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好きな人が義妹になった  作者: 西織
それぞれの想いと
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 特別なのはきっと料理くらいだろう。

 そんなふうに期待せずにいたものの、張り切ってしまうのは仕方ない。

 クリスマス当日。

 テーブルの上に並んだ料理を見て、彩花は歓喜の声を上げた。


「わあ……、なんだかすごく豪華になりましたね……!」

「まぁ……、せっかくのクリスマスなんで……」


 そう言いつつ、張り切った自分にちょっと苦笑いしてしまう。

 今回、初めてローストチキンを焼いてみた。

 小ぶりではあるものの、骨付きのローストチキンがあるとグッとクリスマス感と豪華さが出る。

 そこにビーフシチューにサラダ、冷凍だがピザを置いてみると、パーティっぽさが出てくるわけだ。

 

 料理が好きでもなく、レパートリーが少ない理久にしては、頑張ったほうだろう。

 今まで家でクリスマスなんて意識したことなく、普通に肉じゃがを作って、「クリスマスなのに?」と父に不思議そうにされたこともある理久が。

「じゃあチキンのひとつでも買ってきてくれればいいのに。晩ご飯それでいいじゃん」と文句を言っていた理久が。

 彼女のためならば、面倒なローストチキンも作ろうと思えるのだから。

 まぁ料理自体、彩花といっしょにやっているから楽しい、と言うのもあるのだけれど。


 いただきます、と手を合わせてから、彩花は早速カプっとチキンにかぶりつく。

 彩花は基本的に、育ちが良い。

 食べ方も綺麗だし、気遣いの仕方や言葉遣いも丁寧だ。

 見た目は可憐な美少女である彩花が、ローストチキンを握り、豪快にかぶりついている様はギャップがあって魅力的だった。

 おいしいです、と嬉しそうに笑っている。


 ……いやいや、人様が食べている様子をじろじろ見るもんじゃない。

 慌てて目を逸らそうとすると、「兄さん」と言葉が飛んできた。

 さすがに無遠慮過ぎただろうか……?

 ハラハラしたが、それは全く関係ないらしい。

 彩花はチキンを置いて、小首を傾げた。


「洗い物が終わったあと、ちょっと付き合ってもらえませんか?」


 そう言うのだ。


「いいけど……、何に付き合うんですか?」

「内容も聞かずに了承してくれるんですか? 嬉しいですけど」

 

 理久が前のめりな答え方をしたせいか、彩花はくすくす笑ってしまう。 

 それを言われると、さすがにちょっと恥ずかしい。

 彩花に頼まれたら、よっぽどのことじゃない限り断らないだろう、と自覚したことも含めて。

 彩花はひとしきり笑ったあと、綺麗な人差し指を口元に当てた。


「それは、あとのお楽しみです」


 珍しく、そんないたずらっぽいことを言う。

 けれど、すぐに照れくさそうに笑ってしまった。

 

「……って。るかさんに言ってみるといい、と言われまして」


 照れ隠しをするように、彩花はチキンに再びかぶりついた。

 そこで、ソースが口の端についてしまっている。

 その姿を含めて、理久は見惚れて食事の手が止まってしまった。

 ……あぁ本当に。

 どこまでも、彩花のことが好きになってしまう。

 彼女に連れていかれるのなら、地獄の果てまでついていってしまいそうだった。



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