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好きな人が義妹になった  作者: 西織
文化祭の片隅で
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 ドクドクと心臓が早くなり、もはや気持ち悪くなりながら、彼女の動向を窺っていると。


「…………?」


 扉の向こうから、人の気配は感じる。 

 しかし、それがゆっくりと離れていった。

 そろり、そろり、とわずかな足音が聞こえてくる。


「………………?」


 いや、何をしていたんだろう。

 確かに彼女は部屋の外にいたようだが、何をするわけでもなく離れていった。

 用があるのは、理久の部屋ではなかったようだ。

 どうやら、理久が想像していたことにはならないらしい。


「……いや、アホなのか俺は……。当たり前だろ……」


 その場で頭を抱える。

 あり得ないだろ。アホなんだろうか。

 自分で自分が気持ち悪すぎる。

 決して人には聞かせられない妄想をしていた事実に、ひとり打ちのめされた。気持ち悪すぎるだろ。彩花にも申し訳ない。ひどすぎる。切腹したい。死んで詫びたい。

 とりあえず、自分の頬を何度かはたいておく。


 痛みと恥ずかしさで顔から火が出そうにはなったが、それでも彼女の動向は気になった。

 あの不審な動きは何だったんだろう。

 その答えは、数分後に足音とともに帰ってきた。


「もう……。ひとりで眠れないなんて……、子供じゃ……」

「お母さんは……、ズルい……、慎二さんと同じ部屋なん……」

「はいはい……、わかったから……」


 二人分の足音が近付いてきたかと思うと、こそこそとした話し声とともに部屋の扉が閉まった。

 あの声は香澄だ。

 彼女の声が聞こえて、あぁと理解する。


 どうやら、彩花がひとりでは眠れず、寝室から香澄を連れ出して自分の部屋に引っ張ってきたらしい。

 理久の妄想も、途中までは合っていたようだ。

 結果があまりにも違いすぎるだけで。

 ならば、部屋の前で立ち止まっていたのは、暗い廊下に怯んでいたのだろう。


 なるほど、と納得しつつ、理久は布団を頭からかぶった。

 そのまま悶える。

 自分のあり得ない、そして気持ち悪い妄想があまりにも恥ずかしい。

 彼女たちとは別の意味で、眠れそうになかった。



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