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好きな人が義妹になった  作者: 西織
好きな人が義妹になった
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 理久はカップヌードル、彩花はカップ焼きそばを選択した。

 カップ麺にお湯を入れて、テーブルに向かい合わせで座る。

 あとは三分。

 ただふたりで待つ。

 そうしてから失敗に気付く。


 いやこれ、別にこんなふうに待つ必要なかったな……。

 おそろしく気まずい空気が流れるが、理久はちょうどよさそうな話題が思い浮かばない。かといって、沈黙して三分待つなんて地獄すぎる。

 どうにか話題がないかと頭をフル回転させていると、ありがたいことに彩花が先に話し掛けてきた。


「あの、小山内さん」

「はい」

「今朝、三人で朝ご飯を食べたんです。トーストと、あと昨日のお寿司もいっしょに。それで、パンがもうなくなったみたいで。慎吾さんは、小山内さんに買い出しをお願いしてほしい、と仰っていたのですが……」

「…………」

「小山内さん?」

「あ、はい……。はい、買い出しね……、うん……。わかった、行ってくるね……」


 いや、いんだけどね?

 いんだけどさ。

 父親が「慎吾さん」と名前で呼ばれて、自分が「小山内さん」はちょっとアレだね?

 いや、理久もわかっている。香澄が慎兄と呼ぶから、その流れで下の名前で呼んでいるだけだと。

 理久が香澄のことを香澄さん、と呼ぶのと変わらない。

 歳が近い異性よりも歳が離れている人のほうがなんとなく、下の名前で呼びやすいことも。


 けど、小山内さんか……。いずれ自分も小山内さんになるのに……。

 そんなことをぐるぐる考えていると、三分の設定をしたキッチンタイマーが鳴った。


 理久はカップヌードルの蓋を開く。

 彩花は手早く湯切りをして、ソースを入れてかき混ぜ始めた。

 理久は麺を口にしながら、頭の中で買い出しの計算をする。

 今日はなに作ろうかな~……、と考えながら。


 彩花もそれ以上は特に何か言ってくることはなく、焼きそばを啜り始めた。

 啜るたびに、彼女のポニーテールがゆらゆらと揺れている。

 おいしそうに食べる彩花を見ていると、思考が中断されそうになる。

 なぜ、自分と彼女はいっしょにカップ麺を食べているのか。

 そんな根本的な疑問に辿り着きそうになった。

 彩花はしばらくの間、無心で食べ進めていたようだが、思い出したように口を開く。


「小山内さん。買い出しなんですが、わたしもついていっていいでしょうか」

「そりゃいいけど……。別に気を遣わなくていいですよ? 掃除も洗濯もやってくれてるんだし、買い出しくらいは任せてもらっても」

「でも、わたしが代わりに行くこともあるでしょうし。そのときにミスのないよう、必要なものも押さえておきたくて……」


 真面目なんだろう。もしくは、不安なのかもしれない。 

 生活必需品なんて、その家によって千差万別のはずだ。

 彩花がこちらに合わせてくれると言うのならば、断る理由もない。


「わかった。じゃあ、ご飯を食べ終えたらいっしょに買い出しに行きましょう」

「はい。よろしくお願いします」

 

 彼女はぺこり、と頭を下げる。

 どうやら、昼からは彼女といっしょにスーパーに行くことになりそうだ。


「……ん?」


 ということは、いっしょにお出かけ……?

 いや、違う。買い出しだ。浮かれるな。彼女は予習としてついてくるだけだし、そこに自分が邪な思いを抱くのは失礼にあたる。あくまで買い出し。お出かけではない。うん。そう。スーパーに行くだけ。スーパーにお出かけ……、いや、違う!

 そう己を言い聞かせるものの、彼女とふたりで出掛けるというイベントに、どうしても心が弾んでしまっていた。


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