足すように言った。

「それと、木伏様が元に戻りましたら至急総統室に向かうよう伝えて下さい」

「判ったわ…有り難う、ウィナグ」

ウィナグは微笑んだまま、信じがたい跳躍力で何処かへ行ってしまった。

曽呂野は、未だ立ち尽くしたままの盛に駆け寄り、その腕へ急いで薬を注射した。


するとどうだろう。

盛の傷口からあの不気味な侵食の跡が消え、弾丸が身体から抜けて傷口が塞がったかと思えば、その肌と瞳は活性を取り戻し、彼女はあっという間に浄化された。



「!!…姉さん!?

私、いきなりあの磨野郎に銃で撃たれて……」

意識を取り戻した(サカリ)は、恐怖から解放された喜びの余り曽呂野に抱きついた。

対する曽呂野もまた、そんな盛の頭を撫でながら、彼女を思いきり抱きしめた。

「盛、今すぐ総統室に行って。

総統だか博士だかが急用だって」

「判った」

盛は総統という言葉を聞くなり、急いでホールから出て行った。



そして曽呂野は、本来の業務へと戻ろうとする。

「悪いねェ、見苦しいもの見せちゃって。

でもアタシ等、総統絆強いから。まぁ許してよ」

「えぇ。別に構わないわ。貴女達をつなぎ止めているモノが友情でも愛情でも、私達は否定しない」

「つーか俺達がそんなモンを否定するなんてなァ、間違ってるぜ。例え神とかがそれを許したってな」


そう言って獣化する直美と、格闘技の構えを取る大志。

対する曽呂野も、デイヴィッド襲撃時からずっと背負っていた剣を再び握って構える。



異形三名の闘争が今、始まった。



―十話の続き・雅子、薫―

変態と化した雅子による、薫の乳揉みは未だ続いていた。

「いやぁぁぁぁ!ちょ、楠木殿!何やってるんですかっ!」

「良いでは無いか~どうせ私ら女同士だし、そこまで気にすることでも無いでしょ~」

「気にしますッ!某はそもそもエロなぞ二次元だけで十分でッ!そもそもガチのエロ本なんて気が引けるから殆ど読んだ事ありませんッ!

あぁ~……もうコレ…コレ…ぅあぁんッ!んやぁ!

もう何か…意識飛びそう……それが……某…某とした事がぁ~」

迫り来る快感に耐えつつ、息切れを起こしながら哀れな声を上げる薫と、そんな薫を拘束して乳を揉む雅子。

もはや文章だけだと読者サービスとかエロとか通り越してカオスである。


と、次の瞬間。


「あぁ~これ何か癖になりそう……次直美姉さんあたりでやってみガッ!?


雅子の頭に何かが衝突した。

更に雅子は服の襟首を何者かに掴まれ、そのまま持ち上げられる。

そして宙づりになった雅子が見たのは、メンバーの中で自分と最も親しい人物。

「……ぁ……手塚さん……」

「…雅よ……お前何やってんだ…?」

半笑いの上に、顔を僅かに獣化させた松葉は言った。

それに対して雅子は、怯えたように返す。

「…いやぁ……夏コミで出そうと思ってる咲美本の参考がてらに……ストレス溜まった●夜さんが●鈴押し倒してキャッキャウフフっていうKENZEN本なんですけどね……」

「…そうかい……つこたぁ…お前夏コミで新刊二冊出すんだな…?

……命●寺の面々が客を襲う謎のバケモンを駆除せんと必死になるシリーズ物なガチバトル本と、そのKENZEN本とよ…。

…まぁ、あんだけブ厚い栗●栗の中身を二週間で仕上げちまうんお前の作業力なら不可能じゃねぇだろうな…。

…しかしよ、雅……俺が言うとセクハラな気もするが……見たところ薫の乳は●鈴っつーより小●魔なんじゃねぇかな……どっちかっつーと、美●は直美だろ……」

「…いやいや……乳揉みの感覚さえ掴めればそれでよかったもんですから…」

「…そうかい……ならこんな戦闘中にやらねぇでも良いんじゃねぇかな…?」

「…疲労で変な気起こしちゃいまして……」

「…なら…とりあえず…寝とけ……つうかよ…雅…」

「…何です、手塚さん…?」

松葉は雅子を床に押し倒し、のし掛かりながらこう言った。

「……お前……俺という雄がありながら…そこで百合に走るのはどうよ…?」

「…私…変態ですから……」

「…そうかい……」


10秒後、壁面を揺らすような咆哮を上げた松葉が、怒りと悲しみに任せて涙を流しながら雅子を殴りまくったり技かけたりするという惨劇が起こったのは、言うまでもない。



そしてそんな殴られる雅子を見ていたその場に居合わせた他のメンバーはと言えば、


「黒沢様、お止めにならないのですか?」

「えぇ…あの場合悪いのは楠木さんですから」

「それにしても珍しいな…ああいうのは普通女が男に向かってやるもんだが…」

「社長が、異形はなにもかも超越してるものって言ってたー」

「…もう何が何だか…」


―戦闘中の異形三名―


「でりァ!」

「ぬぅォ!」


ガギャアン!


曽呂野の紅い剣と、能力を器用に使った大志の刃に似た腕とがぶつかり合い、火花を散らす。

大志と壮絶な鍔迫り合い(?)を繰り広げる曽呂野の側頭部へ、獣化した直美の回転蹴りが飛ぶ。

しかし曽呂野は左手を剣から放し、直美の蹴りの直前に空中に深紅の盾を出現させ彼女の蹴りを防ぐ。


「!?」

「まさか…アタシがそんな単純な蹴りも防御出来ないと思ってたり?」

曽呂野はそのまま直美を押し返そうとする。

しかし彼女の意識が剣から離れたその一瞬を、大志は逃さなかった。

「っらァ!」

大志は曽呂野との鍔迫り合いに競り勝ち彼女の剣を押し返す。

すると余りにも大きな力を加えらてよろめく曽呂野には一瞬の隙が出来てしまう。


大志はその隙を逃さず、曽呂野の腹へと蹴りを叩き込む。

それも太股辺りをゴム状にして放つ、強烈な蹴りである。


「ゴェ!」


腹に蹴りを受けた曽呂野はそのまま大きく吹き飛び、コンクリートの壁にめり込む。


「どうよ!?この華麗なる蹴りィ!」

「エクセレント。最高よ、大喜多君」


軽い会話を楽しむ二人だったが、曽呂野も当然まだ倒れては居ないだろう。

どうやらこの戦い、そうとう長引きそうである。


―雅子が松葉に殴られているのと同時刻・隼人―


「とはいえ…あいつは何処に行ったんだ…?」


船内を低空飛行しながら恋歌を探す隼人の背後に、忍び寄る存在一つ。


「ったく…手間取らせやがって。

幼女じゃなきゃ今頃放送禁止級の悲惨な目に遭わせてやる所だが…」


しかし、隼人はそんな気配になど気付けていない。


「さてと…ここら辺も一通り探し終わったし、他行くか…。

っと、その前に喉が渇いたな…財布財布っと…」

そう言って自動販売機に歩み寄った隼人は、ポケットから財布を取り出そうとするが、取り出せない。

当然財布が無いわけではなく、手が動かないわけでもない。



手が無いのである。


「……ッッッ!?

俺の手がッ!

づぁぁぁぁぁぁ!」

右手首を押さえ倒れ込む隼人。

恐る恐る振り返れば、其処には見慣れぬ緑色の何か。

それは小柄な人型で、黒いシャツと長ズボンを履いていて、空中に浮かんでいた。

小柄と言っても、異常なオーラを放つその身体はとても不気味に感じられた。


「だ……誰だテメェ…?

名と所属を言えッ!」

隼人の問いに、緑色は答えた。

「…貴様ノ様ナ使エナイ奴ニ名乗ル名ナド無イゼ…」

そう言うと、緑色はゆっくりと隼人に寄ってくる。

「……おい……止せ…止めろ…こっちに来るんじゃねぇ……!!」

近寄りながら、緑色の頭が徐々に変形していき、その頭は結果的に巨大なワニか肉食恐竜を思わせるものになった。

そして緑色の口が大きく開く。


直後、船内に隼人の悲鳴が木霊した。


―時刻的には松葉が雅子への制裁を暴行から説教に移したところ・戦闘中の異形三名―


三人は未だ激闘を続けていた。


曽呂野と大志は全身傷だらけで、再生能力の高い直美に外傷は無かったが、それでもかなり体力を消耗している様子だった。


その時、船内が大きく揺れた。


「な、何だ!?」

「まさか…エンジントラブル!?」

慌てる二人とは正反対に、曽呂野は冷静に言った。

「待ちな。まだ慌てるような時間じゃあない」

「どういう事だ?」

「判らない?

目覚めたのよ、奴がね」

「奴……巨像?巨像が目覚めたというの!?」

「そう。奴は久々の復活に訳判らなくなって混乱してるんでしょうね。

300年以上ぶりの目覚めだもん、そりゃ混乱もするわよ」


そう、巨像は目覚めていた。

しかしその目覚めは若干早かったようで、未だ動いてはならない状況に有るにもかかわらず思いっ切り暴れ出してしまったため、船が大嵐にでも逢ったかの様に揺れていた。

更に達の悪いことに、3人が繰り広げた激戦によって、その壁や床や天上は、余りにも崩れやすくなっていた。


―同時刻・玄白―


「くぉぉ!ちょ!暴れるなッ!

暴れるんじゃあない!

直ぐに自由にしてやる!


糞ッ!スティモシーバーのリモコンはッ、総統室だッ!

僕はなんて間抜けなんだ!

こういう時のためにッ!

予備のリモコンを用意しておくんだっだっとぉああああ!」

暴れる巨像の側に立っていた玄白は、大きな揺れと、四方八方から迫り来る装置の衝突を避けるのに必死になっていた。

と、その時である。


―ヴゥゥゥゥゥン。ヴゥゥゥゥゥン―


玄白がポケットに入れていた携帯電話に着信があった。

直ぐさま電話を手に取る玄白。

「はいもしもし!古藤です!

あぁ、総統ですか!?」

『博士!?博士なの!?』

「総統、目覚めた巨像が暴れ出しました!

至急、制御リモコンの2ボタンを押して下さい!」

『2ボタン?青い奴?』

「そうです!早く押して下さい!

でないと船が、船が壊れます!

この事態はルルイエでも対処できません!早く!」

『判ったわ、ちょっと待って』


暫くして、巨像が急にやる気をなくしたかのように大人しくなった。


スティモシーバー―頭蓋骨に穴を開け、脳へ直接埋め込むことで対象をリモコンである程度支配する装置―には、3つの命令スイッチが存在する。

先程玄白が不二子に押すよう指示したのは、その内やる気を殺ぐ2ボタン。

他に命令を強制実行させる1ボタンと、やる気を出させる3ボタンが存在しており、現在巨像の頭に埋め込まれているスティモシーバーはその中でも畳半畳は有ろうかと言うほど巨大だった。

ただ、巨像自体が何とも言えないほど巨大で毛深いため、その存在は殆ど目立たないに等しいのだが。


「…全く、手こずらせてくれる奴だ…。

ルルイエ、船内の被害はどうだい?」

『コンクリート部分の損壊がかなり激しいようですね。

近接型の方には暫く戦闘を控えて頂かないと…』

「そうか……とすれば、今一番死亡フラグの立ち易い奴が一人…」


―同時刻・戦闘中の異形三名―


「はァァァァァッ!」

「でェェェェェッ!」


直美と大志が同じタイミングで寄り添いながら放った跳び蹴りは曽呂野の腹に直撃し、彼女の身体は崩れそうなコンクリートの壁へと激突。

曽呂野は衝撃で崩れ落ちた瓦礫に埋まってしまった。


「…おし。これで暫くは安心だろ」

「まぁ、追ってくればまた対処するだけよね。

大喜多君、急いで逃げるわよ」

「おう」


二人は今にも崩れそうなホールから脱出し、すぐに松葉達と合流した。


―直後・総統室―


「それじゃあ、手順的は今話したとおりだから。

予定通りにお願いできるかしら?」

「はい。やってみます」

「そう。その言葉を聞いて安心したわ」


不二子と盛が何やら話し込んでいると、一人の女性機械兵がその場へ現れた。

息を切らしており、酷く慌てているようだった。


「総統ッ!総統ーッ!

白いD-89番ホールの反動が発生した天井で早く予定の影響が壁より大部分との崩壊で巨像に生き埋めと揺れが曽呂野様で目覚めたになっています!」

混乱の余り訳の判らない事をわめいてしまっている機械兵に、盛が突っ込む。

「兵隊さん兵隊さん…お願いですから日本語でおk」

我に返り、必死で落ち着きを取り戻そうとする機械兵。

すると不二子が言った。

「成る程ね…」

「え!?総統、今の判ったんですか?」

「まぁね…。

今彼女が何て言いたかったかっていうとね、

『白い巨像が予定より早く目覚めた反動で発生した揺れの影響により、D-89番ホールの大部分が崩壊、曽呂野様が生き埋めになっています』

という、ごく当たり前の報告よ」

「へぇ…そうなんですか………って、姉さんが生き埋めに!?

総統、私心配なんですけど―「早く行ってあげなさい」

不二子は盛の言葉を遮るように言った。

盛は無言で頷くと、機械兵に案内されながら走っていった。

二人が総統室を出て暫くしたあと、不二子は玄白に連絡を入れた。


「もしもし博士?

益獣部隊で手の空いてる子を至急D-89番ホールに向かわせてあげて。

なるべく力自慢の子を頼むわ。

曽呂ちゃんが生き埋めになってるから」

『判りました。では至急アトスを向かわせましょう』

「宜しくね」

『お任せ下さい』


電話を切った不二子は呟いた。

「…曽呂ちゃん死んだら嫌ねぇ…あの()強いし優秀だし頭良いし…何より可愛くて盛ちゃんとお似合いなんだもの」

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